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delofamilia & NEENEE

ORANGE RANGEとは異なるサウンド像が広がるNAOTOとYAMATO、それぞれのプロジェクト

今年の2月に行われた日本武道館公演まで結成15周年イヤーを駆け抜けたORANGE RANGE。そして、11月1日に新たなステップとなる新作『UNITY』を発表するのだが、それと前後してNAOTOによるプロジェクト:delofamiliaの『filament/fuse』とYAMATOによるプロジェクト:NEENEEにの『N2』もリリースされる。そこで、GiGS12月号本誌において『UNITY』の完成背景をNAOTO & YAMATOに聞くと同時に、こちらで各プロジェクトの作品について掘り下げることにした。それぞれORANGE RANGEとは異なるサウンド像が描き出されているのだが、そこにたどり着く道筋を2人にじっくりと語ってもらった

Text/TAKAYUKI MURAKAMI

ORANGE RANGEと同じように、思いついたアイディアは全部試すけど
そこからどんどん間引いていくんです(NAOTO)
──delofamiliaの6thアルバム『filament/fuse』とNEENEEの2ndアルバム『N2』が、同時期にリリースされます。
NAOTO:2014年に『Carry on Your Youth』を出した後、1曲ずつチマチマ作り続けていて、溜まったから作品にしようと思ったから、今回形にしました。アルバムの方向性を先に決めて、それに沿って曲を作っていったわけではなくて、1曲1曲単体で仕上げていったんですよ。それを並べたら、こういうものになりましたという感じのアルバムですね。
YAMATO:『N2』も作るにあたって、テーマとかは特になかったです。ただ実は、2014年のツアーが終わった後に、TETSUSHI(DJ)が「早く次を作りたい」と言って、バァーッと曲を作って、歌詞もメロディーも入れて、その時点で『N2』に入っている曲は全部揃ってたんですよね。そのときは1stアルバムを作って、ライブをやって、そこで得たものを活かしてバージョンアップしたものを作りたいという感じで走り出していたんです。でも、お互いのスケジュールとか、次はどこのレーベルから出すのか、どういう時期に出すのかといったことの擦り合わせるのに時間が掛かって、結果このタイミングでのリリースになりました。
──両作ともに首を長くして待っていたリスナーがたくさんいると思います。では、『filament/fuse』の話からいきましょう。本作は陰鬱な雰囲気が色濃かった前作『Carry on Your Youth』とは一味違って、より美しい世界観が創り上げられています。
NAOTO:僕の中では、美しいというよりは柔らかいという印象ですね。音楽自体は奇抜なところがあったりするけど、音の質感とかはちょっとホンワカした方向に持っていけたかなという気がしているんです。あとは、より抽象的な感じがするものを作りたいというモードになっていて、それも反映させました。『filament/fuse』の曲はどれも気に入っているけど、その中で特に良いなと思うのは「pyramid」ですね。何が、というわけではなくて、不気味で好きだなという(笑)。
──“ピラミッド”というタイトルにふさわしい曲ですよね。
NAOTO:曲を作って仮タイトルを付けたときから「pyramid」でした。Rie fu(Vo)に、「歌詞と同時にタイトルを変えて」と言ったんですけど、「これは、ピラミッドじゃん」と言われて、「じゃあ、それで」みたいな(笑)。この曲はテーマがミニマムというか、実はコードとかメロディーは同じことを繰り返しているだけなんですけど、それ以外の要素でドラマを創っていくという手法を採りました。だから、やっていることは大したことないけど、印象づけで“モワッ”とした感じとか、スケール感を出していて、それが上手く活かせたなと思います。
──新境地の1曲だと言えますね。新しいと言えば、波多野裕文(People In The Box)さんのリーディングをフィーチュアした「Enter The Mirror feat.波多野裕文」や、エレキギター2本だけで深みのある空間を創り出している「rooms」なども注目です。
NAOTO:「Enter The Mirror feat.波多野裕文」は、もうPeople In The Boxの波多野さんと一緒に何かやりたいというところから始まりました。参加してくれることになって曲を書き始めたんですけど、僕はもともとPeople In The Boxのファンなので、そういう雰囲気を出したいなと思っていたんですよね。それで、曲を作って波多野さんとやり取りをして、波多野さんに歌を乗せてもらいました。「rooms」はギターではなくて、部屋の空間を聴かせたかったんです。ギターは単に部屋を聴かすための要素であって、部屋を表現するというのがコンセプト。僕の中でちょっと実験的な曲で、録ったときは部屋のいろんなところにマイクを立てて、それをブレンドして部屋の質感が伝わるようにしました。
──途中でリズムを無視したギターが入ってくるのも絶妙です。
NAOTO:あれは、部屋の奥行を出したかったんです。ステレオに振った2本のギターで部屋の広さを表現して、前後感も伝えるために入れました。それに、弱く弾いたらどれくらい響くか、強く弾いたらどれくらい響くかという差を出したいというのありましたね。
──NAOTOさんの発想のすごさを改めて感じます。生のリズム隊をフィーチュアした、アッパーな「World is Weeping」もアルバムの良いフックになっていますね。
NAOTO:なんかね、delofamiliaのアルバムには必ずこういうのが1曲入っているんですよ(笑)。アッパーな曲が入ることで、前後の落ち着いた曲がさらに落ち着いて聴こえるので。アルバムのドラマを創る1つの要素として入れ込みました。ちょっと支離滅裂感があるかなという気もするけど(笑)。
──そんなことはないです(笑)。それに、『filament/fuse』は深みのある世界観でいながら、音数が少ないことも印象的です。
NAOTO:少ないですね。delofamiliaに関しては、ちょっと少ないかな…くらいのレベルになっています。ORANGE RANGEと同じように、思いついたアイディアは全部試すけど、そこからどんどん間引いていくんです。よく、音楽の引き算は難しいという話を聞くけど、僕はそこで悩むことはあまりないんですよね。間引くことで、1つ1つの音の細かいディテールが聴こえやすくなるというのもあるし、ドラムが鳴っている空気感とか、ボーカルやギターの最後に消えていく瞬間とかが聴き取れる。音数が少ないことには、そういう良さもありますよね。
1人で歌うことで、自分の中にはこんなに振り幅が
あったんだと気づいたというのはあります(YAMATO)
──同感です。続いて『N2』について話しましょう。冒頭の話からすると、2014年にレコーディングも終えていたのでしょうか?
YAMATO:終わっていました。でも、出すことが決まったときに、“ちょっと待てよ”ということになったんです。録ってから時間が経っていて、今の自分の感覚には合わなくなっているところを変えたいなと思って。それで音もいろいろ変えたし、歌詞もメロディーも変えて、録り直しました。だから、2年前の自分たちではなくて、ちゃんと今のNEENEEを感じてもらえるものになっていると思います。
──リスナーにとって嬉しいことです。『N2』の楽曲は、EDMテイストを活かしつつ独自のものに仕上げていますね。
YAMATO:そう。癖がちょっと強いかなという気がしますけど(笑)。
──いえ、それが魅力になっています(笑)。
YAMATO:なら良かった(笑)。個人的な感覚ですけど、NEENEEの音楽性はちょっとORANGE RANGEに近いというか、チャンプルー要素が強いと思うんですよ。例えば、EDM路線の曲を作ってガッツリEDMにしたいということになると、「良いね、良いね」とみんな言うんです。でも、気がついたらアコギが入っていたりして、どうなるんだろう…みたいな(笑)。そうなったときに、「これはEDMじゃない」とか言わずに「良いね、良いね」となっていく感じが、いろんなものが混ざっているという意味でのチャンプルー要素になっていって。僕はそれがすごく面白いなと思っています。
──柔軟なスタンスが奏功して、『N2』にはいろいろな楽曲が入っていますね。
YAMATO:今回のアルバムでは8曲目の「ずっと…」から9曲目の「COME ON BABY」という流れが一番NEENEEらしいのかなと思いますね。テクノの要素もあるし、一昔前に流行ったものの匂いとかもあって。「ずっと…」はエモーショナルな曲だけど、もともとはガッツリEDMで行こうという話だったんです。だけど、いろんな要素が後から入ってきて、自分たちにとっても新しいものになりました。「COME ON BABY」はアコギが鳴っていたり、ラテンっぽさもあったりして独特じゃないですか。この曲も後からいろんなものを乗せていったんですけど、全部その場で作ったんです。録りながらメンバーと「これOK? これOK?」「良いね、良いね」と言いながら乗せていって、スタジオでセッションしているみたいにその場の閃きとかを活かした結果、予想していなかったところに行けたのがすごく面白かったですね。メンバーそれぞれの個性が混ざり合っていて、なおかつ良いと思えるものという意味で、この2曲が今後のNEENEEの基盤になるような気がしています。
──よりバンド感が増したと言えますね。カントリー・テイストを活かした「俺オレゴン」やレゲエ調の「JUNK!」なども注目です。
YAMATO:「俺オレゴン」は、TETSUSHIがバンジョーを使う曲を作ろうかなと言って、そこから入っていきました。だから、この曲はTAKASHI(G)が生バンジョーを弾いています。ただ、どっぷりカントリーをやろうということではなくて、カントリーを香らせるという感覚でしたね。「JUNK!」はさっき話したように、今回アルバムを出すにあたって歌詞を全部変えて、メロディーも変えました。「Don’t Stop Me」とかもそう。この曲は、2年前はもっとメロウでメロディアスな曲だったんですけど、時間が経って、ちょっと違うモードになって。それで、メロウな要素を残しながらラップがしたいなと思って、今の形に変えたんです。
──どの曲も原型からどんどん変わっていったんですね。では、それぞれアルバムを作るにあたってギターや歌でこだわったことは?
NAOTO:どうだろう? ギターっぽくないギターが多かったりするんですよ。たぶん気がつかないと思うけど、実はギターはいっぱい鳴っているんです。だから、ギターの役割は雰囲気作りという感じですね。ただ、「Enter The Mirror feat.波多野裕文」は、ちょっと聴き応えがあると思う。アコギとエレキギターのアンサンブルでミニマムなフレーズを弾いているんですけど、実は展開していっているんです。それが気づかれないようになっているのがミソというか。サブリミナル的な手法でイメージしていた空気感を創ることができて満足しています。
YAMATO:NEENEEで歌うのは、やっぱりORANGE RANGEとは違いますね。NEENEEの方が役割が多くて、歌うのが僕1人なので。1stの時は“ORANGE RANGEから来たYAMATO”だったから、自分の色を出していけば良いかなと思っていたんですよ。でもライブをして、自分はNEENEEを象徴する存在にならないとダメだということに気づいた。だから、“よりちゃんとしなくちゃ…”という意識が強くなっている気がするし、『N2』の歌録りもそういう意識で挑みました。
──ORANGE RANGE以上にYAMATOさんの様々な表情が味わえることは、NEENEEの魅力の1つになっています。
YAMATO:表情を出せるという意味では、1人で歌うことで、自分の中にはこんなに振り幅があったんだと気づいたというのはあります。ただ、“あまり振り幅を広げてもな…”と思っている自分も今はいるんですよ。ORANGE RANGEは個性の違うボーカルが3人いるから自然と表情豊かになるというのがあって。そういう環境で育って来たから、1人で歌うときも“もっといろんな顔を見せた方が良いのかな”と思って、今回の制作に臨んだんですね。それを後から聴き返したときに、“ちょっと無理してないかな”と思って。そこは、今後の活動の中で見極めていこうと思っています。
NAOTO:今後ということでいうと、僕はこれまでdelofamiliaをやってきて、『filament/fuse』ができたときに、“これだな”と思ったんです。もう他にはなくて、これから先は大きな変化はないと思う。やるべきことが分かったし、やれることも分かって、今後はこういう感じでいくんだろうなという気がしますね。6枚目にして、そこに辿り着くことができた。『filament/fuse』は、そういうアルバムです。