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2015.06.30:Interview

浅井健一×白井眞輝([Alexandros])

総力特集「ギター・ヒーロー列伝」スペシャル対談 on Web

7月9日にニュー・アルバム『きれいな血』が全国流通されるSHERBETSのフロントマン:浅井健一と、
最新作『ALXD』がオリコン過去最高位を記録し、バンドの飛躍を確かなものにした[Alexandros]のギタリスト:白井眞輝。
本誌8月号に掲載している、そんな2人のスペシャル対談のアナザー・インタビューを公開する。
Blankey Jet Cityとしてデビューしてから今日に至るまで、多くのオーディエンスを魅了し続ける浅井と、
その浅井を敬愛し、現在、新世代ギター・ヒーローとしての存在感を示す白井に、
それぞれの出会いから、憧れるミュージシャン、さらにはメンバーから受ける刺激など、
ギタリストならではの視点で語り合ってもらった。
本誌の対談記事と併せ、2人のギター・ヒーローが邂逅したシーンを目に焼き付けて欲しい。


Text/TOMOO YAMAGUCHI

(番組での共演は)楽しみだったかな。うまく行ったらいいなっていう楽しみでもあるし、
少し不安でもあるし、 どんな人たちなのかなっていろいろな気持ちが入り混じっとった。(浅井)
——昨年7月に“Welcome![Alexandros]”で共演したときの印象から教えてください。
浅井:演奏が歌いやすくて、すごくいいバンドだなって思った。すごいよかったよ。好印象(笑)。
白井:ありがとうございます。
浅井:いやいや(笑)。
——白井さんはいかがでしたか?
白井:めちゃめちゃ緊張しましたよ! それでもミュージシャンっぽいって自分でも思ったんですけど、浅井さんと一緒に音を出した瞬間、緊張がほぐれたんですよ。音を出す寸前までは緊張してたんですけど、演奏したあと、「今のどうでしたか?」って聞いたら、「よかったよ。もっとじゃんじゃんやっていいよ」って言ってもらえたんで、だんだん緊張がほぐれてきて、後半は多少緊張しながら、会ったばかりのときよりは和やかにできたと思いました。
——浅井さんを招く方も緊張すると思うんですけど、番組に呼ばれていった浅井さんはどんな気持ちだったんですか?
浅井:シーナ&ロケッツの「レイジー・クレイジー・ブルース」とBlankey Jet City(以下、ブランキー)の「15歳」をやったんだよね。楽しみだったかな。うまく行ったらいいなっていう楽しみでもあるし、少し不安でもあるし、どんな人たちなのかなっていろいろな気持ちが入り混じっとった。
白井:「15歳」を、僕は15歳のとき、聴いてたんですよ。
浅井:へヘ。
白井:その曲をご本人と一緒に演奏できるなんてすごい感動でした。
——浅井さんは白井さんのモスト・フェイバリット・ギタリストだそうです。
浅井:嬉しい。
白井:最初の出会いは、ブランキーの「小さな恋のメロディ」のPVをたまたま見たことだったんですよ。それまではビートルズとかエリック・クラプトンとかを、音楽として聴いてたんですけど、そのPVを見たとき、バンドとして衝撃を受けて。音楽としてはもちろんなんですけど、メンバー個々の楽器だったりとか、雰囲気だったりとか、ルックスだったりとか、もう全部が稲妻を受けたように衝撃的で、“なんてかっこいい人たちなんだ”ってそのとき、初めて思ったんですよ。
浅井:そうだったんだ。
白井:それがきっかけで、音楽をやると言うよりもバンドをやることに目覚めて。それからずっと浅井さんの音楽は聴きつづけてるんですけど、浅井さんの声とギターの音とかに対して、唯一無二という印象があるんですよ。他にもいろいろなバンドを聴いてきましたけど、個性がかぶる人がいない。その唯一無二な感じにいまだに惹かれつづけてて。
浅井:それは嬉しい。嬉しいで…ごわす(笑)。照れるな。
白井:お互い照れくさいですよね。
浅井:そりゃ照れるわ。そんなこと言われたら。
——逆に浅井さんがギターを手に取るきっかけになったミュージシャンっていたんですか?
浅井:すごいなって思うギタリスト? そりゃいっぱいおるわ。小学校4年のとき、俺はショッキング・ブルーを聴いて、かっこいなと思ったのがたぶんきっかけかな。バンドに関しては。小学生の頃なんて、みんな日本の歌謡曲ばっかなんだけど、その点、俺は姉がいたから早い時期からかっこいい外国の音楽を聴いてたからさ。そこら辺かな。最初はバンドをやりたかったんだよね。俺は歌がヘタクソで有名だったから、自分が歌を唄える人間になれるとは思ってなかったんだわ。18か19ぐらいまで。だから、ギターだったらバンドの中で存在できるかもしれないって。ただ、コピーするのが下手でさ。みんな耳コピするじゃん。「今度この曲やるから」ってさ、シド・ヴィシャスのテープもらっても、何回聴いてもどうやって弾いてるか全然分からなくて。すごいイヤだったんだよね、コピーするのが。だから、そんなことやってるんだったらオリジナルを作った方がいいと思って、早々にオリジナルを作り始めてって感じかな。俺が中学生ぐらいのとき、一世風靡してるバンドってみんなすげえうまかったんだわ。クイーンとかさヴァン・ヘイレンとかさ。そんなのコピーできるわけないじゃん。パンクだったらできたけどね。クラッシュは結構難しいと思うんだけど、セックス・ピストルズだったらコピーできた。だけど、俺、パンクの世界がいまいち好きじゃなくて。そのとき、出てきたのがストレイ・キャッツ。「涙のラナウェイ・ボーイ」を聴いてかっこいいと思って、しかも3人じゃん。こういう世界観でやっていくのはいいかもしれないと思ったときもあったし、キュアーとかスージー&ザ・バンシーズとか、マイナー・コードのバンドもおったじゃん。あの世界はかっこいいと思った。だからロカビリーとかサイコビリーの感じか、ああいうダークな感じが好きだったな、高校時代は。そういう感じでやり始めた。
——白井さんはブランキーのコピーをしてたんですよね?
白井:はい。高校のときはベースもやってたんで、今のドラム(庄村聡泰)と「赤いタンバリン」をやりました。21、22歳ぐらいのときはベースで3ピース・バンドをやってたんですけど、ある日突然、「ブランキーのコピーをやりたい」と言って、ギター/ボーカルの奴が、そのとき使ってたテネシアンと自分のベースを交換してやったこともありました。
浅井:俺もあったな。ベースとして加入したんだけど、「俺がギター弾くわ」って。そっちの方がよかった。それはブランキーの全然前。名古屋で18か19ぐらいの頃。
白井:ブランキーはいくつのとき始めたんですか?
浅井:24ぐらい。東京に出てきてから作った。しかも、はじめ(中村)達也は入ってなかった。はじめはGHOULっていうバンドのベースだったゴーストって髪の長い子がドラムを叩いてたんだわ。それがテツに代わって、その次が達也だった。
——ブランキーを始めたとき、ギターの腕に自信はあったんですか?
浅井:フレーズには自信があったかな。俺のフレーズは最高だなって思ってたよ。リフにしてもソロにしても。そのときは適当に弾くソロなんて一切なかったんだわ。今はそのときの気持ちでアドリブで弾いたりするけど、昔は完璧に作り込んでたから、ギターのフレーズに関しては絶対かっこいいと思ってた。
——フレーズを作る上でのセンスを、どんな風に磨いていったんでしょうか? たぶん、読者はそこが聞きたいんだじゃないか、と。
浅井:あぁ、そればっかりは分からない。宇宙のどこからやってくるか分からん。磨き方なんてないんじゃない?(笑)
白井:元々、僕がリード・ギタリストになったのって、自分の意思とは関係なかったんですよ。ベースを弾いてたバンドが解散したとき、今のボーカル(川上洋平)とたまたま再会して、彼がやってたバンドに誘われたんですけど、それ以前はギターでオリジナルってやったことなかったから、ギターでフレーズを考えたことがそもそもなかったんですよ。僕が入ったときはリード・ギタリストがいて、「リズム・ギターだからコードを弾いてればいいよ」って言うから入ったのにリード・ギタリストがばっくれちゃって、「じゃあ、白井君やってみようか」って(笑)。そんななりゆきで始めたんですけど、やっていったら何とかなったっていう感じで。もちろん、ブランキー、ビートルズ、クラプトンをコピーしてたことも役立ってるとは思うんですけどね。24歳ぐらいからギタリストとしてキャリアがスタートしても何とかなるんだなって。フレーズはバンドの中で磨いていったっていう感覚があります。僕はブランキーとかレッド・ホット・チリ・ペッパーズとかメタリカとかから影響を受けてるんですけど、フレーズに関しては曲を作る洋平をはじめ、メンバーが求めるものに応えていくうちにだんだん、オリジナルの形ができていったと思います。

——浅井さんもメンバーから刺激されたって経験はありますか?
浅井:今でも覚えとるのが、10代の頃、先輩とバンドやってたときに俺があるフレーズを弾いたら「キイロいな」って言われたんだわ(笑)。キイロいかダサいだったかな。とにかくそのときは傷ついた。ダサいフレーズを弾くのはやめようと思ったよ。
白井:僕も「音色がダサい」と言われたことがあります。それまでギターをやってたわけじゃないからそもそも機材がないんですよ。高校のときに買った1万円するかしないようなエフェクターしかなくて、「その音かっこよくならないの?」って半年ぐらい言われ続けて、結構落ち込みましたね。うちのバンドはオアシスとかプライマル・スクリームとか、UKロックが好きな連中だから、一発のコードのガーンというかっこよさを求めてたんですけど、その出し方が分からなくて、1人でスタジオに入っていろいろ試したんです。結局、アンプでブーストするのが一番ウケたんですけど、それまでは何を求められてるか分からなくて、すごい迷いました。
浅井:そうだよね。何を言っとるか分からんと会話の仕様がない。
白井:そうなんですよ。何を聞いても、「もっとかっこよく」としか言われないんで。でも、正直、自分はかっこいいと思ってるから提供してるのに、それに対して、かっこ悪いと言われるのはショックでしたね(笑)。
——お2人にそんな時代があったなんてびっくりする読者は多いと思いますよ。
浅井:かっこいいと言ってくれる人もおりゃ、逆の人もおるし、今だっていろいろいるけどね。でも、自分を信じてやるしかないもんな。