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ORANGE RANGE

バンドのすべての要素が最新型となって詰め込まれたアルバム『TEN』

10枚目となるオリジナル・アルバム『TEN』を完成させた5人。
全編打ち込みサウンドで作り込まれた前々作『NEO POP STANDARD』、バンド・サウンドで構築された
前作『spark』と、まったく異なるアプローチから生まれた2枚のアルバムを経て作り上げられた今作は、
それらのサウンド像を融合させたハイブリッドな1枚となった。その結果、楽曲の振り幅も広く、
これまで以上に多種多様な10曲が集まっている。
ここでは、そんなアルバムに彼らがどう向き合ってきたのかを掘り下げていこう。
そしてGiGS10月号本誌では、YOHに絶対的愛器であるアトリエZ製オリジナル・モデルを
語ってもらいつつ、5人の今作におけるプレイ面にスポットを当てたインタビューも展開! そちらもお見逃しなく!!

Text/TAKAYUKI MURAKAMI

『TEN』は1枚目から9枚目までの間に自分たちが見せてきた振り幅の広さが十分に出ていると思います
——ニュー・アルバムの制作は、いつ頃から、どんな風に始まったのでしょう?
NAOTO:今回は制作に入る前に、いろいろな要素があって。まず、前々作の『NEO POP STANDARD』は、全編打ち込みだったじゃないですか。その次の『spark』は、バンド・サウンドを押し出した作品だった。その2枚を経て両方をごちゃ混ぜにしたアルバムを作ったら三部作になるなと思ったんです。ホップ、ステップ、ジャンプみたいな感覚で、今回はごちゃ混ぜにしたいなという気持ちがあった。あとは個人的に、スピーディーに作るということがテーマとしてありましたね。素材を寝かせて、練って、こねくり回して…というんじゃなくて、サクサク進める。いつもは曲があると、自分の中で何パターンかアレンジするんですよ。でも今回は、この曲はこういうスタイル、この曲はこう、というのをすぐに決めて、アレンジも考えた後に寝かせて聴き直したりしなかった。“できた。GO!”という形を採りました。
——瞬発力を活かしたんですね。曲もポンポンと作っていった感じでしたか?
NAOTO:曲はいっぱいあったんですよ。2014年の最後のツアー中に、いつも通りメロディーだけ溜めていって、その段階でそれぞれの方向性やスタイルを決めて、年が明けてから一気に形にしていきました。そうやってできた曲が23〜24曲くらいあった中から10曲を選んだら、自然と打ち込みとバンド・サウンドが半々くらいになったんです。
HIROKI:今回は、大きく言うと打ち込みとバンド・サウンドの2本立てだけど、曲調はかなりバラエティーに富んでいますね。前回、前々回がわりとコンセプトが強めなアルバムだった分、今回はそれを融合させつつもっと幅を広げようというのがあって。それに、どの曲もそうだけど、詰めていくうちにどんどんキャラが濃くなっていったんですよ。「SUSHI食べたい feat.ソイソース」とかも、最初はまさかここまで表に出てくるような曲になるとは思っていなかった(笑)。でも、どこか中毒性がある曲で、そこがデフォルメされていったんです。“ドッカーン!”と来たというよりはジワジワ来た感じがあって、「SUSHI食べたい feat.ソイソース」は、成り立ち的に今回のアルバムを象徴する1曲という印象がありますね。
RYO:打ち込みとバンド・サウンドが混ざったアルバムということに関しては、まったく違和感なかったです。どこかでリーダー(NAOTO)が話していたような気がするんですよ。次は、こういうことをしたいと。前もって聞いていたこともあって問題なかったです。いろんな曲が入っているけど、俺の中で印象が強いのは「ラーメン食べたい feat.ペチュニアロックス」かな。今回の中でも一番クセがある曲だし、ライブでも結構単純な曲なのに盛り上がるんじゃないかと。いろんな意味でインパクトが強い1曲じゃないかなと思います。
YOH:打ち込みとバンド・サウンドという方向性を、実はギリギリまで俺は聞けていなくて。今回「ひと雫」が自作曲で、歌詞も書いたんですけど、他の曲をほとんど聴かない状態で作っていたんです。その後、全曲のデモが揃ったくらいの段階で全体像を把握したんですけど、俺はそういうことから離れたところで、ずっと「ひと雫」と戦っていました(笑)。だから、アルバムの方向性に関して自分はそんなに関わっていないけど、面白いものになったなと思います。
——「ひと雫」は、どういう風に作った曲でしょう?
YOH:もともとは、人の温かさや優しさを表現した曲を作りたいなというところから入っていきました。ただ、楽曲的にも、言葉の面でも、綺麗な言葉だけで片づけたくない部分があって。その辺を意識したし、あとは音数もいろいろ試行錯誤しながら落とし込んでいきました。作るのに苦労したけど、その甲斐があったものにはなったかなと思います。今回NAOTOが作った曲で特に印象が強いのは、最後に入っている「安全な暗闇」です。プリプロをしていて、この曲が出来上がる前にNAOTOが面白いことを言ったんですよ。なんて言ってたんだっけ?
HIROKI:「最後に持ってきたい曲の構想がある」と。
NAOTO:そう。アルバムの最後に、良い曲じゃないけど、カッコ良いものを持っていきたいと言っていたんです。それで、「安全な暗闇」を作ってきたら、みんなに「うん、良い曲じゃないね」と言われました(笑)。
——ORANGE RANGE流ポスト・ロックという感じで、すごくカッコ良いです。
YOH:本当にカッコ良い。あと、偶然ですけど俺の中で「ひと雫」と「安全な暗闇」は、歌詞が繋がっているんです。意味合いの部分とかがリンクしている。そういう風にストーリー性があるから、「ひと雫」を「安全な暗闇」の前にして欲しいとみんなにお願いしました。
YAMATO:アルバムの方向性に関しては、みんなが話したような流れで進んでいって。結果論ですけど、『TEN』は1枚目から9枚目までの間に自分たちが見せてきた振り幅の広さが十分に出ていると思います。ORANGE RANGEのいろいろな要素の最新型を詰め込んだという意味で、“10”という数字にふさわしい作品になりましたね。自分の中で印象が強い曲は、「安全な暗闇」です。これは、完全に今までのORANGE RANGEがやって来なかったものだから。あとは「セプテンバー」とかも好きです。ツアー中、NAOTOと一緒にさだまさしさんの曲に惹かれて、これヤバいねと言っていて。そこからの流れで歌謡曲も良いねという話になって、NAOTOが作ってきました。こういう世界観も今までなかったし、意外と合うなと思って。すごく気に入っています。
NAOTO:俺も印象が強いのは、「セプテンバー」かな。今回のラインナップの中では、一番最初にできた曲でもあるし。
——本当に? 「セプテンバー」はGSっぽい曲ですが、バリエーションとして作ったのではなくて最初に作ったんですか?
HIROKI:最初に出してきました。だから、すごく攻めてきたなと思った(笑)。
NAOTO:アハハ(笑)。でも、挑戦しようと思ったわけじゃなくて、自然とこういうものになったんです。今までにないものが最初にできたということもあって、気に入っているというよりも印象が強い曲という感じですね。
——モータウンやR&Rのテイストを活かした「弾丸ブギウギ♂♀」も注目です。
NAOTO:これはもう、うちの大先輩であるRYOさんが形にしてくれました(笑)。
RYO:形にしたというか、ボーカルを押し出したものが欲しいなと思って、ループしているものに自分のアイディアを乗せてリーダーに渡したんです。コール&レスポンスっぽいサビとかも、うちはボーカルが3人いるからバンド内でできるんですよ。そういう強みを活かすことや、ライブでお客さんに楽しんでもらえるものということを意識していました。
——狙い通りの曲に仕上がりましたね。生のバンド・サウンドとエレクトロの要素を融合させた「Theme of Rainbow」は、両方を繋ぐ曲として作ったのでしょうか?
NAOTO:いや、そういうわけじゃないです。この曲は、サビのテーマになっているシンセサイザーのフレーズがもとの素材としてあって。これを歌メロにするとちょっと突飛だなと思って、それをシンセに置き換えたんです。シンセが効いているからエレクトロな感じがするかもしれないけど、この曲も最初からバンド・サウンドでいこうと決めていました。
——そうだったんですね。今作は、全体的に大人っぽかったり、翳りを帯びていたりすることも特徴になっています。
NAOTO:そこも狙ったわけではなくて。そう感じるとしたら、無意識にそうなったんだと思います。今回は本当にスピード命で、何も考えずに作っていったから。
——ORANGE RANGEは明るくて楽しいバンドというイメージを持っているリスナーが多いと思いますが、陰を帯びたものがすごく似合うことを改めて感じました。『TEN』のリリース後に行われる大規模なホール・ツアーは、どんなものになりますか?
HIROKI:全国ツアーはいつもそうだけど、もういろんな人が来るから。誰が来ても楽しめるライブをしたいですね。あとは、『TEN』の曲をちゃんと引き立てるような流れを作ることを目指します。曲がたくさんあるからセットリストを組むのが大変な面もあるけど、そういう作業も楽しいんですよ。明るくて、陽気なヤツらだなと見せかけて、ちゃんとメッセージも伝えられるライブにしたいなと思っています。
RYO:今回のツアーは、できる限り今まで廻っていないところを突いてスケジュールを組んだので。初めて行く場所ということに新鮮さを感じながらライブをしたいというのはありますね。中身に関して、最近はHIROKIが中心になって考えてくれているので、そこにプラスする今回だけのアイディア出しをみんなでしっかりしたいと思っています。今の自分たちは、それぞれの役割分担がまた変わる時期になっていることを感じているんですよ。俺の中に、自分はこういう役割をすることが一番バンドのためになるというのがあって、早くそれを試したい。新しいスタイルでライブをすることを、すごく楽しみにしています。
YAMATO:“10枚目で10曲”ということがコンセプトになるツアーだけど、ORANGE RANGEは『TEN』に沿った振り幅を十分に持っているバンドなんですよ。なので、昔の曲も交えつつ、『TEN』の方向性を一層強めたライブができると思うんですよね。起伏がなくて退屈なライブには絶対にならないので、楽しみにしていて欲しいです。
YOH:俺の中でツアーに対する想いは、昔からもうずっと変わらないんですよ。たくさんの人に自分たちの音楽を聴いてもらったという感覚があるから、今作のメッセージと、今までの音を組み合わせて届けに行くという感覚です。
NAOTO:…ツアーも楽しみです。
YAMATO:もう、それしかないよね、言うこと(笑)。みんなにだいぶ言われたから(笑)。
NAOTO:うん(笑)。どうだろう? …HIROKIも言ったように、みんなに楽しんでもらえる内容にしたいですね。ORANGE RANGEのライブは小さい子から、お爺ちゃん、お祖母ちゃんまで、本当にいろんな人が来るから。全員に音楽やバンドの面白さを伝えられるライブをしたいなと思っています。