LINEで送る

キュウソネコカミ

改めて立ち返ったバンドの原点「わかってんだよ」

映画『14の夜』の主題歌として書き下ろされた新曲「わかってんだよ」。キュウソネコカミ流の青春パンク・ナンバーとして熱い思いがサウンドに乗せられているが、ここにはいつも以上にヤマサキの感情がストレートに表現されてもいるようだ。そして、その言葉に呼応し、楽器陣4人のプレイもシンプルながらよりソリッドな仕上がっている。ここではそんな楽曲が完成した舞台裏に迫るべく、今作への手応えやアレンジに対する思いを聞いた。さらにGiGS12月号にはヤマサキとオカザワによる「わかってんだよ」ギター奏法解説&本作の肝だと言える制作方法に迫るインタビューを掲載しているので、要チェックだ!

Text/YUICHIRO FUSE

“これがいい曲じゃなかったら、何が俺たちのいい曲なんだ?”って、みんな考えたんです、スタッフも含めて
──キュウソネコカミ初の映画主題歌ですが、どんな感じで書き下ろしたのですか?
ヤマサキ:とっかかりとして、まずは脚本をもらって読んでみたら、そのときに自分が置かれている状況だったり心情といったものが、脚本の主人公とリンクしたんですね。それで、サビはすぐポーン!とできました。「ボロボロになってやっと気付いたよ」っていう。この映画は10代の青春がテーマで、僕は今29歳なんですけど、主人公と感じていることがすごく似ていたんですよね。その時点でサビのメロディーと歌詞は大体できました。後で、Keyを半音下げたくらいで。
──それを、そのままメンバーに聴かせた感じだったのですか?
ヤマサキ:そうですね。とにかくこの曲は勢いがあったので、もうメンバーの前で(ギターを)弾いて歌って。そのときにAメロの“ジャジャッ、ジャジャッ”っていうギターも、仮のつもりで付けて歌ったんですよ。そうしたら、「じゃあこれでいくか」みたいな感じで採用されてしまって(笑)。
──(笑)。まさに青春パンク的な勢いのある曲ですが、10代がやるストレートな青春パンクとは一味違って深みも感じます。どういうアプローチでアレンジしていったのですか?
カワクボ:リズム隊に関しては基本的にはパンクのつもりで作りつつ、それにプラスしてどういう流れにするのかだったり、エモーショナルな部分のどこが美味しいかということをメッチャ考えましたね。とにかく、最初にデモを聴いた段階から“これはいい曲だ”と思ったので、リズム的にはそこまで大きく変えたところはなくて、BメロやCメロでどういうコール&レスポンスをするかとか、どうしたらみんなが盛り上がるかっていうことを気にしました。
ソゴウ:ドラムも基本的にはあまり考えずに、シンプルにプレイして。(カワクボ)タクロウから、「2Aのフレーズをちょっと考えて欲しい」って言われて、そこだけ少し悩んだくらいでした。
カワクボ:実はこの曲にはモデルがあって。僕らはみんな銀杏BOYZが大好きで、そのイメージを(ヤマサキ)セイヤが持ってきたんです。それで「引き倒してくれ」っていうリクエストがあったんで、2Aでは普段なら70とか80くらいに抑えるところを、もう120くらいで弾き倒したんですよ(笑)。
ソゴウ:ドラムの“ドタドタ!”ってビートの裏で弾きまくるっていう銀杏感(笑)。
カワクボ:パンクのムチャクチャ感っていうか(笑)、その感じが出せて良かったかなって思ってます。
オカザワ:ギターは、基本的にAメロの“ジャジャッ、ジャジャッ”は、そのままやろうということになったんです。ただ、それだけっていうのはどうなのかって話にもなったので、イントロからAメロに入る前のリフをAメロの間にも入れてみたりして。それでバランスを取りながら、流れを良くしていった感じでしたね。
──キーボード・パートは、どうでしたか?
ヨコタ:俺って“青春パンクにキーボードはいらない派”なんですよ。ギターがギャンギャン鳴って、ドラムとベースが勢いあって、それで歌がガーッときていたら、それでいいじゃないかっていう。だから俺もできる限りそれを邪魔しないっていうか、弾かないことで貢献しようと思って。ムチャクチャいい曲だったし、歌やギターが飛んでくる感じを出したかったから、いつもだったらギターと同じくらいキーボードも上モノとして出していくんですけど、この曲はあまり弾かずに、むしろ叫びとかそっち方面で貢献しようと思ったんです。実際に、他のメンバーから「もっと弾いた方がいいんじゃない?」と言われることもなかったし、自分のエゴを出して曲のバランスが崩れちゃったらつまらないし。そういう曲って世の中にいっぱいあるじゃないですか。せっかく曲がいいんだから、そうなってしまうよりも、弾かないっていう曲を作れたのは良かったなって思っています。
──この曲はレコーディングより先に、5月のライブで披露されていますが、そうしたアレンジは観客の反応も踏まえてのもの?
ヤマサキ:いや、それはほぼない。
──じゃあ、ライブの時点でもう完成形だった?
ヤマサキ:そうですね。珍しく。
ヨコタ:だって、作ったときから自信があったからなぁ(一同笑)。“これが嫌いな奴っていないよな”と思いながら(笑)、みんなで作ってましたからね。
オカザワ:“早くライブでやりたい”っていう感じでしたもんね、完成したときは。
ヨコタ:やればやるほど(観客は)分かってくれるだろう、っていう。
ソゴウ:実際に、お客さんの反応も良かったんですよ。いつもだったらお客さんが踊ってない部分とかがすごく気になっちゃうんですけど、この曲はお客さんが“ハーッ”って聴き入っている感じというか。歌っていることとか、メッセージが伝わっているっていうことが感じ取れたので、これでいいんだと実感できました。
──そういった、今までとは違う曲が作れた要因は何だったのでしょうか?
ヤマサキ:曲のでき方が違うんですよ。お客さんの心に刺さる曲ができるときって、実際に自分の心にきてるときなんですよ。自分が悲しかったり、悔しかったり、そういうちょっと弱ってるときにできた曲こそ、歌詞に本当のことが表れるというか、届きやすい歌ができるんですね。「わかってんだよ」もちょっと落ち込んでるときに作った曲だからすごい届いてるのかなって思います。日本全国にウケたいと思って作ったわけじゃなくて、結構パーソナルな感情を入れた曲なので、だから初めて披露したときには“ウケてくれよ”“本当にウケるかな”って不安だったんですよね。だって今って、ポジティブな歌詞が多いじゃないですか。“ポジティブ、イェーイ!”“励まし、イェーイ!”みたいな。だけどこの曲って、“俺もダメだから、お前も頑張ろうぜ”みたいな“お前も主役だ!”っていう、ネガティブから上がっていく曲だから、ウケるかどうかが心配だったんです。でも、結構いろんな人が褒めてくれたので、伝わったのかなっていう気がしていて。
──そういった背景があったんですね。
ヤマサキ:結構、歌詞も悩んだんですよ。最近男の子に向けて書いていることが多いから、メンバーに「女の子に向けた方がいいかな?」って聞いたんです。だけど、「変にそっちに振ったらブレるからやめとけ」って言われて。サビのメロディーも、もうちょっと分かりやすい方がいいかなって一度悩んで。僕って、流行りを研究するのがすごい好きなんで、もうちょっと歌詞を減らしめにして大きいサビに作り変えようかと思ったら、「それもやめとけ」って言われて(笑)。
ヨコタ:いいメロディーなんだから、それはやめとけって。
ヤマサキ:「もうやめとけ」「これがいい」って(笑)。でも、結構それくらい曲作りに悩んでいた時期に作ったんです。
──確かに、ずっと取材してきてヤマサキさんの表情が冴えないなと感じた時期もありました。
ヨコタ:結局、メジャーで今までやってきて“キュウソネコカミはこうやるべきだ”みたいなものが、増えすぎちゃったんですよ。その中でセイヤが曲を持ってくることがほとんどで、しかもセイヤは責任感が強いから、“ウケるにはどうしたらいいか?”とか、“こうした方がキャッチーなんじゃないか?”とか、すごく考えてたんですよ。でもそういったことって、インディーズ時代には僕らがやっていたんです。セイヤはあまりそういったことを考えずに曲を作ってきて、それに対して、むしろ俺たちが“この曲をキャッチーにするにはどうしたらいいか?”って。そのバランスがメジャーで活動する中で変わってしまって、しかもみんなの責任感が強くなっていくことで“べきだ”が増えていっちゃったんですよね。それをどこかで軌道修正できないかってことはずっと考えてて。
──そのバランスを、この曲でもとに戻せたんですね。
ヨコタ:“べきだ”がない状態の素の曲をセイヤが持ってきたときに、“これがいい曲じゃなかったら、何が俺たちのいい曲なんだ?”って、みんな考えたんです、スタッフも含めて。要は、セイヤが言いたいことを歌えば良くて、それがみんなにウケるものじゃなくても全然いい。だから、セイヤが“そんなにいい曲か?”って不安に思っていても、俺たちが「これはいい曲だよ」「絶対にいい曲になるから、これをどんどん良くしていこう」って言っていかないと、って思ったんです。実際に作り始めてパッと完成させられたっていうのは、みんなが心の中で同じことを考えていたからなんじゃないかな。キュウソネコカミって5人とも個性がバラバラで、それをギュッと凝縮するように練り上げていけば絶対に面白い曲が作れるんですけど、やっぱりフロントマンはセイヤだぞっていうのがあって。この曲はセイヤの思いや体温が最初から伝わってくる歌詞でしたからね、“これはいいぞ”って無条件に感じたんです。
──その感覚は、歌のニュアンスからもすごく伝わってきました。
ヤマサキ:Aメロの歌い方とかは、歌詞を見ながら、その時々の想いと一緒に歌いましたね。「お前らみたいなクズと一緒にしないでくれよ」っていう歌詞には、実際にそのクズの対象もいましたし、そういうのも場面を思い浮べながら歌うと、喋っているような、嘆いているような感じになるんです。歌詞に出てくる“先に彼女ができた友達”も“スポーツ進学したヤンキー”も実際いるし、その場面ごとにその相手や思い出を照らし合わせながら、自然と出た声で歌ったような気がします。「ボロボロになってやっと気付いたよ」の部分も、スタジオで涙を流しながら歌ってたんですよね。歌詞を書いてるときもちょっとポロリときてたし、ジワッとくるものがあって。だからそういう声がそのまま録れるようにレコーディングしたいなと思ったんです。
──なるほど。バンドにとって「わかってんだよ」は、1つの大きなターニング・ポイントとなりそうですね。そうした曲が完成して、この先のビジョンの見えてきたのでは?
ヤマサキ:「わかってんだよ」ができる前って、本当に“こうあるべきだ“という状態になっていて、かなりしんどかったんですけど、この曲が認められて、1つ前のシングルの「サギグラファー」を生み出せました。実は「サギグラファー」って、「わかってんだよ」の後に作った曲なんですよ。「わかってんだよ」ができるまで、全然曲が書けなくて、すべてにおいて“ダメダメ”“べきべき”みたいな感じになっていたんです。それが「わかってんだよ」を作れたことで、またちょっと昔の“とりあえず作っていこうぜ期”に入って、今はまた、いろんな曲が作れているんです。だからまた、キュウソの一貫性のないアルバムができるんじゃないかな(笑)。
──「一貫性のなさが見えてきた」っていうのも、すごくキュウソネコカミらしいですね(笑)。
ヤマサキ:“なさ”が、とにかくすごいです(笑)。だから今、曲のストックというかフレーズの断片がいっぱいできているんですけど、もう異様な感じになっていて(笑)。
ヨコタ:当然、「わかってんだよ」が良かった分、これに味をしめて二番煎じの曲を作ったりといったことはしたくないし、もう一回楽しい気持ちから曲をどんどん作っていこうという感覚になっていますね。その中で、いい曲やクソみたいな曲が生まれてくればいいし、それをすべて楽しめたら、すごく面白いアルバムが作れるだろうし。
カワクボ:絶対にそっちの方がいいよね。
ヨコタ:自分たちなりのキュウソ像が見えてきたおかげでちょっと遊べるようになって、いろんな曲を作れるようになってきました。
ヤマサキ:だから今は、本当に楽しんで曲を作っていますね。
ヨコタ:しかも、11月からのワンマン・ツアーが終わったら、またどんな風に変わるか分からない。ツアーを経ると、スタイルが変わりますからね。そういったことも含めて、これから先のキュウソどんな音楽を作っていくのか、楽しみにしていて欲しいです。