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Nothing’s Carved In Stone

絶えることのない進化への思いから生まれた新曲「In Future」

昨年、アルバム『MAZE』を携えて行われたツアーの中で原型が生まれたという「In Future」。
そのため今作からは、彼らがステージ上から放出しているような熱量を十二分に感じ取ることができるだろう。
ただしこの新曲が持つ熱さは、そういった誕生背景だけによるものではない。
4人の個性と新しいものに挑戦しようという思いを持って構築された緻密なアレンジによるところも大きいのだ。
その真意をこちらとGiGS5月号本誌にわたって展開する、生形と村松へのインタビューから紐解いていこう。
さらに、誌面では生形が「In Future」のギター・プレイを1曲丸ごと解説してくれたので、
インタビューと併せてそちらも見逃さずにチェックしてもらいたい!!

Text/TAKAYUKI MURAKAMI

いろいろなことをやって来たけど、 さらに新しいことをやりたいという気持ちが強かった
──新しいシングルの制作に入る前は、どんなことを考えていましたか?
生形:去年の“MAZE TOUR”中に、みんなと楽屋とかで話をする中で、うちはラウドな曲があまりないねという話が出たんです。なので、次のシングルはラウドで、なおかつライブ映えするものにしようかなと思っていました。ちょうどツアー中だったので、ライブのことは自然と意識した部分がありましたね。
村松:Nothing’s Caved In Stone(以下、NCIS)のここ何作かは、王道的なロック感を押し出したパワフルな曲が入っているんですよね。前々作『Strangers In Heaven』の「Crying Skull」とか「What’s My Satisfaction」とか。その頃から、いわゆるUKオルタナというよりはUSオルタナのルーツのようなものを自分たちが意識し始めたというのがあって。それが「Gravity」から『MAZE』へという流れを経て、今回の「In Future」にも繋がりました。
──NCISの王道的なロックを活かした曲は、本当にカッコいいです。新曲の「In Future」は、どんな風に作っていったのでしょう?
生形:去年のツアーが終わった後、すぐにみんなでスタジオに入ったんですよ。そのときにひなっち(日向)が、その場でメイン・リフの原形を思いついたんです。それをギターとユニゾンして、チューニングも下げようということになって…という感じだった。だから、「In Future」は、リフが入口になってできた曲です。
──肉感的なロックとデジタリックなキーボードを融合させていることも印象的です。
生形:王道的なリフ物に、そういうものを合わせたのは初めてですね。もう7枚もアルバムを作って、シングルもいっぱい出して、いろいろなことをやって来たけど、さらに新しいことをやりたいという気持ちが強くて。だから、「In Future」はリフを極限まで削ぎ落としたし、アレンジもシンプルにしたんです。それに、いつもは打ち込みは4人で話して、ひなっちとかが打ち込んで、それをレコーディング直前に差し替えたりというやり方をしていたけど、今回はマニピュレーターに来てもらいました。うちのライブに付いてくれている人で、イメージを伝えて、その場で作ってもらったから、最初から完成形が見えやすかったというのがあって。それに、うちはどういうものと一緒になってもバンド・サウンドとして聴かせられるから、そういうところで、「In Future」は打ち込みをより効果的に活かせたというのはありますね。
村松:確かに「In Future」はいろいろ新しいことに挑戦したけど、僕の中では自分たちの開けていなかった引き出しを開けた感覚がすごくあるんです。NCISらしさを引き継いだ上で、自分たちの新しい魅力を提示できたんじゃないかなと思います。
──同感です。「In Future」のプレイについてはGiGS5月号にインタビューが掲載されますので、続いてカップリングの「Ignorance」にいきましょう。
生形:「Ignorance」もツアー中にひなっちが弾いたリフがあって、そこから広げていって形にしました。その当時は自分たちの中でギターとベースがユニゾン・リフを弾くというのが流行っていたんです。それで、ひなっちもそういうアプローチが合うリフを考えたんだと思います。
村松:この曲は、いろんな要素があるというか。ハード・コアっぽさもあるし、USオルタナっぽさもあるし、リフで押す往年のハード・ロックっぽさもある。そういうところで、最初に形になったときに、Aメロがあって、サビが来て、2Aが来て、サビが来て…という、いわゆるジャパニーズ・ロック・スタイルみたいなところに行ってはいるけど、洋楽っぽさを重視した方が良いんじゃないかなと思って。この曲は僕がメロディーを付けたんですけど、そういうことを意識したし、歌詞も意味より響きを重視して作りました。その結果、行きすぎない歌詞になって、それがすごく良かったんじゃないかなと思います。
──象徴的な歌詞が、この曲にはよく合っていますね。
村松:そう。“何を言っているんだろう?”という。僕は、そういう歌詞が好きなんです。要は、聴いて来た音楽が洋楽だったから、最初は英語の歌詞を見ても意味が分からなくて、和訳だけ読むじゃないですか。そうすると、NIRVANAとかが特にそうだけど、もう何を言っているのか全然分からない。でも、そういう歌詞を見てイマジネーションを膨らませたりするのが、すごく好きだったんです。そういう自分の経験が、今回自然と活かされた気がしますね。
──“太陽が落ちてくるのを待っているんだ そして僕は凍てついた時を見ている”というサビ・パートは最高です。では、この曲のプレイについて話して頂けますか。
生形:この曲も「In Future」と同じように、リフはベースとユニゾンしようと最初から決めていました。一番意識したのは、ソリッドなユニゾン・リフと、広がるサビとの対比でしたね。サビのアルペジオはパッと頭の中に浮かんで、すぐに形になりました。空間が広がりつつ、歌の邪魔にならないアルペジオができたなと思って、気に入っています。最後のサビはオクターブ・フレーズになるんですけど、それも最初からイメージがあって。アルペジオとオクターブの両方を当ててみて、1番と2番は広がるアルペジオにして、最後にオクターブに変わるという流れにしました。
──デモを聴いただけで、本当にいろんなギター・フレーズが浮かんでくるんですね。「Ignorance」は、ファットなファズ・トーンもカッコいいです。
生形:この曲は、ビッグマフを使いました。ビッグマフといってもオリジナルではなくて、レナンドカフというブランドのクローンですけど。ビッグマフは音が少しメタリックだから、NCISに合わないなと思っていたんですよ。それで、ずっと使っていなかったけど、久しぶりに出して弾いたら、この曲にはハマッた。NINE INCH NAILSとかを聴くと、これはビッグマフじゃないかなという曲が何曲かあって、ちょっとそういう雰囲気を出したくて使いました。
──歌中のフィルター・トーンを使ったサイケデリックな雰囲気や炸裂するギター・ソロなど、ロック感に満ちたギターになっています。
生形:ソロはみんなイメージが共通していて、メチャクチャなソロが良いと言っていたんです。それで一発録りしました。しかも、曲作りの日に録ったんです。アーミングを絡めたソロをアドリブで“グワァーッ!”と弾いて、その後左側に入って来るソロを重ねて。ソロの後半の右側のチャンネルはディレイの発振ノイズで埋めて仕上げました。
村松:このソロは、めっちゃカッコいい(笑)。構築美を活かしたソロと、こういうフリーキーなソロを両方いけるのは、(生形)真一の強みだと思いますね。歌は、音の響きを重視して作ったから、掴むのが速かった。発音をちょっと気にしたくらいで、ほぼ一発くらいの感じで録った記憶があります。
──やりますね。「In Future」と同じくクールな歌ですが、こちらはクール&エモーショナルな歌になっています。
村松:そう。「Ignorance」の方が少し熱いというか。サビのメロディーが分かりやすく広がっていかないので、Aメロに感情を詰め込んで、サビはリフレインが気持ち良く頭の中でガンガン鳴っているようなイメージで歌ったんです。だから、「In Future」よりもエモーショナルな感じがするんだと思います。
──「In Future」同様、王道的なロック感を活かしつつ独自のものに仕上げたのはさすがです。話は変わりますが、現在のNCISは“Hand in Hand Tour 2016”の最中です。ここまでの手応えは、いかがですか?
村松:“Hand in Hand Tour”は、対バンなんですよ。だから、楽しいよね?
生形:楽しい(笑)。
村松:俺らが好きなバンドで、世代的に近くて、負けたくないというライバル心を持てるバンドを呼んでいるから。良い刺激を受けているし、気持ち良くやり取りできていて、充実感のあるツアーになっています。
生形:俺も同じです。対バン・ツアーをするのは5〜6年ぶりなんですけど、やっぱり燃えるなというのがあって。(村松)拓ちゃんも言ったように、たくさんの刺激をもらっています。ライブ的にはワンマンと違ってちょっと時間が短いので、もうゴリゴリに攻めているんですけど、それはそれですごく気持ち良くて。新しいシングルの曲も含めて、今はバンドのモードがそこなのかなという気がしますね。ガツンといって、圧倒したい。最近ね、バンドというのはやっぱり強力な一発が大事だなと思うんですよ。コード一発、キック一発、ベース一発で説得力があるのが一番強い。どれだけ小手先で速く弾こうが、小難しいテクニックを見せようが、コード一発で黙らせることができれば、それには敵わないんですよね。そういうことを改めて感じながらツアーを廻っています。
村松:それに、新曲の反応が良いよね?
生形:うん。あんなにノルと思わなかった。
村松:まだリリースされていないのに、初めて聴く感じじゃないんですよ。曲が始まると同時に、みんな暴れ始めて、サビでは手を挙げてくれたりして。何か刺さるものがあるんだろうなということを感じています。
──「In Future」や「Ignorance」が加わることで、NCISならではのオーディンスの気持ちを駆り立てる力がさらに高まったことを感じます。“Hand In Hand Tour 2016”を経て、5月15日に日比谷野外大音楽堂で行うライブは、どんなものになりますか?
生形:野音は、俺らにとって初めて座席のあるライブなんですよね。野外だけどホールに近い場所なので、どういうライブになるかが楽しみです。あと、野音はやっぱり特別な場所というか、歴史のある場所だから、俺ら以上にスタッフとか、観に来るみんなが盛り上がっているというのがあって。周りの人たちのそういう期待を裏切らないライブをする自信はあるので、楽しみにしていてください。
村松:真一が言ったように野音は歴史のある場所で、僕自身もユニコーンやTHE BLUE HEARTSが野音でやったライブのビデオを観て育ったんです。だから、そこに自分が立てるというのは、純粋に嬉しいですね。それに、野音に思い入れがある人は本当に多いんですよ。そういう特別な場所に、NCISとお客さんで、また1つ新しい歴史を刻むことを楽しみにしています。