ファンクは世界を巡る!<丸屋九兵衛>
世界的にもファンクは元気だ!<高橋道彦>

12月7日Shimokitazawa BAR? CCOに於いて監修・執筆者を務めた高橋道彦氏と、執筆者の一人でその盟友・丸屋九兵衛氏による「Disc Collection FUNK NIGHT」が開催された。


高橋道彦(以下高橋):この本の監修と執筆をつとめました高橋道彦です(場内拍手)。昔、川崎のクラブ・チッタでPファンク伝説の5時間ライヴがありまして、そこでピンク・タイツのスゴい派手な男が徐々に僕に近づいてきたんです。それが丸屋九兵衛でした。今日は正装して来てくれると思います、九兵衛登場です!

ブーツィ・コリンズの曲に乗って、黒とシルヴァーをベースに、ドラゴンのオブジェが載った黒サングラス姿の丸屋九兵衛氏登場。

♪「So Nice You Name Him Twice」William“Bootsy”Collins

丸屋九兵衛氏(以下九兵衛):この格好何がキツいかというと、このサングラスほとんどこちらからは場内は見えないんですよ。

高橋:それ売ってるの?

九兵衛:ファンタジー好きなのでドラゴンの模型を切ってゴーグルに付けたんですけど、これ重いんです。でもちょっと自慢なのは、ジョージ・クリントン御大はこれを気に入ってかけた──ということで、丸屋九兵衛でございます(場内拍手)、よろしくお願いいたします。で、まず、何の話から?

高橋:ブーツィの新作も出たことだしPファンクの話をしようかなと。

九兵衛:Pファンク・ファンは、渋谷のON AIRとか川崎クラブ・チッタとか横浜ベイ・ホールとかのコンサート会場名で、それがどの時代が分かってしまうんですよ。

高橋:汐留サイカなんてのもあったね。

九兵衛:パックスシアター・サイカ!Pファンク軍団の2回目か3回目の来日がそのハコだったんですけど、不渡りを出して倒産しちゃった。Pファンクって私の服装以外に何か思い出はあります?

高橋:エディ・ヘイゼルが見れたというのと、ベースのビリー・ネルソン。彼がステージ上にいると空気が違うんです、引き締まって。睨みを効かせるからみんなピリピリして。

九兵衛:小柄で悪い人ですよね(笑)。

高橋:初来日のブーツィもいろいろとスゴかったけどね。

九兵衛:3日で4公演くらいやりましたよね、私は2回目と4回目に行って、二度ともステージに上げてもらって4回目の公演のときはブーツィにマイクを突きつけられ “何かやれ”と言われて。

高橋:このペースで行ったら終わりそうもないな(笑)、で、ブーツィの新作『World-Wide-Funk』がかなり出来が良いのでまずは1曲聴いてもらおうかな。スタンリー・クラークとベースの三つ巴はなかなか聴き応えがあります。

♪「Bass-Rigged-System」Bootsy Collins (feat.Victor Wooten, Stanley Clark,Manou Gallo, Alissia Benveniste & World-Wide-Funkdrive)

高橋:ブチブチ弾いてるのがスタンリー・クラークで、ギターみたいな音を出してるのがヴィクター・ウッテンだと思うんですけど、で、ブーツィはスペース・ベースをカマす。こういうタイプの曲と、アルバムのもう一つの柱として80年代ファンクっぽい曲もあって、それを聴いてもらいましょう。

♪「Hot Saucer」Bootsy Collins (feat.Musiq Soulchild &Big Daddy Kane)

高橋:ヴォーカルはミュージック・ソウルチャイルドが入ってて、かなり現役感が高い作品。

九兵衛:ミュージックは現役ですね。ビッグ・ダディ・ケインはどうだかわからないですけど。

高橋:まぁ、そうだね。

九兵衛:こういう曲を聴いてると『What’s Bootsy Doin’?』のときより上手いですよ。変な言い方ですけど、『What’s〜』の頃は「Love Song」なんてメロディアスな曲で、シンセ版アース・ウィンド&ファイアー・ファンクみたいな曲があって、あれはあれで良かったけど、今やってるこういう曲の方が上手くなってていい。

高橋:まぁ曲調としてはブーツィっぽくないかなって気はするけど。

九兵衛:どっちもね、じゃあ『F-Encounter』をブーツィっぽいというかどうか──?

高橋:いいのかな(笑)こういうマニアックな話で。

九兵衛:私がPファンクの話を始めてしまったからこうなってますが、道彦さん、“なぜファンクに目覚めたか”の話はしたの?

高橋:いや、まだ。

九兵衛:そこをしない?

高橋:あ、でもちょっと待って、今、80年代っぽいとかってダフト・パンクとかブルーノ・マーズとか。

九兵衛:タキシードとかセブン・デイズ・オブ・ファンク。いや、タキシードがあんなにウケてJ-WAVEのチャートのものすごい上にいるのに、セブン・デイズ・オブ・ファンクが今ひとつウケないのはかわいそうでしょうがない。

高橋:ちゃんとそういうのに接近してるというか、ブーツィはゲストの帝王みたいな感があって。ディー・ライトからファットボーイ・スリムの「ジョーカー」とか若手と昔から付き合いがあるから、今っぽいトレンドを押さえたような曲を自分でやっても、ちゃんと様になるっていうのがいい感じなのかなと。今、自然体でやってる気がしますしね。

九兵衛:たまたま昨日、私が食事時に観てたのが、『アンダーカバー・ブラザー』なんですよ。2002年の映画で、リアルタイムを舞台にしてるのに、なぜか70年代そのまんまの主人公が70年代のキャデラックに乗って悪をやっつける話で、その映画のメインで流れるのがブーツィとスヌープ・ドッグの「アンダーカバー・ファンク」。──ということでみなさん付いてきていただいてますか?このサングラスで状況が全く見えないんです。

ここで暑さのため若干の衣装替えをする九兵衛氏、その間に高橋氏は、“なぜファンクが好きになったのか”という話題に繋がる70年代のチャート誌のコピーを取り出す。それは、X-JAPANのHIDEも通ったという、この夏惜しまれつつ閉店した高橋氏の地元横須賀の老舗レコード店「ヤジマ・レコード店」が、昔TOP40のチャートをコピーしてお客さんに配っていたもの。当時すでにTOP40オタクだった13歳の高橋少年は片道6〜7キロを歩いて毎週ヤジマにこのチャート・コピーを貰いに行っていたとか。

高橋:今日は当時のTOP40のラジオのエアチェックをかけようかと思ったんだけど、このチャート・コピーが出てきたからいいかなと。

九兵衛:ちょ、ちょっと待って、そのエアチェックはいかなる形で残ってるんですか?

高橋:当時録ったカセットはCD-Rにやいてあるんだよね。

九兵衛:なるほど。

高橋:毎週このチャート・コピーとにらめっこしながら、FEN(現AFN)とラジオ関東(現アール・エフ・ラジオ日本)の番組をエアチェックして、毎週3回ずつくらい聞き返していたんですよ。で、ラジオ関東の番組のアシスタントDJをやってらした大高英慈さんが、76年くらいからかな“Pファンク、Pファンク”って騒ぎ出して、アース・ウインド&ファイアーでもコモドアーズでもなくPファンク推しだったんです。

九兵衛:そういう方、いらしたんですね。あの、Pファンクの日本盤の発売はいつ頃ですか?

高橋:けっこうリアルタイムで出てたよ。

九兵衛:私は『Funkentelechy vs. the Placebo Syndrome』が『ファンキー・パーティ』という邦題で出てる日本盤を見たことはあります。

高橋:そんな邦題だったっけ。そのころはDJの糸居五郎さんがライナーノーツを書いてたり。まずラジオの人たちが騒ぎ始めたのかな。活字の世界では最初はゲテモノ扱いだった。79年の全盛期が終わる頃は。

九兵衛:終わる──頃、その頃のヒットは?「ブラック・ホールのテーマ」とか。

高橋:うん、まぁ、そうかなぁ。マニア筋には『Trombipulation』とかあの辺がウケてたから。その辺からマニアの支持が広がっていって。

九兵衛:2テンポくらい遅れて。

高橋:Pファンクから離れると、中学2年ころから「ミュージック・ライフ」と「音楽専科」と「ニュー・ミュージック・マガジン」を買っていて、そうするとブラジル音楽とかアフリカ物も出てきて、ジョルジュ・ベンの『Africa Brasil』とかフェラ・クティとかも聴けるようになったわけ。

九兵衛:それを推してたのは「ニュー・ミュージック・マガジン」だけじゃないですか?

高橋:あとは「ザ・ブルース」、あれは立ち読みで済ましてた(笑)。難しそうだったから。

九兵衛:説明しておくと、「ザ・ブルース」というのが後の「ブラック・ミュージック・レヴュー」で、その後に私がそこに勤めるわけですが、薄い割に高い本でした(笑)。

高橋:僕は中学2年くらいから「ニュー・ミュージック・マガジン」を読み始めてたから。

九兵衛:ウォーの『仲間よ目をさませ』とかの頃でしょ?

高橋:そうだね、ちなみにここにある75年のチャートで僕が赤丸を付けてるのがアイズレー・ブラザーズの「ファイト・ザ・パワー」、ジョニー・ウェイクリンとキンシャサバンドの「モハメド・アリ おれはスーパーマン」。それで、さっきの話だけどジョルジュ・ベンとかフェラ・クティとか聴き始めるでしょ、そうすると“ああ、自分が好きなのはファンクという要素が強い音楽なんだな”とだんだんわかってきた。

九兵衛:ファンクが好きなのがわかったのは何歳くらいですか?

高橋:78年くらいだから16歳くらいかな。当時はNHKのFMとかがアルバム丸々一枚かけてたから、それをエアチェッしてソウルは聴いてたな。貸しレコードは大学に入ってからだけど、一度も借りたことなかった。大学時代の情報源はディスコかな。

九兵衛:(場内に)当時はクラブなんて言わなかったんですよ。

高橋氏は横須賀出身ということもあり“アメリカは好きだけども嫌い”という感覚があったそうだ。高校時代はヨーロッパ映画を観まくり、音楽はプログレも聴いていたとか。そのため“アフリカ・バンバータがクラフトワークにファンクを感じる”という感覚はすごくよくわかったとのこと。プログレには民族楽器や古楽器がよく使われていて、ワールド・ミュージックの時代に入ってもプログレ体験は役にたったそうだ。
九兵衛氏の場合は初期の007映画のファンで、シャーリー・バッシー「ダイアモンドは永遠に」や「死ぬのは奴らだ」の主題歌を黒人女性が歌う劇中ヴァージョンを聴いて、黒人音楽好きな自分に気づいたとのこと。さらに自宅にあった『世界音楽全集』の1枚に収録されていたジェームズ・ブラウン「セックス・マシーン」「マンズ・マンズ・ワールド」を聴き、ビートルズは禁止されてもJBはOKという家庭で育ったことなどからファンクに接近した過程が語られた。
この後「コズミック・ファンク」流れでSTAR WARS、STAR TRECKがらみの楽曲が紹介された

♪「May The Force Be With You」Bootsy’s Rubber Band?

♪「Funk Funk」Cameo

高橋:キャメオはアース・ウィンド&ファイアーっぽいと思われてるけど、けっこうこういう重い曲もやっていて。でもこの頃はまだまだアイデアを消化しきれてない感じ、

九兵衛:個性が確立できてないというか、こうやって聴くとキャメオは遅れて出てきた気がしますよね。

高橋:でも80年頃のディスコで聴いてた感じだとキャメオがカッコいいのよ。アースはちょっとポップになっちゃって、Pファンクはなかなかディスコではかからない(笑)。

九兵衛:当時のディスコで一番ヒットしたキャメオの曲ってなんですか?

高橋:「シェイク・ユア・パンツ」かな。ただ夜中にならないとかからない。六本木のソウルエンバシーとかブラック・ミュージックが得意なハコ以外だとね。サーファー・ディスコの牙城、スクエア・ビルとかだと。

九兵衛:すいません、サーファー・ディスコではどんな曲がかかってたんですか?

高橋:80年〜82年頃はアースやクール&ザ・ギャングはもちろん、ホール&オーツあたりかなぁ。アースも「レッツ・グルーヴ」はスゴい人気。まぁ、おもしろかったけどね。

九兵衛:じゃ、ディスコで人気がないバンドって何でした?

高橋:Pファンクはかからない。

九兵衛:(笑)

高橋:ディスコは重すぎると無理。かかるとしたら平日のお客さんもほとんどいない夜中。

九兵衛:DJが発散としてかけてたのか。

高橋:あの頃は2時間くらいで波を作ってお客さんを出していかなきゃならないから。

九兵衛:2時間の中にはチークタイムもあったりするんですか?

高橋:もちろん。

九兵衛:過酷だなぁ……DJ。

ここで休憩を挟み後編へ。アメコミを映画化したマーべルの新作2018年3月日本公開予定の「ブラックパンサー」の話題からGO-GOへと話は続く。

高橋:今日、持ってきたのは小学館から出たレジナルド・ハドリン原作の「ブラックパンサー」なんだけど、今のシリーズの原作を書いているのがタナハシ・コーツ(Ta-Nehishi Coates)という、なかなか注目されている作家で。

九兵衛:評論とか、色々書く人です。

高橋:今回の映画のほうにはどうやら関わっていないみたいなんだけど、今後注目の人。コーツはワシントンD.C.のハワード大学卒業で、昔、GO-GOの音楽シーンをまとめる原稿とかを書いていて、本の中ではヒップホップの歌詞の引用とかもしている人で、「世界と僕のあいだに」は全米図書賞も獲ったかな。だからちょっと「ブラックパンサー」も含めて注目して欲しいなと。

九兵衛:で、それが音楽にどう関係するんですか?

高橋:まだGO-GOについて初期は書いていたのに近著の2冊にはGO-GOが出てこないんだよね。だから今後何か書いてくれるのかなぁって期待はあるんだけど。で、GO-GOをかけようと思ったんだけど時間がないので、こういった話だけで。

九兵衛:PAテープの話は?

高橋:GO-GOって地元ワシントンD.C.ではカセットや12インチ盤で聞かれてて。で、ライヴをPA卓からライン録りしたカセット・テープが売られているのを車の中で聴くというのが主流のスタイル。CDで流通するず〜〜っと前からそれが続いてて、インターネット時代になってもそういうコミュニティだけで流通するというシステムが首都ワシントンD.C.で残ってる。これって、すごいですよね。

九兵衛:最近、首都ワシントンD.C.の黒人人口比率がだいぶ下がってきてるんです。昔はジョージ・クリントンが衝撃を受けたという80%という数字だったのが、今は50%を切ってる。だから昔ハワード大学で白人がいたら、“あ、水泳の奨学金で入ったのね”って言われてたのに、今は結構白人いるらしいです。で、そうなってもGO-GOですか?

高橋:今ねぇ、その辺がよくわからなくなってきてるんだよね。ぶっそうな事件も減ってきてるというからクラブとかがまた増えてくるようだと、またもうひと盛り上がりはあるかもしれないって感じかな。

ここで年末12月29日公開の2パックの映画「オール・アイズ・オン・ミー」に話が及び、九兵衛氏執筆の「丸屋九兵衛が選ぶ、2パックの決めゼリフ」が12月22日に、さらに2パックが残した詞をまとめた詩集の新訳を手がけたものが27日に発売されることが発表された。

九兵衛:その2パックの代表曲「カリフォルニア・ラヴ」のサビを歌ってたのがロジャー・トラウトマンでございます──って話ですよね。

高橋:そうですね、今回トークボックスもこの本では大きく取り上げて。

九兵衛:トークボックス地獄みたいなもんでしたね。

高橋:なんでここまで拘ったかというと、トークボックスを使ってる最近の若いプレイヤーに関してはネットに情報はあるけど、ロジャーを例外にするとほとんどないんだよね。しかも、ロックだとジョー・ウォルシュとかピーター・フランプトン、でもそこら辺で止まるんだよね。だけど、ファンクとヒップホップの世界ではずっと人気の楽器──。

九兵衛:みんなトークボックスの原理って知ってますか?って説明できる人もいないと思うけど(エフェクターの一種で、口に加えたチューブで楽器の音に人が喋っているようなイントネーションを加える)。

高橋:なぜネットに引っかかってこないかと言うと、あまりアルバムにクレジットされてないんだよ。そうするともう、聴いて使ってることを判断するしかなくて、そういうのは面倒くさくて皆やってないんだろうなと思うんです。人気のある楽器というかエフェクトというか、なのにネット上では探せない。

九兵衛:ブルーノ・マーズの「24Kマジック」でトークボックスをやってるのは?

高橋:バイロン・チェンバーズ。その辺の若手は元気だよね。で、先駆者のスライ・ストーンが始めて、続いてスティーヴィー・ワンダー、でそのスティーヴィーを見たロジャーがやり。

九兵衛:スティーヴィーの何を見たんですか?

高橋:セサミ・ストリートのライヴ。で、ここでそのスライとオハイオ・プレイヤーズ出身のジュニーのトークボックスを聴いてもらいたいと思います。

♪「Sex Machine」Sly & The Family Stone

♪「Super J」Junie

高橋:ジュニーはオハイオ・ファンクの先駆者なのでロジャーに近い感じもするんですけど。あとジュニーの場合、キーボードもウニウニやっていて、その代表曲が「ファンキーワーム」なんですけど、ちょっとそれを聴いてみましょう

♪「Funky Worm」Ohio Players

高橋:これはトークボックスじゃなくてシンセで出しているけど、こういう使い方も方向性としてはトークボックスと一緒かなと。この音を旗印にして90年代にGファンクが色々と作った。僕は90年代に原稿でGファンクのキーボードの音はアラブっぽいと書いたことがあって、当時は突拍子もないこと言っていると思われたかもしれないけど、今だったら受け入れられるんじゃないかな。

九兵衛:音階がアラブ。

高橋:そうそう、ヒップホップがかなりカリブ海方面の色が強くなってきてるのと共通するところがあるのかな。このジュニーみたいなキーボードの使い方をいまやっている人を挙げると、シリア出身のオマー・スレイマンっていう人がいて、ちょっとその人の「Wenu Wenu」を。

♪「Wenu Wenu」Omar Souleyman

高橋:それで、トークボックスに戻ってブルーノ・マーズの「24Kマジック」を。方向性が似てるっていうのが分かってもらえると思う。

♪「24K Magic」Bruno Mars

高橋:どちらも半音縛りから逃れていく感じで。トークボックスと原理は違うけどオートチューンも。オートチューンって本当は音程を正しくする、ピッチを正確に直すものなんだけど、全然違う方向へ行って、ダフト・パンクの「ワン・モア・タイム」辺りだとまだロボ声とか言われてたけど、それからは西洋音階からずれていく方向になって定着した。トークボックスはオートチューンよりも明らかに肉感的。肉体労働(笑)。方向性としてちょっと注目しておいた方がいいかなと。

九兵衛:オートチューンもトークボックスも?

高橋:オートチューンはまだ大丈夫かな?

九兵衛:大丈夫ですよ。この半年強で、最も「今」のヒップホップを集めたアルバムが、実は『ワイルド・スピード』のサントラだと思うんですけど、それは一曲たりともオートチューンを使ってない曲がないんですよ。それくらいオートチューンの嵐で。イヤになる人は絶対イヤになると思うんですけど、あれが今のヒップホップだなと。

この後プリンスの話題になり、プリンス生存論者の九兵衛氏は“好きなのは結局『1999』かな、でも後追いですけど「D.M.S.R.」が強力だったかな──”と。

♪「D.M.S.R.」Prince

九兵衛:これを聴いたときは、自分はシンセサイザーが好きなんだと思いました。でも、子供心に、「dance, music, sex, romance」ってなんてひどい歌詞なんだろうって。他の部分は分からなかったけど。

高橋:ディスコでは「ヘッド」がよくかかってた。

九兵衛:ひどい曲かかりますね。

高橋:まぁ、でもノリはいいから。

九兵衛:小錦が口ずさんでいた「ヘッド」でしょ、その話道彦さんから聞きましたから(笑)。

高橋:僕は『コントラバーシー』とかの頃が好きで、YouTubeを見てたら<プリンスがマイケル・ジャクソンのカバーをしてる>っていうのがあって、なんだそれ?と思ったらこれだった。

♪「Cool」The Time

高橋:これを作る前にプリンスは初めてイギリス公演に行って、それでニューウェーヴ色が強くなって。シンセはゲイリー・ニューマンだよね、ほとんど。これはPVでもちゃんとタイムが演奏してることになってるんだけど実際はほとんどプリンスが作っている。これがマイケルのカバー「今夜はドント・ストップ」だっていうのは、このパーカッションから言われてるんだろうなと。それで昨日、もう一度検索してみたら、なんと本当に2015年のボルティモア公演で「ドント・ストップ」をプリンスが歌っていた。あ、やっぱりこれ元ネタ的に使ってたんだなって。「ドント・ストップ」を歌い終えると「クール」に行くんだけど。

九兵衛:なるほど。

高橋:で、最後にJB、ジェイムズ・ブラウン。この本の最後の方で<JBと世界の音楽とのつながり>みたいなコラムを書いたんだけど、「I’m Black And I’m Proud」は国内情勢からできた曲だと思いがちだけど、やっぱりその前にJBが68年3月に初めてアフリカに行って、そこでいきなり8〜10万人の人が集まってきて、それがみんな黒人で──そういうのを目の当たりにして、という前提があって作られた曲なんじゃないのかなと僕は考えてるんです。でもあまりこれに関した本人の発言はなくて。なぜかと言うと4月に帰ってきて2日後くらいにキング牧師が暗殺された──。この辺りはまだ研究していこうと思ってます。じゃ最後に68年8月のダラスでのライヴから。

♪「Say It Loud, I’m Black And I’m Proud」James Brown

高橋:JBから巡り巡って、今はもう世界中で、アンティバラスっていうバンドみたいに、アフロ・ビートやファンクとエチオピアのファンク系の音楽がごちゃごちゃに入り混じった大所帯バンドがすごい元気で。その辺も今後は注目かなと思ってます。

九兵衛:ファンクは世界を巡るということで。

高橋:世界的にもファンクは元気だと。

九兵衛:ありがとうございました。

高橋:ありがとうございました。この後DJタイムに入りますので。

九兵衛:DJってむっちゃおこがましいですよ(笑)そんなスキルないですから。

高橋:脳内のオートチューンで補正して楽しんでいってください(笑)。

この後、DJ QB、DJ MITCHIEのDJタイムとなった。

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    ●パート3:ファンダメンタル-ファンカメンタル=アイズレー・ブラザーズ、アース・ウィンド&ファイア、カーティス・メイフィールド、メイヴィス・ステイプルズ、ウォー、コン・ファンク・シャン、ボハノン、マーヴィン・ゲイなど

    ●パート4:ザ・ランド・オブ・ファンク:オハイオ=オハイオ・プレイヤーズ、ザップ、ロジャー、レイクサイド、ボビー・ウーマック、ダズ・バンド、ザ・ヴァレンタイン・ブラザーズ、ミッドナイト・スターなど

    ●パート5:ジ・オーラル・ヒスとリー・オブ・ファンク~トーク・ボックス名盤選

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    【CONTENTS】
    [PART 1]
    3 FUNKingdoms+Prince
    3人の王とプリンス

    [PART 2]
    pre-FUNK / early FUNK
    初期ファンクの作品群

    [PART 3]
    FUNKamental Artists
    ファンダメンタルなアーティストとその代表盤

    [PART 4]
    O-H-I-O:The Land Of FUNK
    Dayton and Cleveland, Cincinnati and other cities
    ファンクの都、オハイオ州のアーティストと作品

    [PART 5]
    Talkbox:The Oral Histry of FUNK
    ファンク楽器、トークボックスの名曲選

    [PART 6]
    Take'Em To The Bridge! The Golden Years Of FUNK
    1970's FUNK Band, Vocal-Instrumental Groups, FUNK Vocals, Jazz FUNK
    ファンク黄金時代

    special column
    Hey Man, Smell My Finger! The Sexiest Album Covers of FUNK
    エロジャケをちょっとマジメに語ってみる

    [PART 7]
    Saturday Night Forever!?:The Originator Of "Uptown Funk"
    1980's FUNK & Boogie / New York Sound / Electric FUNK and others

    [PART 8]
    Mothership Collection:Cosmic FUNK
    コズミック・ファンク

    [PART 9]
    Mumbo Jumbo Gumbo FUNK Bomb:New Orleans Funk+Washington DC's Go-Go
    ニューオーリンズとワシントンDCのファンク

    [PART 10]
    Keep Your FUNK Alive:The Real Music For Real Music Lovers
    ファンクの神髄はライヴにあり

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