7月22日『ROCK AND READ』78号の発売を記念したトークイベントが幸樹(ダウト)をゲストに迎え、高田馬場ZEAL LINK店内にて開催された。当日の司会進行は吉田ROCK AND READ編集長が担当。
猛暑の休日午後1時、満員になった店内に吉田編集長が登場、早速幸樹(ダウト)を迎え入れる。

まずは曲を作って演奏して、CD出すのはその後。それがバンド本来の姿だと思うんです

幸樹:暑い中お集まりいただきありがとうございます、今日もこの後ライヴなんですけどその前に久しぶりにイベントを。こうやってROCK AND READ吉田編集長と話す機会はなかなかないので、今日はちょっと真面目を多めに。

── オフレコ話をいっぱいしようと思ってます(笑)。

ここで着席を促すが、「縦社会なんで、僕立ってしゃべります」と立ったままの幸樹、流れで吉田編集長も立ったままのトークが始まった。

── 今日は本当に暑くて熱中症が話題になってるんですけど、大丈夫ですか?

幸樹:暑い方が好きですね、僕、寒いのが苦手なんで。明日も野球があるんですけど。(場内からえ〜〜!と驚きの声)、いや、野球やってると、“野球やってるヒマあるんですか?”って意見をよくもらうんですよ、これがジムだったら“ストイックですね、頑張ってますね”って言われると思うんですけど、これって一緒じゃないですか、やってることは(笑)。で、これ俺だけかなと思ったら、バンドマン結構みんな言われてるみたいで。“みんなでワイワイやってるだけみたいに見えて、俺たちがどれだけガチでやってるか分かってないよね、今度みんなにも見せよう“って話になってましたよ。(場内に)相当緊迫した中で野球やってるからね、守備でエラーしたらベンチに戻りたくない気持ちでやってますから。

── 明日?

幸樹:夕方からと、夜からの2試合なんで、そんなたいしたことないです。(場内驚きの声)。この前11時からやったんですけど、さすがにそれは暑くて無理だったので昼は止めたんです。

── いやいや、明日、東京は今世紀最高の暑さらしいですよ(結果・翌日7/23熊谷市で国内観測史上最高の41.1度を記録)。で、野球もこの暑さの中での挑戦だと思うんですけど、今回の「ROCK AND READ 078」での幸樹さんの撮影もかなりの挑戦だったと思うんです。「シーシャ/水タバコ」を吸ってる写真を撮りたいってリクエストを貰って、ちょうどダウト10周年を終えたということもあって、水タバコをリラックスした雰囲気で吸ってる、まったりチルアウトした写真を撮りたいのかなと思ってたんですね。それが、シーシャの専門店を借りてロケをしたんですけど、スゴいことになっちゃって。

幸樹:僕の中では、自分の中からアクを出す感じで。

── デトックス。

幸樹:そうです、巡り巡って浄化をイメージして。一番白く出せるものを調べたらシーシャだったので。でもやってみてこんなに辛いものとは思わなかったです。ああいう吸い方をしちゃダメみたいで、本当は3時間くらいかけてゆっくりと吸うそうで。

── 撮影なので、カメラマンが煙を出してくださいって何度も言うもんだから。

幸樹:全部空気を出して、全部シーシャ吸ってっていうくらいやったんです。最初は余裕だったし、煙の上手な出し方を教えれくれた女性の店員の方も慣れてるからバカバカ吸って白い煙を出すので、こっちも負けん気が出てやったんですけど──。人生の中で初めてですね、あんなに酸欠になったの。何度も中断して、吐く物がないのに吐き気がするってあんなにキツいんだなぁ…って、生まれてから一番気持ち悪かった。でも、ある意味デトックスですよね。

── あの撮影もかなり無謀だと思うんですけど、僕の中ではダウトって無謀なことをやるのが真骨頂みたいなイメージがあるんですけど。

幸樹:たぶん僕ら5人が、あまり無謀だとは思ってないんですね。事の大きさがわかってなくてやってしまったり。結成してすぐの頃、リハスタの近くに豊島公会堂があったんです。当時、渋谷公会堂でやることが憧れだったけどさすがに結成2年じゃ無理かと、でもなんか近い感じがしたので、豊島公会堂の事務室に5人で行って、“ここで僕らライヴしたいんですけど“って…。

── え!? 豊島公会堂に直で行ったってことですか?だってあれは豊島区の公的機関の会場で、そこに駆け込みで行った?すごい度胸。

幸樹:後々調べると、ブルーハーツがやってたり。

── 80年代は、BUCK-TICKだったり、ポジパンのバンドもよく使ってた会場ですね。

幸樹:警戒心がないんですかね、結局その話はポシャったんですけど。あと、僕ら『ZIPANG』ってアルバムでジッタリン・ジンの「夏祭り」をカバーしてて、2周年で<府中の森芸術劇場ふるさとホール>でライヴをやることになったとき、いつも使ってたリハスタにWhiteberry(「夏祭り」をカバーしてヒットさせた女性バンド)のヴォーカルの人が働いてたんです。これはライヴに登場していただこう──ってお願いしたんですけど、正式に断られました(笑)。

── そういうのは普通ためらうのに(笑)。

幸樹:僕らダウトは、スタッフとかと仲良くなり過ぎちゃって、スタッフがメンバーに対してキレることが多いんです、ローディの子とかも。昔ならあり得なかったですよ、ローディがメンバーにそんなことしたらすぐに坊主でしたから。

── 今、バンド同士ではどうなんですか?昔は楽屋でケンカしたりとかありましたけど。

幸樹:昔、そういうのを目の当たりにしてましたけど、今は全然ないです。挨拶も“おはようございます”1回です。昔はすれ違うたびに“お疲れさまです”を言わなきゃいけなかったけど。

── まぁ、いいといえばいい時代。

幸樹:でも、先輩からは言われるんですよ、“よく他のバンドと写メ撮れるよな、俺たちの頃は敵でしかなかったから”って。で、先輩に“ちょっと一緒に写メ撮ってもらっていいですか?”って言ったら、“いいよ”って(笑)。

── 昔は打ち上げもあったじゃないですか、飲むときは必ず一気で。一気飲みオンリー(笑)。

幸樹:先輩から、ジョッキを指して“おい”って言われたら、まずそれを空にしてから飲まないと失礼に当たるので、一気で空にしてから、“ありがとうございます”って戴いてました。

── そういうのは最近はない?

幸樹:全然ないです。今、打ち上げもなくて、皆結構さっと帰りますからね。

── 会場の皆さんから事前にいただいた質問にもあったんですけど、お酒って飲む方ですか?

幸樹:飲むときは飲みますよ。でもビールが飲めないんですよスゴく酔うので。だから赤ワインとか。これは痛風で尿道結石持ちのおとん(父)が“結石は死んでもいいいと思ったくらい痛いぞ、だから遺言だと思ってこれから先、酒を飲むのなら赤ワインにしておけ”って。赤ワインはアルカリ性らしいんですよ、だからそれ以外飲むなって。

── いい話なんだかどうだか分からない話ですね(笑)。

幸樹:遺言だと思って──って言いながらピンピン生きてますけど(笑)。

── (笑)、さっきの無謀な話に戻るんですけど、去年から今年にかけてやった「前人未到!47!?都道府県フリーライブツアー2017-2018」って無謀の極みですよね。

幸樹:100か0かっていう意識がうちのバンドは強いんです。47ツアーのハコ(会場)は決まっていて、他のバンドからも地方の状況を聞いていて。じゃぁこのツアーをやることで、僕らにとって一番のプロモーションになることは何だろうって考えたとき、それはテレビとかに出まくることじゃなくて、ライヴを見てもらうことが一番いいってことになったんです。で、“よし、じゃぁ全部フリーにしようよ”ってことになったんですけど、絶対一人くらいは “いやいやいや”って言うですけど、うちらは全員“それで行こう”って。だからシンプルなんです、<いいライヴをすればいい>って。

── それはそうですけど、全部フリーライブですよ!?

幸樹:もちろんタダでライヴができるわけじゃないので、“最悪バイトしよう”って。僕以外みんな自営業なので。

── その47都道府県も、もしお客さんがゼロだったやらないっていう条件で。

幸樹:1人でもやろうと思ってました。で、フタを開けたら初日の山形はゼロ。最初の第一開封のときは山形だけゼロで、あぁこれじゃできないね──って思ったんですけどその後伸びて無事に。

── よかったです(笑)。で、その47都道府県フリーライヴツアーを発表した日のライヴがまたスゴくて、なんですかあの10時間110曲ライヴって。

幸樹:全曲ライヴ。あれは今までやった曲を全部やりました。

── だってあのムックの逹瑯さんが褒めてましたもん、あの毒舌逹瑯さんが(笑)。

幸樹:逹瑯さんから連絡が来たんですよ。“あれってメドレーとかでやったの?”って聞かれたので、“全部フルでやりました“って答えました。そしたら“マジすげえね”って。

── 逹瑯さんが褒めるくらいの無謀なことをやったわけですけど、喉は大丈夫なんですか?

幸樹:喉は余裕でした。最初は抑えて──とか思ったんですけど余裕でした、まだ行けましたね。でも夜11時過ぎまでやってて、ファンの方々がそろそろ終電が──っていうのが心配でした。

── 喉は何か鍛えてるんですか?

幸樹:極力使わないですね。ライヴの日だとほとんど喋らないし、リハーサルも自分のモニターさえ良ければいいわけで、そこで練習しようとは思わないし。だからリハは2曲くらいで出ますね。

── 普段何かケアはしてるんですか?

幸樹:加湿くらいじゃないですか。昔はワンマン・ライヴ1本やるだけで声が全然出なくなってたんです。それって自分の自信のなさから全部の曲に対して100%で歌ってて、抑揚もない一本調子で。でも意外に俺の声って優しく歌っても聴こえてる──って思ってからは、歌の振り幅が大きくなって、それが喉を痛めなくなった原因かなと。

── ツアー中には飲まない?

幸樹:絶対飲まないですし、ホテルの部屋は真っ白になるくらい加湿して。そうすると全然違いますよ。

── 野球は──喉には関係ないか。体は鍛えられるかもしれないけど。

幸樹:野球は僕のメンタルケアで。これ、よくバンドマンは言うんですけけど、<あと4日頑張れば野球に辿り着ける>って。だからそれが今の原動力になってるんです。

── その野球関連の質問も来てまして、“YUKKE(ムック)さんをどう思ってますか?”。

幸樹:YUKKEさんキャプテンなのに最近来ないんですよ。ハマの番長、三浦大輔さんがピッチャーの時にYUKKEさんがショートで。1回ポロっとエラーしちゃったんです、1回くらいするわな──と思ったら、不運にもその後YUKKEさんの所ばかりに飛んじゃって4連続エラーをして。番長も4回目のときはグローブで指して、オイッ!!って。で、最近来ない。

── YUKKEさんのメンタルが心配(笑)。

幸樹:でも野球のメンバーのLINEでは“今日も行けなくてゴメン”って会話はしてくれます。

── 端から見ていて、幸樹さんって交友関係がすごく広い人っていうイメージがあるんですよ。

幸樹:いや、僕、全然ないですよ。好きなものに対して集まる人たちと仲がいいだけで。やっぱり人って怖いじゃないですか、だから必要以上には踏み込まないようにしてます。

── 僕の印象では誰にでもフレンドリーな優しい人ってイメージなんですけど。

幸樹:深く探ると、意外とこの人ひねくれてるなって所はたくさん出てくると思いますけど。

── 最近よく遊ぶ人っています?

幸樹:今は野球が恋人みたいになってしまっているので。

── この一号前のROCK AND READ(077号)でゴールデンボンバーのキリショーさんに表紙をやってもらっているときのインタビューでも、わざわざ名前を出して、“ダウトはスゴい”と。今のバンドはバンギャに嫌われることを嫌がって守りに入るというか飛び出すようなことをしていないのに、ダウトはそれを恐れないでチャレンジしてる──と褒めてました。そういう意味では最近のヴィジュアル系に対して思うことあります?

幸樹:昔はもっと個性のあるバンドがいて──って思ってたんですけど、実は昔も今も同じようなバンドはいっぱいいて、その中で残ったのはオリジナリティがあるとか、何かしら取っ掛かりのあるバンドで、それは変わらないと思うんです。僕はメジャーにも行ったし、だからメジャーに行ってない後輩が“メジャーに行っても売れないっすよ”って言ってくるのは、“お前、それ違うから、売れるバンドはインディーズでも売れる”っていうのは話してます。結局はバンドなんですよね。

── だからそういう意味ではメジャーもインディーズも関係ないと思うんですけど、今は、ダウトって完全インディーズですよね。

幸樹:今日も一人で来ましたから。マネージャーいないです、キレて来るローディはいますけど(笑)。でもそれって当たり前のことで、自分たちが結成したときってバイトもして、その中でグッズを作ったり、全部自分たちでやってたし。今ってCD出すのが最初じゃないですか、でもその頃はCDも出せなかったから曲先行で作って演奏してそのあとCDを出して。それがバンド本来の姿だと思うんです。今、バンドとして曲をたくさん作っていて、CDを出さなくても演奏したいし、もしツアーがあったら、“え、この曲何?”って曲が半分とか1/3あってもいいなって思ってるんです。いろんな経験をして、今、気持ちが結成した当初の感じに戻ってる気がします。

── という感じで話がまだまだ続きそうなんですが。

幸樹:え、まだまだ行けますよ。

── でも時間が来たので、何か告知があれば。

幸樹:今日この後ツーマンがありまして、10月20日に僕、誕生日のライヴ「KOUKI BIRTHDAY PLEMIUM CONCERT 幸の恩返し‘18〜満天の演奏会〜を北とぴあドームホールでするんです。で、まだ発表してないんですけど、誕生日当日はやっぱりダウトでやりたいと思ったので、10月21日も空けておいてもらえたらありがたいなと思います。

── あと何かやってみたいことは?

幸樹:もっと吉田さんと話したかったです。

── でも、だってダウトはこのあとライヴがあるんですよ!

幸樹:そうっすよ(笑)。でも楽しかったです、たぶん掘り下げるともっといろんな話があるんですけど。

── ま、でも今日はこんな感じでトークを締めてサイン会に。

幸樹:ありがとうございました。(場内大拍手)

この後、サイン会が行われた。

IDOL AND READ 014 のご案内

  • ROCK AND READ 078
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  • ROCK AND READ 078

    A5判 / 224ページ / ¥ 1,320

    ミュージシャンの本音と本心に迫るパーソナルロングインタビュー集『ROCK AND READ』の78号の表紙巻頭は、6月13日に9枚目のオリジナルアルバム『NINTH』をリリースするthe GazettEのボーカリスト、RUKI。
    ひたすら重く暗黒だった前作『DOGMA』から3年を経て産み落とされた今回の『NINTH』の神髄を、「DOGMA」「2017」「NINTH」「歌詞」「プライベート」「恋愛観」「the GazettE」「ヴィジュアル系」「死」の9つのキーワードで紐解いた。

    巻末には、「ソーシャルミュージックシーン発の男性アーティスト」として今、飛ぶ鳥を落とす勢いのluzが本誌に初登場(以前は別冊で登場)!
    ミュージシャンとして、ボーカリストとして、アーティストとして、歌や音楽にかける思いをたっぷりと語ってもらった。しかも、今までほぼ隠してきたその美しい顔を、今回はフルで誌上初公開! そちらも注目だ。

    さらに、昨年秋にSuGを解散させ、今年3月にsleepyhead名義でソロ活動を開始した武瑠や、6枚目のソロアルバムを6月20日にリリースするBREAKERZのAKIHIDE、アルバム『doorAdore』を引っ提げたツアーを5月の中野サンプラザで完走したPlastic Treeのナカヤマアキラら、今回も『ROCK AND READ』ならではの充実したラインナップで迫る。

    【CONTENTS】
    RUKI the GazettE

    武瑠 sleepyhead

    AKIHIDE BREAKERZ

    ナカヤマアキラ Plastic Tree

    幸樹 ダウト

    公大 Royz

    眠花-minpha- ペンタゴン

    来夢 キズ

    DAISHI Psycho le Cému

    luz

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