『音楽の架け橋 快適音楽ディスク・ガイド』発刊記念トーク&サイン・イベント

『音楽の架け橋 快適音楽ディスク・ガイド』発刊記念トーク&サイン・イベントが、1月12日(祝)HMV record shop渋谷 1F にて大勢のオーディエンスが注目する中開催された。当日は著者・渡辺亨氏に、ゲスト・片寄明人氏を迎え、音楽のつながりを求めて、各種音源を聴きながらイベントが進められた

音楽はこうやってつながってゆくんだな…と実感した快適で濃密な時間

(入場曲)

◎ナチュラル・フォー「カウント・オン・ミー」(『ヘヴン・ライト・ヒア・オン・アース』収録)

渡辺亨:『音楽の架け橋 快適音楽ディスク・ガイド』の著者の渡辺です。今日はこの本にエッセイを寄稿していただいた片寄明人さんをお迎えしています。昨年GREAT3のライヴに伺ったときに。
片寄明人:8月のワンマン・ライヴですね。
渡辺:そのとき片寄さんとショコラさんに直に原稿をお願いしたんです。
片寄:直接頼まれたらイヤとは言えないし(笑)、気合いを入れて書かなければいけないなと思いました。
渡辺:エッセイ原稿は書いていただいた方全員、直に頼んだんです。ゴンチチの二人は15年一緒に番組をやってますので、これも直接お願いして。というわけで、今日は片寄さんにトークのお相手をしていただきます。
片寄:よろしくお願いします。

渡辺:まず、この本のコンセプトを簡単に説明しますと、333枚、僕がいいと思ったアルバムを紹介する、というもので。言ってみればそれだけのものなんですけど、ただし、敢えてジャンルは何も触れてなくて。
片寄:普通ディスク・ガイドってジャンル分けされているというイメージが多いんですけど。
渡辺:まず、音楽を、アルバムをジャンルから解放したかった。あと、ジャケットも含めてアルバムだと考えるので、1ページに3枚カラーでジャケットを載せて紹介しています。今、ディスク・ガイドってどんどん細分化されて、いろんな細かいジャンルに分かれているんだけど、すべてに漏れる人がいるんですよ。僕はそういう人が好きだったりするんです。
片寄:GREAT3もそういう意味じゃ、ジャンルは最終的にはロックになるんですけど。いろんなものが混じってますし、亨さんの紹介される音楽も割とそういう傾向がありますね。
渡辺:で、まず、サンプルとして1曲かけましょうか。アンリ・サルヴァドールとタジ・マハールとオル・ダラという一見音楽的にはあまり関係がないように見えるけど、ジャケットがいい雰囲気のものを3枚並べて紹介しています。タジ・マハールは1977年の『ミュージック・ファ・ヤ』と、2001年のオル・ダラ『ネイバーフッズ』から1曲ずつかけてもらいましょうか。オル・ダラは60年代からのフリー・ジャズのミュージシャンですけど、自分のアルバムではシンガー・ソングライターですね。

◎タジ・マハール「運命の女」(『ミュージック・ファ・ヤ』)
◎Olu Dara「Neighborhoods」(『Neighborhoods』)

片寄:オル・ダラは、フリー・ジャズのミュージシャンとは思えませんね。タジ・マハールは非常にシャレていて。
渡辺:タジ・マハールは黒人だけどブルース・コミュニティの出身じゃなくて、ライ・クーダーと一緒にバンドやっていたくらいの人だから、外部からブルースにアプローチして行った人なんですよ。だからブルースはそんなに魅力的に思えないんだけど、カリプソとかカリブ海の音楽をやらせるとすごくいいんです。
片寄:時代的にはヴァン・ダイク・パークスとかと同じ頃ですね。
渡辺:タジ・マハールとオル・ダラっていうのはアメリカの黒人音楽っていう共通項がありますけど、タジ・マハールのレコードはCD店のどこに置かれてるのかなと思ったら、店によってはブルースにあったり、ロックにあったり、ソウル・ミュージックじゃないんだよね。アメリカだからワールド・ミュージックでもないし。一方オル・ダラは黒人シンガー・ソングライターで、テリー・キャリアーとかに近い扱いで。この人はカサンドラ・ウィルソンとかのバックにいて、息子がラッパーのNas(ナズ)。だからこのオル・ダラは象徴的な存在なんですよ、どのジャンルに分類されたらいいんだろう?という。片寄さんはミュージシャンだからわかると思うんですけど、音楽ってつながってるよね。
片寄:あんまり学術的に捉えられちゃうとイヤなんですけど、音楽は明らかに歴史であって、音楽やってる限りは自分の後ろに誰かがいて、誰かにつながっていくという感覚は強くありますね。
渡辺:今日、片寄さんにお願いしたのは、普通に音楽を愛してらっしゃって、もちろんロックやポップが基本にあるんだけど、マルコス・ヴァーリのCD再発に関わっていたかと思うと、シュギー・オーティスの話もできるし、グレン・グールドのドキュメント映画の公開時にトーク・ショーをやっていたりと幅が広い。そういう風にクラシックのピアニストであろうが、ブラジル音楽であろうが話をできるっていう人はあまりいないんです。
片寄:ジャンルで音楽を聴くという感覚はあまりなくて、心にくるものを探していったら、自然にこういう風になっていきました。
渡辺:今日は片寄さんに持ってきていただいたレコードと、僕が本の中で紹介して片寄さんが聴きたいレコードをかけようと思うんです。
片寄:聴いたことはないけど……というのを知ることができる。それがこのディスク・ガイドの一番の楽しみですね。
渡辺:ただこの本ではそんなに珍しいアルバムは取り上げてはいないんです。誰も聴いたことがない作品を取り上げても、話がどんどん閉じていくだけですから。僕は開いた方向に行きたかったので。じゃぁラドカ・トネフというノルウェー人の女性ジャズ・シンガーと、アメリカからスウェーデンに移住してきたスティーヴ・ドブロゴスというピアニストの作品『フェアリーテイルズ』の1曲目を聴いてもらいましょう。

◎ラドカ・トネフ、スティーヴ・ドブロゴス 「ザ・ムーン・イズ・ア・ハーシュ・ミストレス」(『フェアリーテイルズ』)

片寄:素敵ですね。ジミー・ウェッブの曲で。
渡辺:この曲はロバート・ハインラインの小説からタイトルをインスパイアされたもので、ピアニストのスティーヴ・ドブロゴスという人は他にも女性ジャズ・シンガーのバックで演奏する形の作品や、ビートルズとエルトン・ジョンのピアノのカヴァー集を出したりしています。でもこの人が今一番力を入れているのがクラシックの合唱曲の作曲で、世界的にも有名になっています。で、ジミー・ウェッブっていうと、こういうディスク・ガイドだと、5thディメンションのヒット曲を書いたとか「マッカーサー・パーク」を書いたっていうんだけど、これは僕個人の音楽観の本だから、ジミー・ウェッブを取り上げたときに、「プリファブ・ストラウトのバディー・マクアルーンに最も影響を与えた作曲家」という規定の仕方をしてるわけなんです。そう言っておいて次はプリファブ・ストラウトをかけるわけですけど(笑)。
片寄:言葉が適切かは分からないですけど、バディー・マクアルーンは非常に高級な曲を書くソングライターっていうイメージがあるんですよ。
渡辺:この人はロード・ムーヴィーみたいな曲を書くんですね。ジミー・ウェッブに「恋はフェニックス(バイ・ザ・タイム・アイ・ゲット・トゥ・フェニックス)」という恋人を置いて車で旅立つ男の曲があるんだけど、そこに出てくるアルバカーキーという地名を、プリファブ・ストラウトの「キング・オブ・ロックンロール」のリフの言葉遊びに使ったりしています。あれは「恋はフェニックス」へのオマージュだね。
片寄:僕は全然そういったところはノー・チェックでしたね。
渡辺:4日前にゴスペル・シンガーのアンドレ・クラウチという人が亡くなったでしょう。
片寄:CCM系でも有名ですよね。コンテンポラリー・ゴスペル系の方で。
渡辺:そのときに元プリファブ・ストラウトのウェンディー・スミスがツイッターで、神の慈悲についての歌「ナイチンゲール」のPVを紹介していたんです。じゃあ、ここでもう一曲ゴスペルに深い関わりを持つ曲、僕は名曲だと思うんですけど、プリファブ・ストラウトの『ヨルダン:ザ・カムバック』から「ワン・オブ・ザ・ブロークン」を聴いてみましょう。

『音楽の架け橋 快適音楽ディスク・ガイド』発刊記念トーク&サイン・イベント

◎プリファブ・ストラウト「ワン・オブ・ザ・ブロークン」(『ヨルダン:ザ・カムバック』)

片寄:これは名曲ですね。
渡辺:そう、名曲。なぜ「ワン・オブ・ザ・ブロークン」がアンドレ・クラウチとつながっているかというと、ゴスペルというのが、我々が神様に向かって「神様お慈悲を」と歌うシチュエイションのものに対して、この歌は神様が我々に向かって歌いかけてる。
片寄:神の目線で。
渡辺:「私(神)に向かって歌うのではなく、弱き隣人の一人に向かって歌いなさい、そうすればあなたの思いは私に届く」と。
片寄:いい歌詞ですね。
渡辺:こういう歌詞は神学校に行ってたというバディー・マクアルーンのバックボーンがないと書けない。こんな風に音楽はつながっていくんですね。
片寄:プリファブ・ストラウトは歌詞もいいですし。
渡辺:さて、先ほども出てきたスティーヴ・ドブロゴスですが、クラシックの合唱曲の作曲家で、日本の合唱団も何組か一緒にコンサートをやってます。このスティーヴ・ドブロゴスのアルバムはCDショップでクラシックの合唱曲のコーナーでは見つかるんですけど、ラドカ・トネフとやった作品はジャズのコーナーにある。僕の本では中島ノブユキの隣にあるんだけど、なんとなくわかってもらえるかなと思ってます。ではここで一曲。

◎Steve Dobrogosz「Agnus Dei」(『Mass and Chamber Music』)

片寄:素敵な曲ですね、胸にぐっとくる瞬間があって。亨さんが今日かけてくださってる曲とか聴いてると、僕個人の印象なんですけど、何か過ぎたものを懐かしんで胸がギュっとなる感覚って僕は子供の頃から好きで、そんなときに自分の感情の中で鳴っているサウンドトラックをイメージすると、亨さんが選ぶ音楽はそれにはまることがとても多いんです。なんとも言葉にし辛い感情なんだけど、どこか穏やかで、でも胸がギュッとして涙がこぼれそうになる瞬間。その感情を僕は音楽に求めているような気がしますね。
渡辺:この「Agnus Dei」というのはミサ曲なので、目的ははっきりした曲ですからね。さて、ここで片寄さんがコラムを書いてくださったジョン・マーティンを持ってきてくれました。
片寄:このジョン・マーティンというアーティストを初めはまったく知らなくて、日本では有名な方だったんですか?
渡辺:いや、あんまり有名じゃなくて、ブリティッシュ・フォーク系のシンガー・ソングライターです。
片寄:ペンタングルとかあの周辺で名前を聞いたことがあったかな。
渡辺:音楽の架け橋的に言うと、ニック・ドレイク、ペンタングルの人脈の人ですね。イギリスのジャズが入ったフォーク。
片寄:僕が知ったきっかけはベン・ワット。で、この原稿を書いた後に奇しくもベン・ワットと共演することになったんですが、彼が自分の音楽のルーツを紹介するアルバムを20枚くらい挙げてるサイトがあったんです。そこで一番に挙げられてたのが、このジョン・マーティン。元々ベン・ワットの音楽って独特のムードがあって、どこからこういう音楽ができあがったんだろう?というのが疑問で、彼だけが持っているメランコリックな感じやギターや声のトーン、そのルーツが自分には見えなかったんです。それがジョン・マーティンを調べて聴いた瞬間に、あぁ、ここから来てたんだというのがわかりました。

◎John Martyn「Head & Heart」(『Bless the Weather』

片寄:ベン・ワットが歌っているのが想像がつくような曲ですよね。調べていくと生前のニック・ドレイクと交流があって同じレーベルだったってこともあって、彼に捧げた曲があったりとか。70年代のライヴの映像で、アコースティック・ギターをアンプにつないで、テープ・エコーに通してループさせてリズムにして、さらにそこに音を重ねるループ・ミュージックをやってるんです。ちょっとびっくりしました。
渡辺:僕もジョン・マーティンはニック・ドレイクとのつながりの部分が好きですね。以前はニック・ドレイクなんて言っても誰にも見向きもされなかったけど、今は彼のチルドレンのような人がたくさん出てきたんですよ。例えばブラッド・メルドーというジャズ・ピアニストは、ニック・ドレイクの曲を何曲もカヴァーしていて。
片寄:オルタナティブ系の人たちが集まったりするカフェでも、ニック・ドレイクがよくかかってるんですよね。だから若い人たちの間に浸透してスタンダードになってるんだなと。ちょっと前にニック・ドレイクのお母さんモーリー・ドレイクの音源が出たんですけど、これが素晴らしくてニック・ドレイクのルーツがわかるきっかけになりました。
渡辺:モーリー・ドレイクのアルバムは、『音楽の架け橋』に取り上げてます。しかしこのエッセイを書いた後で片寄さんがベン・ワットと共演するとは思ってもなかったことで。
片寄:ベン・ワットもすごく日本公演には満足したみたいで、40箇所くらいツアーを回ったらしいんですけど、クアトロでやったライヴはベスト2に挙げてました。
渡辺:片寄さんがエッセイでジョン・マーティンのことを書いてくれたことも一つのつながりだね。
片寄:音楽はこうやってつながっていくものだな……と実感しました。
渡辺:では、ここで同じくエッセイを書いてくれたショコラさんが選んでくれたアルトゥール・ヴェロカイのアルバムをかけましょうか。ブラジルのアーティストで。
片寄:一時期、ヒップホップ畑でも注目されたアレンジャー、プロデューサーですね。
渡辺:これは1972年のアルバムでCDは割と手軽に手に入りますが。
片寄:オリジナルのアナログ盤はかなりの高値で、オリジナルはステレオなのに再発盤はモノラルなんですね。で、ブラジルで限定の形でアナログ盤とCDがオリジナル・マスターから作られているという話を聞いて、ネットでオーダーして手に入れました。トゥルー・ステレオの盤、それを聴いてみましょうか。

◎Arthur Verocai「Na Boca Do Sol」(『Arthur Verocai』)

片寄:胸がグッと掴まれる感じをわかっていただけましたでしょうか。狂気的なまでにアレンジの才能がある人なんですけど、当時商業的にはあまり認められていなかったみたいですね。今でも現役で、昨年アジムスのメンバーらとザ・ファーアウト・モンスター・オーケストラ名義でダフトパンクとかの流れに呼応したディスコ・アルバムを出して、そこでもストリングスとホーンのアレンジをしているんですけど、これがかなりマッドなストリングスでお薦めです。
渡辺:では、続いて聴いていただくのはジュビラント・サイクスという人の『ウェイト・フォー・ミー』。この人はオペラ界で活躍しているバリトン歌手です。プロデューサーはカサンドラ・ウィルソンも手がけてるクレイグ・ストリート。クラシックのアルバムじゃなくて、サン・ハウスとかレッド・ベリーのブルースやフォークから、ジョン・ハイアットやブルース・スプリングスティーンの曲まで歌ったアルバムです。そう滅多に聴く機会もないと思うので、この曲を聴いてもらいましょう。

『音楽の架け橋 快適音楽ディスク・ガイド』発刊記念トーク&サイン・イベント

◎ジュビラント・サイクス「神のみぞ知る(ゴッド・オンリー・ノウズ)」(『ウェイト・フォー・ミー』)

片寄:ビーチ・ボーイズのこの曲、今まで聴いたときには考えたこともなかったですけど、プリファブ・スプラウトに通じるものがありますね。非常に高度なメロディというか、これがブライアン・ウィルソンという少年の心のまま大人になってしまった人間から生まれたっていうのがすごい。僕、ブライアンに会ったことがあるんですよ。彼の初めてのソロ・ライヴのときワンダー・ミンツというグループのメンバーがバックをやっていて、ワンダー・ミンツはショコラのプロデュースを何曲かしてくれていて面識があったんです。来日したときブライアンの奥さんの誕生日パーティがホテルのラウンジであるからというので、誘われて行ったんです。で、パーティの途中、ブライアンが突然立ち上がったかと思うと柱の所に行って何か喋ってるんですよ。こっそり聞きに行ったら柱に向かってドゥーワップを歌ってました(笑)。
渡辺:それはすごいな。ではもう一曲だけ聴きましょうか、ニック・ドレイクをいろんな人たちがカヴァーしている中で、その先鞭をつけたアンディ・ベイというジャズ・シンガーがいるんですよ。彼の1998年に出したアルバムでニック・ドレイクの「リヴァー・マン」をカヴァーしています。声も特異な人なのでちょっと聴いてみましょう。

◎Andy Bey「River Man」(『Shades of Bey』)

渡辺:原曲もギターの弾き語りにストリングスが入ってますね。
片寄:かなり忠実なカヴァー。このストリングスの解釈いいですね、好きです。
渡辺:彼はジャズ・シンガーですけど、こうやって聴くと片寄さんの紹介してくれたジョン・マーティンと本当に近いというのがわかると思います。
片寄:そうですね、ブラック・ミュージシャンだけど、フォーキーなものがあったりしますね。
渡辺:で、ニック・ドレイクをニーナ・シモンもカヴァーしていて、昨今の音楽シーンではニック・ドレイクの音楽的な息子たちと同じように、ニーナ・シモンの音楽的な娘たちがたくさん活躍しています。ニーナ・シモンというのがまさにクラシック、ジャズ、フォーク、ロック、ポップを横断していて、今やっとニック・ドレイクもニーナ・シモンも注目されやすい状況になってきた。
片寄:ニーナ・シモンの70年代のライヴでものすごくエモーショナルに歌っているのを観て、フィオナ・アップルとかああいうタイプの女性シンガーの元祖でもあったんだって気がしました。
渡辺:手前味噌になるけど、「ローラ・ニーロもカサンドラ・ウィルソンもミシェル・ンデゲオチェロもすべて“ニーナの娘”たちだ」ってこの本に書いたんだけど、まったくそうなんだよね
片寄:そうなんですね。
渡辺:で、この本ではビートルズのアルバムとか一枚も取り上げてないんだけど、作った後から改めて思ったんだけど、ビートルズのアルバムで自分が一番影響を受けたのは何かと考えたときに、通称ホワイト・アルバムの『ザ・ビートルズ』なんですよ。あれにはたいていの音楽のパターンが入ってる。ミュージック・コンクレートみたいな「レヴォリューションNo.9」があって、「へルター・スケルター」は。
片寄:ヘヴィ・メタルだし。
渡辺:「ブラックバード」みたいな弾き語りの曲もあって。あれが一番大きいかな自分にとって。自分には『サージェント・ペパーズ』よりも『ハード・デイズ・ナイト』よりホワイト・アルバムが一番影響あるかな。
片寄:自分が好きなミュージシャンや、共感できるタイプのミュージシャンっていうのが、ジャンルに捕らわれないっていう傾向がありますね。そういう人とは仲良くなりやすいかな。
渡辺:あと、誤解されると心外なのは、何でも聴いてるからいいってわけじゃなくて、何でも聴きますよっていうのは一番無責任な言い方で、自分な中のちゃんとした線引きがあるんだよね。欧米のミュージシャンは当たり前だけど、ボブ・ディランもすごくクラシックを聴いてますから。
片寄:あの人がやってるラジオの番組聴くと幅の広さにびっくりしますよね、相当いろんなものを聴いているのがわかる。
渡辺:当たり前なんだよね。ボブ・ディランはセシル・テイラーとセッションやったことがあるんだから。だからそういう当たり前の状況がもっとあればいいなという個人的な思いがあります。で、こういう本を書きましたということで、終わりたいと思います。片寄さん、今日はありがとうございました。

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音楽の架け橋 快適音楽ディスク・ガイド

A5変型判/176ページ/本体 2,100+税

これからは、いや、全ての音楽に等距離で接することが出来るこの21世紀では既に、音楽をジャンルではなく、「空気」「感触」「心地よさ」で聴くのが気持ちいい。むしろジャンルは飛び越えて当たり前。でも、狭いジャンルの壁を取り払って、ジャズもポップスもボサノヴァもロックもクラシックもテクノもワールド・ミュージックも流れる音楽の大海原に漕ぎ出すとなると、そこにはキュレーター、ソムリエのような存在が必要です。この「音楽の架け橋」では、GONTITIがDJを務めるNHK-FMの番組「世界の快適音楽セレクション」の構成と選曲を担当、出演もする音楽評論家の渡辺亨さんが、美味しいワインを選ぶように美味しい音楽をセレクトしました。
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