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『ネット時代のクリエイターやミュージシャンが得する権利や著作権の本』発売記念として、4月30日ニコニコ超会議2017のJNCAブースにて、杉本善徳 氏☓仁平淳宏 氏のトークライブが行われた。

 

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音楽に興味のある方も、プロになりたい方も是非読んでみる価値はあると思います

 

ーー 『ネット時代のクリエイターやミュージシャンが得する権利や著作権の本』発売記念トークライブにご来場いただきありがとうございます。まず、今日の登壇のお2人を紹介させていただきます。この本でもいろいろと教えていただきました講師役、仁平淳宏さんです

仁平:JNCA(日本ネットクリエイター協会)の理事をやらせてもらってます仁平です。宜しくお願いいたします。

ーー そしてこの本の中で、質問をする生徒の役をやってもらいました杉本善徳さんです。ソロアーティストとしての活動と並行して、アーティスト・プロデュースやアニソンやゲームソングの作詞/作曲、ゲーム自体の制作や、マンガ大賞の選考委員など、マルチな活動をされています。で、今回著作権の事とかはわからないことばかりだということで、杉本さんにも「楽曲を勝手に使っていいのか」とか「楽曲をカバーする時はどういう手続きが必要なのか」といった素朴な疑問を編集と一緒に100個ぐらい出してもらいました。

杉本:最初は僕が本文を書かなきゃいけないのか?って勘違いしてお断りしたんですけど、よく聞くと色んな角度から著作権に対しての疑問を出して欲しいってことだったので、これだったら僕も勉強させてもらえるなということで参加させてもらいました。

仁平:僕もこの話をいただいた時はあまり主旨がわかってなくて(笑)。で、著作権のプロ中のプロである秀間さんという方との共著だと聞いたので、あ、きちんとした著作権の話は秀間さんにお願いして、僕はボカロ曲を2,000曲くらいをお世話させていただいた経緯もあったので、クリエイター目線からのお話をすればいいんだなということで資料を作成し、今までボカロPさんたちに説明していた著作権講習会と同じ感じでお話しさせてもらいました。

トークライヴ2

ーー この本の中にはJNCAの資料を、ほぼそのまま掲載させてもらっていたりもします。では杉本さん、今回の取材で学んだ事柄の中でインパクトのあったこと等を教えていただけますか。

杉本:自分的に一番インパクトのあったことは、著作隣接権に関してのことです。他のアーティストに自分の作曲・編曲を提供して制作した際に、自分がギターを弾いたり打ち込みの音を入れたりしたら著作隣接権が発生して、その音自体にも権利があるという話に驚きました。知らなかった事だし、それで一回もお金を貰った事がなかったから一番インパクトがありました。

仁平:今のお話は、放送二次使用料などの原盤二次使用料の実演家取り分の話ですね。これはプロのアーティストの方が事務所と契約をされる時、その権利をどうするのかは契約書に書かれています。例えばそういった権利は総て事務所に与えるので、アーティストとしては放棄されているという場合もあります。ロック系のアーティストとかの場合プロデューサーや事務所の社長さんに男惚れして、「あんたと一緒にやって行くんだ、天下を掴もうぜ」とか(笑)恐らく細かい所まで契約書を読まないこともあって。

杉本:まさに最初はそうでしたね。

仁平:実際、原盤二次使用料というのはちゃんと著作権法に明記されていて、報酬を請求する権利があるんです。それを放棄するかしないか、その権利を事務所にあげちゃうかどうかっていう所ですね。

杉本:放棄してるかどうかさえ、気付いてなかったと思うんです。

ーー 例えばアニソンの楽曲制作依頼が来て、ギターも弾いた場合、それが印税的にずっと入って来るということですか?

仁平:それは二次使用料に関する実演家印税というもので、これは著作権とは別で、お金の流れとかも全然別なんですけど、そういう複雑なものがあります。これは商用CDを作っているボカロPさんや、ニコニコ動画の中で活躍してる歌い手さんにもある権利なんですけど、皆さんご存知ないと思いますし、どうやって取っていいか分からない、なので皆さんに代わってJNCAが徴収代行をしますよっていうのを、この本や、このブース内のポスターとかでお知らせしています。

杉本:僕の周りの作家の人たちが、ずいぶん羽振りがよくなってる気がするのは、これを貰っているからだったのか。

仁平:お話にあった原盤使用料に関しては、ボカロPさんや歌い手さんの中で貰っている人はほんのほんのほんの一部です。まだまだJNCAの影響力が足りなくて、理解していただけてないんで。

杉本:それが一番驚いた事ですね。知ってたような気でいたんですけど、なんとなく実演家印税とかも入ってるもんだと思い込んでた。それで本の取材最中に、JNCAの資料を送っていただいて。

仁平:ただ、今後解決しなければいけない問題があって、杉本さんがギター演奏を提供しているようなCDはメジャー流通なので、レーベル・コピーとかがきちんと実演家団体に行っていて、そこに杉本善徳という名前が書いてあると思うんですよ。だからデータベースで引っかかるんですけど、例えばボカロPさんがメジャーに曲を提供したり、もしくは同人でCDを作ったりした場合、レーベル・コピー情報というのが実演家団体に行かない事の方が多いんです。

杉本:その辺しっかり本に書いてありますので読んでいただけると嬉しいですね。

仁平:トップアーティストの方がもっと「ボカロPさんたちにも権利はあるんですよ、請求できる体制作りをもっと僕たちとやりましょうよ」っていう話をしていけば……と。もちろんボカロPだけじゃなくて作詞、作曲、編曲、ギターを弾いてる、歌を唄ってる、打ち込みをやっているという方皆さんの何かしらのお手伝いを、僕らはできると思うんです。

ーー では杉本さん、インパクトのあったその2を。

杉本:仁平さんのお話を伺ってる中で、ニコニコ動画のコンテンツツリーのシステムの話を伺ったこと。ニコニコ動画は知っていて、そこに色んなものが流れているという漠然とした解釈しかしてなかったんです。楽曲の制作をされた方や動画を作った方とかとそれを共有していくんだという、ツリーのシステムの完成度の高さをニコニコ動画のユーザーの方が理解して使っているという事実が結構衝撃でしたね。

仁平:(場内に)皆さんはコンテンツツリーって聞いたことありますか? ニコニコ動画のヘヴィ・ユーザーの方はわりと分かっていると思うんですけど、これは著作権とも違う概念なんです。例えばプロデューサーのカニミソPさんの楽曲で「ダンシングサムライ」って曲があって、その前で踊ってみたという人が出てきて、踊ってみた動画をアップします、そうするとその「踊ってみた動画」はカニミソPさんの動画があって初めて生まれたものだよということで、「カニミソPさんの動画」が親、「踊ってみた動画」は子供という関係性があるということで、子供の動画を作った人は「私の動画の親はこれなんです」と親を指定できる……というのがコンテンツツリーの考え方です。それは別に親が一つじゃなくてもいいんです。例えばカニミソPさんの「ダンシングサムライ」の音、絵は別の方の描いた絵を流用しましたという場合には、その子供の親はカニミソPさんの動画と絵を描いた方の両方となります。親を設定して何が起きるかというと、子供の方がニコニコ動画のクリエイター奨励プログラムを設定した場合、自分の動画の再生数に応じておカネをもらえるんですが、そのおカネを子供が受け取ると親の所にもおカネが来るんです。「あなたの作った動画を元にした動画がこれだけの再生数があったので、あなたの所にもおカネを払います」ということで子供が儲かると親も儲かるということで……これはYouTubeにはない仕組みなので、このへんドワンゴはスゴいなって思いました。

トークライヴ3

ーー ですよね。では次に、この本の取材では聞けなかったことを仁平さんに聞いてみよう!のコーナー(笑)。

杉本:そうですね、取材の中で「JASRAC(日本音楽著作権協会)と信託契約された方がいいですよ」と伺ったので、JASRACにも問い合わせて資料をいただいたんです。でも結構読みたくない分厚さの資料だったので(笑)、これは結構大変だと。同時期に僕の周りの作家たちもJASRACと信託契約した人がいたので、いろいろ聞いてみると「買い取りの楽曲」(作った曲をクライアントに一定の金額で買い取ってもらう)の仕事は、JASRACと信託契約をすると受けられなくなるよって言われたんです。

仁平:あ〜それは結構難しい話ですね、昨日まさにJASRACの方に来ていただいたので、その時質問すればよかったですね。そこはたしかに杉本さんがJASRACメンバーになると、作った楽曲の著作権はオートマチックに杉本善徳の名前で登録されるんですよ。だから買い取りってなった時にどうなるかは……調べときます。

杉本:今のところ「できない」って話を聞いたのが最新情報なので、信託契約するのをためらってるんですよ。

仁平:多分、財産権と著作権の所で分けて考えられそうだから、買い取りで入って来る著作印税は全部JASRACに来ますっていう話ですよね。そこは契約とかでなんとかなるんじゃないですか。

杉本:細かく聞きたいですね。

ーー 実際にクリエイターの方やプロのミュージシャンの方でも、知らないことはいっぱいあるようですね。

杉本:皆さん、むしろ知らない事の方が多いんじゃないかと思います。

ーー 本当に勉強になりました、ありがとうございます

仁平:僕はボカロPさんたちとお話をしていて、そこから上がってくる疑問に対して色んな方に教えていただいてという、コンピュータのシステム的にいうとオブジェクト思考なんですよ。でも今まで『ネット時代のクリエイターやミュージシャンが得する権利や著作権の本』みたいなことを書いてある本はなかったんです。例えば楽曲をカラオケに入れてお金を儲けるにはどうしたらいいですか?って事を具体的に書かれてる本は少なかったと思います。これまでは著作権法に於ける公衆送信権があって、映像権があって、カラオケはこれとこれが当てはまるはずだから……と考えるしかなかったんです。著作権法の本にはカラオケなんて単語は出てきませんから。だからこの本の中では著作権のプロ中のプロである秀間さんの使われる単語と、僕たちが日常使っている単語の両方で説明がされているんですね。

この後、色々な創作物を例に挙げて著作権に関する見解を仁平さんに伺う流れになった。

ーー ではそろそろシメの時間なのですが、この本作りを通じて感じたことや、皆さんに伝わればいいなと思われていることがあれば、ぜひヒトコトお願いします。

仁平:参加させてもらった僕が言うのも何なんですが、とてもいい本だと思います。昨日、今日と専門家の方をお招きしてこのブースで話させていただいたような内容が載っているのは、世の中でこの本オンリーかなというぐらいだと思ってますので、音楽に興味のある方も、プロになりたい方も是非読んでみる価値はあると思います。

ーー 続いて杉本さん。

杉本:本の前書きにも書いたんですけど、我々のような長く続けてきたミュージシャンでも知らない事がたくさんあって、作ったものに対してどういう権利が発生するのかとか、ユーザーの方が遣ってくださったお金がどう流れていくのかというのは興味を持っても損をする話じゃないので、これからクリエイターをやっていこうという人はもちろん、クリエイターやミュージシャンとしてキャリアが長くても知識として知らない人にとっては入門書として本当に読みやすい本だと思うので、是非読んでいただきたいと思います。僕の感覚としては時代の変化で、よりこういった本が必要になったのかなと。

ーー その変化に応じて、今後もアップデートしていければと思っています。で、うれしい事に2017年の夏くらいに、今度はボカロPの方々にスポットを当てた本の刊行も予定しておりますので、こちらも楽しみにしてください。本日はありがとうございました。

この後質問コーナーが行われた。

『ネット時代のクリエイターやミュージシャンが得する権利や著作権の本』 のご案内

  • ネット時代のクリエイターやミュージシャンが得する権利や著作権の本
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  • ネット時代のクリエイターやミュージシャンが得する権利や著作権の本

    A5判 / 176ページ / ¥ 1,870

    惜しまれつつ解散したロックバンドWaiveのギタリスト兼メインコンポーザーでありながら、現在はソロ活動中で、更にはアニソン制作やアーティストプロデュース、ゲーム制作からコミケ出展などマルチな才能を発揮し続けている杉本善徳が、著作権や権利に関する質問を業界の重鎮にぶつけまくる!

    Webを主戦場とするミュージシャン、ボカロP、歌い手、YouTuber、セルフマネジメント・アーティストや個人事務所スタッフなどに向けた、お硬い権利関係の話を超柔らかく学べる本。DAW環境の発達や浸透、YouTubeやニコニコ動画、各種SNSなどの多様化によって、自作の音源や映像を公開する手段が飛躍的に増え、二次創作物も多様化した現在、クリエイターが直面する様々な著作権上のハードルや手続き方法、権利に対する考え方などがアーティスト目線で紐解かれる!

    【CONTENTS】
    CHAPTER 01
    著作権について知っておこう
     
    CHAPTER 02
    ネットクリエイターなら知っているけど一般にはあんまり知られていない事

    02-01 著作権使用料はどんな割合で振り分けられる?
    02-02 ネットクリエイターが知っておくべき権利
    02-03 ニコニコ動画の業界慣習
    02-04 新しいクリエイターと歌い手の形
    02-05 ニコニコ動画の再生数に応じて印税をもらう
    02-06 YouTubeで印税をもらう
    02-07 著作物の無断使用に対して
    02-08 ニコ生でカバーを唄う時に
    02-09 演奏使用料ももらわなくちゃ
     
    YOMOYAMA ZONE 01
    クリエイターが顔出しをしない理由

    YOMOYAMA ZONE 02
    甘い誘いに乗ってはいけない(当然)
     
    CHAPTER 03
    活動キャリアの長いアーティストや再生回数の多いクリエイターなら

    03-01 個人でJASRACと信託契約を結びたい
    03-02 楽曲の権利を守るために、選ぶ道は幾つかある
    03-03 アレンジャーも1/12の印税をもらえるってさ
    03-04 タイトルや決めゼリフに著作権は…ない?
    03-05 原作、漫画、プログラムの権利
    03-06 見たことあるよねⒸ ⓟ ⓇそしてTM
    03-07 ライブDVDに洋楽を収録すると高くつく
    03-08 開演前BGMや店頭BGMだって使用料がいります
    03-09 営利目的だとフリーライブでも使用料がいります
    03-10 楽譜の著作権とアーティストのパブリシティ権利
    03-11 譜面はコピーしちゃってもいいの?
    03-12 ブログやツイッターに歌詞をアップしたら?
     
    YOMOYAMA ZONE 03
    クラウドファンディングで作ったCDは誰のもの?
     
    CHAPTER 04
    正しく権利を守り正しく対価を得るために

    04-01 二次的著作物と二次創作物
    04-02 踊ってみた振り付けの著作権は保護される?
    04-03 原盤を提供するときに注意すべきこと
    04-04 原盤使用料の業界標準
    04-05 JNCAに入会して放送使用料とかをもらおう
    04-06 契約書を交わすときに注意すべきこと

    著作権契約書[FCA・MPAフォーム]
    アーティスト活動に関する専属契約書の例
    レコーディング契約書の例
     
    YOMOYAMA ZONE 04
    なるべく長く! 著作権保護期間

    YOMOYAMA ZONE 05
    JASRACへ気軽に電話してみる

    YOMOYAMA ZONE 06
    確定申告セミナーもやってます

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