クジヒロコ「C階段で行こう!」発売記念トークライブ&空想ラヂオ・パブリック・リスニング&サイン会を、7月6日(木)に大阪・ロフトプラスワンウエストで、9日(土)には東京・下北沢440にて開催。司会は本書のプロデューサーTが担当、ここでは東京編のレポートをお届けする。

何かこう、皆さんが読んで楽しいようなものが書けたらいいよなぁと思いまして

クジヒロコ:こんにちは、じゃ、みなさんお手元のグラスを持って、“拳を天に突き上げろ! 乾杯〜”(場内:カンパーイ!の声)

── 関係者の方も飲んでいただいて大丈夫ですから(笑)。

クジ:飲んでくださいね。440はいつもライヴでお世話になってます、私としてはホームだと思ってますので。

 

 

── 今回のイベントですが、なんと10分でチケット完売(場内大拍手)。で、さて「C階段で行こう!」無事に仕上がりました。先日スピッツの大阪城ホール2デイズの翌日に、なんばのロフトプラスワンウエストでトーク・イベントを行い、こちらも大盛況でしたが……こうやって本を出版したというのは、生まれて初めての経験だったと思うんですが、最初にこの話が来たときはどう思われました?

クジ:スピッツが30周年なので、まぁそういう感じだよね……と思いつつも、せっかく書かせていただけるのであれば、何か面白いことができたらなぁ、と思いまして。あと、一人で書いちゃうと責任が全部自分に来ちゃうので、対談とか人を巻き込んで、もし売れなかったらその人のせいにしよう……って魂胆で。

── 最初打ち合わせでお話ししたときに、完全に「クジさんの本」だと思ってなかったですよね

クジ:……うん、まぁ。

──「スピッツの本のお手伝いをするくらいかしら」的な感じでいらしたんですよね。

クジ:いや、でも逆に気楽じゃないですか、その方が。

── なるほどそうですか。だから「クジさんの本ですよ」って念を押した瞬間に、うん!?ってなった感じなんですね。

クジ:だって私の生い立ちとか書かれても面白くないだろうし。何かこう、皆さんが読んで楽しいようなものが書けたらいいよなぁと思いまして。はい。

── 今回のこの本はクジさんの生きてきた道を辿って、自伝を。

クジ:自伝……“本を出すんだ? なんだよ、自伝かよ”って、バンド仲間からすごい冷やかされました。“自伝? もう自伝やっちゃうの?”って言うから、“自伝じゃないよ”って言っておきましたよ。

── 編集部的には結構シンプルな自伝を作ろうと思っていたんですが、どんどんクジさんの方からアイデアが出てきて。

クジ:ホントに、自伝だけはヤメてって。で、過去何年間か書いてきていたスピッツの会員限定SNS「トンガリヴィレッジ」からの抜粋や書き下ろしを加えつつ。

── 数えてみたら、クジさんは600本くらいスピッツのライヴで演奏されて、ほぼ全部日記を書いてらっしゃる。

クジ:ちょっと最近さぼってたりしてまして、この間の大阪のイベントでも“最近滞ってますね”って言われました(笑)。頑張ります。

── 19年書いてるわけですから。

クジ:今の「トンガリヴィレッジ」の前のものは、残念ながらデータが残ってなくて。

── でもクジさんは、僕が今までお付き合いしたどのライターさんよりも締め切りは守るし、締め切り前に原稿が届く方でした。

クジ:マモルさんです(笑:場内笑い声&拍手)。[注・スピッツの曲「まもるさん」]

── 他にはミスチルのサポート・キーボードSUNNYさんとの鍵盤談義や、スピッツのアルバム『隼』プロデューサーである石田ショーキチさんとのレコーディング・メモリー企画とかも、全部クジさんのアイデアでした。

クジ:やりたかったし、『隼』は色々突っ込んで聞きたいこともたくさんあったので。

── そう、今改めて読む『隼』の<濃いライナーノーツ>みたいな対談になってますよね。ですから、読んでからまた聴いていただけると。石田さんが根城にされてる町田のノイズというジャズ喫茶で対談したんですけど、その後にはしっかり石田さんとクジさんたちの飲み会がセッティングされてて。

クジ:「集まれ! 町田に」って。

── あと、表紙のイラストとかも全部クジさんが描かれて……あっそうだ、表紙のイラストの由来とかを。

クジ:それ本に書いてあるからなぁ(笑)。題名が決まると視野が開けるとこがあるんですけど、表紙の絵を考えてるときに階段を上がるイメージで描き始めたんですね。そこで、“そうか、階段って、音階というか鍵盤の白と黒のイメージで塗ったらいいか”って思いついて。それとキーボーディストにとって一番簡単なのはCのキーなので、「Cの階段」ってどうかなと。ジャズの名曲で「A列車で行こう」っていうのがあるので。

── 僕、間違えて何回か“「C列車で行こう」ってタイトル、いいですねえ〜”って言ってましたもんね。

クジ:「C階段〜」です。

── 表紙のイラストにはスピッツのメンバーも描かれて(笑)見守ってますし。

クジ:あ、メンバーのコメントもありがたかったです。オビに使うのがすごいシリアスなアーティスト写真なのに、ふざけたことを書かせていいものか?って言ったら“いや、そっちの方が面白いし、全然いいじゃん。むしろシリアスだからこそふざけたことを書いた方がいいよ”って田村君が言ってくれて。
でもね、わかりました。今回わかりました。本を出すってことがどれだけ大変か。

── Twitterで、クジさんは「新幹線の中で初めてPCを開いて原稿チェックをしました」って書いてらっしゃいます。

クジ:自分、かっこいい仕事してるなぁって(笑)。

── もう4回ぐらいチェックしてもらいました、ゲラも含めて。

クジ:でも、いくらやっても、人間だもの……みたいな間違いはあるんですよね。

── 出てきますね、確かに。でもこれだけのヴォリュームのある本なので、なかなか校正していただくのも大変だったと思います、ありがとうございました。で、さっき話が出ましたスピッツですけど、マサムネくんと、クジさんのバンド仲間であるタブレット純さんと……。

クジ:タブレット純は本来ムード歌謡の歌手なんですけど、芸人としても才能があって。マサムネもすごいタブレット純のことを好きなので、タブレット純をエサに(笑)“こういうのをやらない?”ってマサムネに言ったら、“やるやる”って言ってくれて。

── そもそもこの「空想ラヂオ」という企画も、クジさんから“深夜放送みたいなものをやりたい”って話があって。ジングルも作ります、CMも作りたいっておっしゃるんです。“本なのにジングルとかCMは……これ誰も音源聴けないんですよ”って言っても。“いいんです、なんちゃってでも”って。

クジ:だけど、ちゃんと本物のラジオ・ブースを借りて収録させていただいたんで、臨場感もバッチリだし。深夜放送の番組をやりたいっていう私の夢もちょっと叶いました。小学校のとき“DJになりたい”って書いてましたから。

── で、せっかくラジオ・ブースを借りて録音をしたので。

クジ:なんと今日はそれを。

── パブリック・リスニングということで、これは1時間くらいあるので。

クジ:長いですけど楽しんでいただけたら。

 

ここで約1時間の「空想ラヂオ」のパブリック・リスニングが行われた。終了後再びクジさんとTが登場、トークライブ後半へ。

 


クジ
:しかし「空想ラヂオ」、聴けば聴くほど面白いですね。

── 僕も編集を含めてもう8回くらい聴いてるんですけど、やっぱり笑っちゃいますよね、素晴らしい……というわけで、それでは後半に入りたいと思います。皆様からいただいた質問に答えていく形でガンガンまいりますね。ではまず一問目。「多様な音楽活動をされてるクジさんですが、スピッツのときと他の音楽のときとで何か違うことはありますか?」

クジ:……それぞれのバンド全部違うので、そりゃあ違います。

── 例えばデカダン・スケバンドとスピッツでは?

クジ:デカダン・スケバンドは私がバンマスなので、とりあえずヴォーカルの田渕(タブレット純の旧名)をシバき倒すという役割でやってます。まさかスピッツではマサムネをシバき倒せないので。

── あの、これは本にも出てくるんですけど、杏子さんがヴォーカルのアンダーノースクラブバンドでの役回りは?

クジ:あれはバンマスが私の義理の弟で、曲は元COILの佐藤洋介が書いて、アレンジして楽しくやってます。

── 要はバンドによって、曲を作る人もバンマスも違うので、それによってということですね。

クジ:別にバンマスが一番偉いわけじゃないんですけど、バンドによって聴きにきてくれてるお客さんもちょっとずつ違ったりするので、使うキーボードもバンドによって違います。

── あ、終わってから飲みたいライヴの場合は、クジさんあんまり機材をたくさん持っていかないんですよね。

クジ:いや、持って行かなきゃいけないときは持って行きますよ。

── そうですか。では次、「健康のために心がけていることはなんですか?」

クジ:納豆を食べています。

──「スピッツのメンバーとツアーや活動をしていて、一番困ると思うことはなんですか?」

クジ:何もないです。

── 着替えとかどうしてるんですか? 楽屋は一緒ですよね。

クジ:一緒ですよ、私は見せてもしょうがないので、隠れて着替えますけど。

── メンバーは普通に、ずるっと。

クジ:スタッフもいるし。仲いいスタッフの中では全然普通に着替えてます。

── 体育会の部室みたいな。

クジ:そうです、何もエロいこととかないです(笑)。

── 何言ってるんですか(笑)。そういえば昔、B-PASS(雑誌バックステージ・パス)でツアー・レポートをしたときに、タバコを吸ってるチームと、禁煙チームがいて。

クジ:今はもういないですけど、昔は禁煙組と喫煙組に楽屋が分かれてました。

── では続いて。「ご褒美の食べ物はなんですか?」

クジ:鰻です。マサムネはツアーに入ったらあんまり食べ過ぎたりしないようにしてるんで、移動日のお昼、みんなと一緒にご飯を食べるときに、“鰻かなぁ〜”って言って鰻を食べるんです。

── あ、全国で、このエリアのこれが好きとかってあります?

クジ:鰻? 鰻はやっぱり東海地方なんじゃないですかね。ただ石田ショーキチに教わった店は行列もすごくなって行けなくなっちゃったので、新しい所に行かざるをえないというか。

── そ、そうなんですね……。そういえば取材のときに出てた話で、名古屋の方で蕎麦と饂飩とラーメンが一緒になったもの、というのがありましたよね?

クジ:店の名前とかは覚えてないけど、そこで<う・そ・ら>って頼むと最上級みたいで、同じ出汁の中に饂飩と蕎麦とラーメンが入ってるっていう。で、それはやっぱりかなりの求道者じゃないと食べられないらしいんです。良さがわからないというか。ま、名古屋は時間がなくて外に食べに行けないかな。

── そういえば大阪のトークライヴの前に、クジさんも大好きな旧ヤム邸のカレーを食べたんですけど……これが素晴らしく美味しくて。翌日も行っちゃったんですよ、別の店舗の方に(笑)。で、そこには4種類のカレーの合掛けがあって。

クジ:でもね、スパイスがスゴくて……以前ヤム邸のカレーをライブ前のお昼に食べて、お腹があったかいなぁって思ってたんですけど、本番が始まって30分くらいのときスパイスがぶわ〜〜っと戻ってきて、ちょっとイリーガルじゃないハイになって。

── かなりヤバイい感じ?

クジ:美味しいんですけど。本番前に食べるのはヤバイいかもって思いました。

── では次。「デカダン・スケバンド結成の秘話を」

クジ:秘話……タブレット純は昔から仲がよくて。それでライヴを観に行ったら、ステキなおじさまたちがバックバンドをやってたんですね。で、もしかしてこれを女バンドでやったら面白いんじゃないかなって思って。ドラムに麝香猫のgrace、ギターに西薗まりとか、それぞれみんな色んなところでやってる女性を集めて。それで色んな楽曲をハードにやりましょうということで、「メタルアレンジ“待つわ”」とか、やってきたんですね。あ、今度の7月18日のライヴはGS(グループサウンズ)系でやろうかなと。

── ですよね。赤坂グラフィティでの対バンライヴ。お時間がありましたら是非。では続きまして。「ライヴ中に観客をよく見ているようですが、どの辺まで見えてますか?」

クジ:老眼なんで奥まで見えます。お顔までは分からないにしても、何をされてるかぐらいは分かります。結構見えますんで、油断しないでね。いつもマサムネも言ってますけど、よく見えてます。

── 続いて。「ツアーでメンバーと一緒に行動しているとき、荷造りが上手、または早い方はどなたですか?」

クジ:荷造りの早さとかは分かりませんけど、集合に遅刻する人はいないです。

── おおおー。では次。「一日何時間くらい練習しますか?」

クジ:バンドの練習か、私個人の練習かによりますけど、ツアー前にバンドはリハーサルを20日間くらいやります。個人ではまず、どの楽器で弾くかを考えながら練習してますね。

──「全国をツアーで廻っていて、外せない酒のツマミは何県の何ですか?」

クジ:いっぱいあるんですが、福井のへしことか……高知の鰹ですね。東京で食べる鰹とは、全然違うんで。

──「タブレット純さんに異性を感じるときはありますか?」

クジ:ないです。あの人は中性的な人なんで異性は感じませんけど、酔っぱらうとエロモードになって“おっぱい触っていいですか?”っていつも言うので。デカダン・スケバンドのメンバーにはおっぱい大きい子もいるから“おらおらぁ、触れ〜”って。母ごころですw。

──「もし一生で一種類しかお酒を飲んではいけないと言われたら、何を選びますか?」

クジ:(即答)日本酒です。東北生まれなんで、やっぱり日本酒が好きです。

── 日本酒ベスト3っていったら、どんな銘柄が出てきます?

クジ:地元の岩手のお酒が好きだったりしますけど。

── はい、ではそんな所でそろそろ終了の時間がやってました。今日は本当に暑い中をご来場いただきましてありがとうございました。

クジ:ありがとうございました。

この後、サイン会が行われた。

東京編撮影:原田隆司


◎大阪編
大阪編には、ABC朝日放送の北村アナもサプライズ参加!
大阪編撮影:大歳良子

写真左より北村アナ

写真左より本書プロデューサーT、クジヒロコ

クジヒロコ「C階段で行こう!」 のご案内

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  • C階段で行こう!

    四六判 / 360ページ / ¥ 2,241

    1998年から現在まで19年、600本以上にわたりスピッツのサポート・キーボーディストをつとめているクージーことクジヒロコ。
    彼女が鍵盤弾きとして体験してきた数々の場面、スピッツのレコーディングやライブ環境の変化等を語りつつ、スピッツの有料会員限定SNS「トンガリヴィレッジ」での公開分に、本書用の書き下ろし編も加えた60編におよぶツアー日記や、草野マサムネ☓タブレット純×クジヒロコによる空想ラヂオ企画、ミスチルのサポート・キーボーディストSUNNYとの鍵盤談義、スピッツのアルバム『隼』プロデューサーである石田ショーキチとのレコーディング・メモリーなど、超濃密なフル・ボリュームでお届けします。

    【CONTENTS】
    LESSON 01 クジヒロコ・ストーリー前編
    LESSON 02 クジヒロコ・ストーリー後編
    LESSON 03 MEMORIAL PICTURES 1/2
    LESSON 04 スピッツ道中日記 15/60
    LESSON 05 石田ショーキチと『ハヤブサ』を語る
    LESSON 06 クジヒロコ、機材を語る
    LESSON 07 スピッツ道中日記 30/60
    LESSON 08 クジヒロコ、チーム ス を語る
    LESSON 09 MEMORIAL PICTURES 2/2
    LESSON 10 SUNNYと鍵盤サポートを語る
    LESSON 11 スピッツ道中日記 45/60
    LESSON 12 空想ラヂオ「タブレット純の夜をまきもどせ!」 ゲスト:草野マサムネ(スピッツ)
    LESSON 13 スピッツ道中日記 60/60
    LESSON 14 クージー・クワトロさすらい日記
    OUTRO
    BIOGRAPHY
    CREDITS

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