「BURRN! JAPAN Vol.13」発刊記念のイベント<BURRN! JAPAN Vol.13 制作秘話>が2月11日に阿佐ヶ谷ロフトAにて開催された。登壇者は
広瀬和生(BURRN!編集長)、制作スタッフの土屋京輔さん。ゲストに表紙巻頭を飾ったSYUさん(GALNERYUS)を迎えてのトークとなった。

『VORVADOS』の意味は<燃ゆるもの>自分の心を一番表現してくれる言葉です

第一部

まずは浜田麻里、44MAGNUM、GALNERYUS関連の取材話から

 

広瀬和生(BURRN!編集長 以下広瀬)):今日は、いつもこのイベントをきちんと仕切ってくれる増田勇一さんがお休みで、増田さんは今日どこへ行ってるんですか?

土屋京輔(以下土屋):今日は渋谷CYCLONSURVIVEの『HUMAN MISERY』レコ発イベントがあって。増田さんは最初210日って聞いてたらしくて。

広瀬:いや、だから、11日は大丈夫だからって聞いたから今日にしたんですけど、増田さんのスケジュールありきで(笑)。

土屋:三人で、この日はライヴもないし──って決めたんですよね。

広瀬:僕は、“CyntiaのSAKIのソロ・ライヴがあるけど、行けないなぁ…”と思ってたんですけど──あ、時間早かったから掛け持ちできたか。

土屋:できましたね。

広瀬:でも、それに気がついたのがついさっきで(笑)。

土屋:ALDIOUSのトッキーがサプライズ・ゲストで出たらしいですよ。

広瀬:すると、このあと何か──。

土屋:止めなさいって(笑)。

広瀬:いつもそこは増田さんが止めてくれるんですけど(笑)、で今回のBURRN! JAPAN Vol.13、増田さんもたくさん担当していただいて、僕が仕切るのもどうかと思うんですが、一応編集長なので(笑)。

土屋:そうです、編集長ですよ。広瀬編集長です(場内拍手)。ライターの土屋京輔です(場内拍手)。

広瀬:PURE ROCK JAPANの土屋さんです(場内拍手)。で、BURRN! JAPAN Vol.13ですがSYU君の表紙で、インタビューは僕がやってますから。一応、僕が今回ある程度喋っても大丈夫ですよね。当然、あとでSYU君も出てくるんですけど、その前に他のページの取材裏話的なものがあれば。土屋さんは前回に引き続き浜田麻里さんを。

土屋:そうですね、前回表紙巻頭で今回は巻末特集。

広瀬:前回の写真撮影のときは麻里さんから“まだわからないの?”って突っ込まれたエピソードがありましたけど今回はどうでした?

土屋:写真撮影はなくてインタビューだけだったんですけど、とにかく笑顔で朗らかで。

広瀬:土屋さん気に入られてるんですね。羨ましい(笑)。

土屋:嫌われてはないと思います(笑)。

広瀬:テレてる(笑)

土屋:多分ここ何年かで、浜田麻里さんのインタビューを日本で、というか世界で一番回数をやってるのは僕だと思うんですよ。

広瀬:そうですね、日本で一番ってことは世界で一番ですね。

土屋:今回読んでくださった方は驚かれたと思うんですけど、ノドに不調を抱えてツアーを廻っていたことが発覚したんですね。で、ライヴを観たとき、ちょっと調子が悪いかな──とファンの皆さんも思ったらしいんですが、それでももの凄い歌を聞かせてくれていたので、ま、気のせいかな──ぐらいの感じで思っていて。でも、実はそんなことではなく、そのままツアーに突入して終了後治療に専念している。

広瀬:今回のツアーは新しいメンバーで、麻里さんは概ね満足?

土屋:とても満足してますね、ただ──もっとできる可能性をさらに感じた…と。おそらくここ暫くは間違いなくこのメンバーで行くんじゃないかな──と。

広瀬:今回ベスト・アルバムが出るタイミングでしたけども、この選曲に関してはご本人はどういう考えだったんですか?

土屋:今回のベスト・アルバム『Light For The Ages-35th Anniversary Best〜Fan’s Selection-』ですがタイトルにもあるようにファンの皆さんの投票で曲が決まる──上位40曲が収録されるとなっていて。

広瀬:本当にそうなんですか?(笑)。

土屋:もちろん投票していただいた結果を元に考えるんですけど、バランスもみて──というのはよくあることで。でも結果的にそういう調整はなく、ファンの皆さんの投票のままの通りに収録されています。

広瀬:40曲でほとんどのアルバムを網羅してるんでしたっけ?

土屋:全部で25〜6枚のオリジナル・スタジオ・アルバムは出てるので、まぁほぼ全時代を網羅したベストで、入門編としてはとてもいい内容ではないかなと。4月19日に26年ぶりに日本武道館公演があります。初めて行こうと思う方、久しぶりに行くか…という方にはとても手頃なベスト・アルバムかなと思います。でも、とはいえこのベスト・アルバムの曲を基にセット・リストを組むわけではないので。

広瀬:武道館が決まって麻里さん喜んだでしょう?

土屋:ここの所東京は国際フォーラムでやってたんですけどチケットが即日完売で。あそこのキャパは5,000人強なので、観たい人が観られるためにはそれ以上のキャパの会場──というと武道館になっちゃうんですよね。代々木第一競技場とかもありますけど、あそこはステージ上が寒いので麻里さんがイヤだと(笑)。僕もステージに上がったことがあるので分かるんですけど、どういうわけか冷たい風が吹き抜けるんです。

広瀬:今、武道館って取りにくいじゃないですか。だからどのイベンターさんと組めば取れるか──。

土屋:今回、浜田麻里さんの公演は4月19日ですけど、その前後がエリック・クラプトンなんです。効率的なことを考えれば、19日も含めて同じライヴをやった方がセットをばらして組む必要もないのでいいじゃないですか。でもそこを敢えてクラプトンを一日外して、ウドー音楽事務所は浜田麻里のために空けた──ということなんです。麻里さんも嬉しかったんじゃないですか。

広瀬:そうですね。あと、今回44MAGNUMはPAULさんが登場。

土屋:44MAGNUMはデビュー35周年イヤーということで、デビュー時からのメンバー一人一人をずっと取り上げて、最後はPAULさん。今は息子のStevieさんを加えた5人編成ですけど、PAULさんはご存じの通り若年性パーキンソン病でここ13年くらい闘病をしつつステージに立ち続けているということで、昨日(2月10日)も新横浜NEW SIDE BEACH!!でライヴがあって。

広瀬:今回インタビューしてびっくりしたことってありました?

土屋:知ってる人は知ってる話だと思うんですけど、<PAULってなんでPAULって言うの?>っていうのがあって。最近の日本のミュージシャンってそういったミドル・ネームが付く人ってあまりいないじゃないですか。

広瀬:例えばhibikiとかHibikiとかってどこのヒビキ?っていう(笑)、団長とかだったら間違えないけど(笑)。

土屋:ま、なぜPAULと言うのかはこのBURRN! JAPAN Vol.13のインタビューを読んでいただくとして。

土屋: PAULさんのインタビューってご自宅まで行ったんですよ。でも自宅でやったわけじゃなくて、“行きたい店がある”っていうので、どこへ行くのかな?と思ったら、焼き肉屋で(笑)。“焼き肉代払えないっすよ〜”って言いながら焼き肉喰ってインタビューしました。

広瀬:よかったじゃないですか。

土屋:よかったんですけど、食べながらインタビューってやり辛いですよ。

広瀬:焼き肉ウルサいし。

土屋:録音しながらインタビューするでしょ、あとでテープ起こしをするとき、ジュ〜〜〜〜って(場内爆笑)。一応目の前に美味しそうなお肉はあるんですよ。食べましたけど、美味しかったけど、まったく満足感がないですね(笑)。

広瀬:たまにそういう居酒屋でっていう取材もありますけど、僕は極力それは避けてるんですよ、前田君はいつもVOLCANOをそうやって取材してるそうですど。

土屋:VOLCANOはいいんじゃないですか、その方が(笑)。

広瀬:僕一度、柴田さんを居酒屋でインタビューしたことがあるんですけど、5時間くらい喋ってもらってどうにもならなかったことがあって(笑)。普通にいつもそのくらいの時間、飲んで喋ってて、柴田さんもよく喋るし僕もお喋りなんで、僕の部分も長いし、“今のは使えませんよね”っていうのが多くて3時間分くらい使えなかった(笑)。だからそういうのは止めましょうって。

土屋:だいたいBURRN!編集部とか、レコード会社の会議室でやってますからね。で、他にはMASAKIさんをやりました。アニメタル、DAIDA LAIDA、CANTA、その昔はJACKS’N’JOKER。キャリアのスタートはJACKS’N’JOKERなんですけど、加入してから4ヶ月後にはバンドは解散して。

広瀬:最後の方にちょっとだけ。

土屋:でも日本武道館のステージに立ってるんですよ、入って2本目のライヴが当時所属のレコード会社のイベントで。

広瀬:取材で何か発見はありました?

土屋:生い立ちが今の彼のパーソナリティの形成に大きく影響を及ぼしてる──というのが新たな発見でしたね。引っ越しが多くて転校も多かったから、人との出会いの縁を大切にしてる。一度知り合った人とは連絡を取り合うようにしてる──って。これ、本当にそうなんです。MASAMIさんは“音源できました”とか“今度ライヴがあります”とか、ちょくちょく連絡をくれて、<マメな人だなぁ>って思ってたら実はそういう人だった。彼の周りに人がたくさん集まるのもよく分かります。

広瀬:そろそろSYU君もスタンバってると思いますが、他に何かありますか?

土屋:GALNERYUSがらみの話で、小野正利さんが初めてGALNERYUSで歌ったのが僕が主催してきたイベントPURE ROCK JAPAN LIVE 2009なんですが、そのときベースを弾いてたのが、今回のBURRN! JAPANでも取材したDELUHIのLeda君。元々ギタリストで、今年の4月にDELUHI結成10周年ということで特別にライヴをやるというのでその話をしてもらってます(4月12日マイナビBLITZ赤坂、19日TSUTAYA O-EAST)。

広瀬:今回は摩天楼オペラの苑君もSYU君のアルバムに参加しているので、その辺りのこともインタビューで話してもらっています。では、お待たせしました。今日のメイン・ゲスト、ゲストは一人ですが(笑)。SYU君にご登場いただきましょう、どうぞ!(場内大拍手)

SYU登壇

広瀬:今日はありがとうございます。

土屋:GALNERYUSのSYU君です。そういえばいつも乾杯してたじゃないですか。

広瀬:本当だ、じゃ今から乾杯しましょうか。
SYU:乾杯しましょう!

土屋:では広瀬さんの音頭で

広瀬:ではSYU君の大傑作『VORVADOS』リリースを祝して、乾杯!
土屋、

SYU:乾杯!(場内も乾杯!大拍手)

広瀬:今回はSYU君の初めての表紙ということで。

SYU:えらいこっちゃ!ですよ。

広瀬:カッコいい写真で。

SYU:いやぁもう僕、表紙にしていただけるなんて心の底から思ってなかったので。

広瀬:いつしようか、いつがいいのかな…と思ってて。今回どうですか、自分の写真を見て。

SYU:めっちゃカッコいいですね。

広瀬:今回、BURRN! JAPANで独自に写真撮影をしたんですけど、撮影中にカメラマンさんが見せてくれたモニター画像を見て、“お、カッコええな!”って凄く素直に言ってくれるんで、“それが嬉しかった、楽しかった”ってカメラマンさんも言ってました。

SYU:何枚か撮ったらパソコンのモニターでリアルタイムで見せてくれるんですよ。で、見たときに、既にオレじゃない。これは誰だ?と。(場内爆笑)

広瀬:まぁ元が良くないとこうはならない。メイクしてるだけであって、加工はしてないですから(笑)。

土屋:僕もちょっと撮影に立ち会ったんですけど、カメラマンに向かったSYU君のオーラが凄い。もうカッコいい写真しか撮れないでしょ──っていう雰囲気が出てて、凄いんだなぁ、やっぱりアーティストさんは違うな…と。

SYU:今回の撮影は僕も感銘を受けた撮影で、メイクさんも上手い、早い、柔軟。これまで色んなメイクさんにやってもらったことがあるんですけど、その中でその人なりの拘りってあると思うんですよ。その拘りを押し付けてくることもなく、“こういうことをしたい”って言うと即座にやってくれるし。ただただ感動して、とにかく早い。薄いメイクから濃いメイクへの流れも、髪型のセットも凄く早かったし。

広瀬:僕も撮影現場に立ち会うんですけど、カッコいい人だと立ち会い甲斐がありますね。

SYU:カメラマンさんも。

広瀬:色んなアイデアを出してくれて、それにちゃんと応えるSYU君もなかなか。これなんか(本誌の見開きページで同じソファーに座った左右別のキャラクターをSYUが演じるもの)カッコいい。カメラマンとデザイナーが協力して作った絵柄です。

SYU:僕が女やったら惚れてます(笑)、この間に入りたい。

広瀬:これもSYU君だから浮かぶアイデアで、Concerto Moonの島君だったら浮かばない(笑)。(場内爆笑)

SYU:何を言ってるんですか、島さん会ったとこやし。

土屋:このイベント、こういう話がどんどんどんどん出てくるんで(笑)。

広瀬:衣装も何パターンか変えて、一つはこの『VORVADOS』のイメージである赤、そして青と。

SYU:この衣装(青)の時が一番<神>な感じでしたね。神がかって。

広瀬:それは自分が?

SYU:そうですね。

広瀬:なんか、ゲームの主人公みたい。

SYU:僕、ファイナルファンタジーのクラウドさんが好きなんですよ。

広瀬:クラウド! クラウドいいよね。

SYU:「大乱闘スマッシュブラザーズ」ってゲームでクラウドさんを使えるので、今やもう無敵ですから。

『VORVADOS』はコンセプト・アルバム

広瀬:今回、『VORVADOS』のインタビューで、僕、言いましたけど、一つ一つの曲の繋がり方というか流れみたいなものが、頭から最後迄コンセプト・アルバムのように聴こえるんです。

SYU:それをインタビューの時も言っていただいて。

広瀬:でも全然そのつもりがなかったというので本当にびっくりしました。

SYU:まったくなかったですね。デモを作って、それぞれこれはFukiに、これは苑さんに歌ってもらいたい──って考えて。で、いい感じの流れやな…と並べたら、コード進行もいい感じに繋がっていくとこも多くって。「暁」から「Euphoria」の繋がりとかの部分も狙ったかのように。

広瀬:狙ってたんでしょ?

SYU:狙ってましたね(笑)

広瀬:コンセプトだって言っちゃった方がいいんじゃない?

SYU:オープニングでいつものガルネリのようなフレーズを付けたら、よりコンセプチュアルといいますか。

広瀬:歌詞もそれぞれの方に、非常にざっくりとした事しか言ってないというのに、流れが凄いですよね。

SYU:広瀬さんにそうやって言っていただいて、“あ、そうだったんですね”って僕も気づいてなかったです。

広瀬:壮大なストーリー。

SYU:ちょっとコンセプト・アルバム作り過ぎですね、オレ。

広瀬:土屋さん、このアルバムはどうでした?

土屋:凄く面白かったです。これだけ色んなヴォーカリストの声でSYU君の曲を聴くというのは今までなかったですし。小野さんが歌っているのも、本来GALNERYUSのメインの曲を書いてる人なんで“GALNERYUSぽいな“と思うところもあるんですけど、でもそれとは違うんですよね。

適材適所のヴォーカリスト起用

広瀬:ガルネリっぽい──っていうのは言われるとそう思うけど、いや摩天楼オペラだな…とか、NoGoDだなってメロディーが出て来るのは、SYU君がこれまでガルネリで見せてなかった引き出しの多さっていうのをどんどん出して来たなと。このヴォーカリストをそれぞれ適材適所に置いた意味も大きかったと思うんです。

SYU:それに関しては、FukiはFuki Communeとかあんきも(Unlucky Morpheus)とかソロとか色々やってますけど、ライヴを拝見して彼女の声やったらクサメロ(覚えやすいクサいメロディー)のメロスピ(メロディック・スピード・メタル)でもの凄く映えると。なんか心を伝えるのが上手い人やなぁ──と思ったから、「REASON」と「AndroiDedication」は泣きのメロディーで行こう、Fukiに歌ってもらおうと作ってる時から──ピアノでメロを打ちながらFukiの声が聞こえてくるような──そんな感じで作っていて。それで録ったら、その斜め上を行くような声やったんで、録ってる再中、僕、爆笑してしまって。

広瀬:凄すぎて?

SYU:ウワァ凄い(笑)って。

広瀬:Fukiさんにしても、そうやって褒めてくれるのが新鮮だったって。

SYU:みたいですね、なんか紫煉ちゃん(あんきも・G)が全然褒めてくれないって言ってて、意外やなと。

広瀬:<紫煉君が出させない高い音を出させた>っていうのがあったじゃないですか。<紫煉君だったら、音域ここまでだからこれだなって所で絶対そういうことを無茶させないのに、“イヤ、出るでしょ”って出させたら出ましたね、ハハハ>──って。その辺りも凄いですね、これは出るっていう見極めも天才的だなって。

SYU:ライヴとか音源とか聴いてて。あと、ずっと長きに渡って小野さんと一緒にやってるんで、男性ヴォーカルの究極の小野さんとずっとやってることによってだいたいのレンジが、何となくわかってきて。高い所は実音でいうF#とかGとかがライヴでもキレイに出せる音域かなと今のところ考えてて。タバコ止めたらまだ出ると思うんですけど(笑)。

広瀬:よく吸うもんね、あの人。

SYU:タバコ止めたら超音波くらい出ると思います(笑)。ま、それを踏まえてFukiは地声で押していくタイプやから、Fukiやったら出るやろと思ったら、当の本人が出したことがない──と言うてはったんで。録る時に、“出なくてもいいから──出ない場合は裏声で対応しましょう”って言ってて、何回か録っててTAKE 4ぐらいの時に、この絶叫が出てきて。“今の録りましたよね?” “置いときました、いただきました!“って。

土屋:Fukiは以前BURRN! JAPANでSYU君と対談してて。

SYU:しました、しました。

土屋:その時も、“ソロ・アルバムを作る時は是非お願いします──”って。

SYU:なんかちょっと前フリになりましたね。

土屋:その時SYU君は“ソロ・アルバムに使えたらいいなぁ…”って言ってデモを一曲持ってきてたんだよね。あれは何の曲。

SYU:あの時聞かせたのは「AndroiDedication」の素ですね、後、「CACOTOPIA」の素。“今こんなん作ってるねん”って。

広瀬:「CACOTOPIA」ですよ。今、ガルネリが所属しているワーナー・ミュージックの担当ディレクターがインタビュー直前まで音やデータといった資料を何もくれなくて、やっと音だけが先に届いたので資料も何もないけど、まず聴いたんですよ。そうしたら他の曲のヴォーカリストはだいたい分かるんだけど、「CACOTOPIA」を歌ってる人が分からない。どう考えてもヴィジュアル系の歌い方なんだけど苑君じゃないし、こんな人ヴィジュアル系にいたかな…と思ってて。で、暫く経ってから資料が来たら、“えっ!!”って。

土屋:SYU君が歌ってた。

広瀬:本当にびっくりしました。以前もソロで歌ったことはありますけど、もう少し抑えた感じで。

SYU:簡単に言うと、今までは全然歌えてなかった(笑)。

広瀬:今回はきちんとリード・ヴォーカリストでしたね。

SYU:小野さんっていう人が間近にいるじゃないですか、ああやってハイトーンを駆使して表現をしてるところを間近で見てるから職権乱用で色々訊くんです。“あの高い声はどうやって出してはるの?” すると、“ウ〜ン、気合いです!”って全然答えてくれへん。そうやってはぐらかしてくるから、これはもう見るしかない──と色々見てたら、ベロとか口の開け方とかあるんですけど。僕の中で一番タメになったのはお腹の使い方。僕もお腹で歌えてると思ってたけど、小野さんの一言によって、お腹が使えてないのが分かって。小野さんが何を言うたかというと、<お腹が膨れてる状態をキープして何ごとも歌うこと、それやったら自然と複式になる>。(場内に)ほれ、試してみて、カラオケ上手くなるから。それで自分にとって高い所もスコーンと楽に出るようになったんです。広瀬さんが聴いてくださっていいと思っていただいたのは小野さんのお陰で。

広瀬:本当に上手いなと思って。

SYU:いやぁまだまだ。

広瀬:もともっと上手くなって。

SYU:なりますよ。

広瀬:そのうちガルネリの半分くらい歌うように(笑)。

SYU:ね。えっ?(笑)

広瀬:「CACOTOPIA」「AndroiDedication」と行く辺りの歌詞の流れとかも、それぞれバラバラに書いたとは思えない。物語として成立してるんです。それで最後の「未完成の翼」にHARUKAが出てきてビシっと締めて、それでいつものようのガルネリのエンディング・テーマが流れて終わった物語だったな──と。非常に達成感があって。

SYU:自分で作業をすることが非常に多かったこのアルバムですけど、各ヴォーカリストがベスト中のベストを出してくれて、奇跡的に僕の歌もいい感じに乗って、気づけばなんか凄いいいアルバムになってましたね。

広瀬:凄いいい。

土屋:それぞれのシンガーの良さをちゃんと引き出して、これは凄いなぁと思って。さっきから出てるFukiもそうですけど個人的に驚いたのはHARUKA。TEARS OF TRAGEDYのライヴも観てアルバムも聴いてますけど、彼女、こんなに上手かったんだ、表現が豊かだったのか…って思いましたね。

広瀬:僕もそう思って。「暁」と「未完成の翼」。特に「暁」はイメージにない歌い方をしたと思ったんですよ。

SYU:それはそうですね。僕もTEARS OF TRAGEDYで、ライヴは何回か拝見したんですけど、そういう曲はあまりなかったですね。

広瀬:土屋さんも言ってましたけど──これは本人にも言いましたが──こんなに上手かったんだって。Fukiさんとか苑君(摩天楼オペラ)とか団長(NoGoD)が参加するのは、なるほどなぁ…って思ったんだけど、HARUKAさんとSYU君の接点は聞くまで知らなくて。SYU君にとってそんな大事なエンジェル・ヴォイスだったとは。

SYU:Fukiが<剛>だから、HARUKAちゃんはどちらかというと<静>の方から攻めていくタイプで。TEARS OF TRAGEDYのライヴを初めて見させてもらった時に、“なんでこんな人がメタルを歌ってんのやろ”って思った。メッチャ上手いし、透き通るような声なんだけども太くズゴーンと抜けてくるし、パフォーマンスも独特やし──それで何回かライヴに行かせてもらって。で、ソロ・アルバムの構想もその当時少しあったんでできればやってもらいたいな──と足を運んで知り合いにならさせてもらって。

広瀬:まずは友だちから。

SYU:(笑)。で、渋滞の時にTEARS OF TRAGEDYをかけるとイライラが納まるんですよ。向こうのバンドでやってる曲でメタルっぽいのもいっぱいあるんですけど、ピアノと二人で歌ってるのとかはモロJ-POPやし。J-POP以外の何者でもないし──っていうくらいで、もの凄いクオリティが高い。ただ、そういうところでは上手くても、ウルサいバッキングで歌った時にはピッチ感が不安定になってしまう人が多いんですけどそういう所もないんです。だからそういう所が本当に凄い人だなと。「暁」と「未完成の翼」を録らせてもらった時もメッチャ緊張してはって。でも、“緊張はしてるけどメッチャ練習はしてきた。「暁」のBメロの所を練習しすぎて腹筋が痛い”って(笑)。才能がありつつメッチャ練習するから間違いなくいい物が録れる──というのを痛感しましたね。

広瀬:団長が歌った「Euphoria」も。

SYU:このアルバムの中では結構最後の方に作ったんですよ、団長さんに歌ってもらおうと思って作りました。

広瀬:NoGoDでよく聴くようなスタイルのメロディーの持って行き方でしょう。

SYU:僕もNoGoDさんのライヴは何度も拝見していて、まず曲よりも何よりも団長さんのキャラですね。団長さんがステージ上に出てきたら一瞬にして持って行ってお客さんと一体化するような──とにかく魅力的で声の抜け感も素晴らしいし歌も上手い。もう素晴らしいとしか言いようがないんです。僕、色んなインタビューで、“褒めることしかしてないんですね”って言われるんですけど、逆に褒めることしかできないんです。

広瀬:だって褒めたいような人だから使ってるわけでしょ。

SYU:こんな問題がありました…っていう話があったらしたいんですけどないんですよ。皆ベスト中のベストで挑んできてくれて、体調もバッチリで録れてるから全く問題がないんです。

広瀬:僕は「Euphoria」のバッキングのパターンにしても、結構NoGoDっぽい所があるなと思ったんですよ。

SYU:知らず知らずそうなってるかもしれませんね。

広瀬:あの声となると、やっぱりそっちに行くかなと。

SYU:バッキングのテンポ感はお客さんがいい感じにジャンプするぐらいにしようと思って設定して。この間団長さんとはライヴで共演させてもらったんですけど、予想通りと言いますか煽りに煽り倒してくれて、すっごい楽しかったです。

土屋:この曲はNoGoDっぽいって言う人が多いですよね?

SYU:凄い多いですね。

土屋:僕は“DAGGER REMAINっぽいね“って思ったんですよ。そう団長に話したら、“やめてくれ!”って言われましたけど(笑)。DAGGER REMAINというのは、昔、団長がやってたバンドなんですけど、“青春メタル”なるキャッチ・フレーズを持ってたんですよ。今はPHANTOM EXCALIVERが“青春メタル”なんてよく言いましたけど、もともとその言葉を使い始めたのは団長なんですよね。

広瀬:土屋さんはこの本で摩天楼オペラの苑君のインタビューをしてますが、自分が歌った曲にについて苑君はなんて言ってました?

土屋:これはインタビューの所でも言ってるんですけど、“凄くいい経験で、声を掛けてもらって光栄です。自分の方に寄せて曲を書いてくれたのかな──”と。

SYU:「ここで区切れと天使は歌う」ね。この曲はGALNERYUSでやったとしたら、<GALNERYUSがANTHEMさんに影響を受けた感じがあって>という正統派の曲になると思うんですけど、苑さんに料理してもらったら摩天楼オペラそのもので。

広瀬:ハイトーンが凄いよね、この人は。

SYU:Fukiに引けを取らないハイトーンで、男性でっせ。一番高い音が最後の方に来るんですけど、あれも数テイク録らしてもらったんですけど、全部いいんです。

広瀬:あそこの音は、彼は普段から出してる音なんですか?

SYU:いや、もう “死ぬほど高い”って言ってました。

広瀬:あそこまでというのは──。

土屋:あそこまでは出してないって苑さんが言ってましたね。

SYU:E♭までは出すけど──、これはその2音上かな。<スタジオでちょっと軽く声出ししたけどギリギリでした>っていうメールが来て。素晴らしかったです──でも、どっから出てんのやろねあの声は、あのヴィブラートは。

土屋:あの個性的な声は武器ですよね

SYU:声の強さとか、心から来るものとかがあって、平歌歌ってる時の色気のある声と、サビを歌う時のカーンとしたノドが開いた時の声って、苑さんは如実に違うじゃないですか。ブーストボタンを押した時みたいに、あの声の音量差が凄い。フォルテシモになった時の声の強さは半端なくて、なんと一回目録った時に録り音が割れたんですよ、バリバリバリっていうくらい。もうスピーカーをぶっ壊すくらいの人なんです。で、ヴィブラートのことを本人に訊いたら、あれはマイケル・キスクからの影響だって言ってました。早くて幅の広い感じでそこから派生していくヴィブラートだと思うんですけど、唯一無二ですよね。

広瀬:今回、ガルネリのメンバー全員にもインタビューしたので、GALNERYUS 15周年の話もしたいんですが、ちょっとここで休憩を挟んで、続きは第二部ということで。


第二部

GALNERYUS結成当時の話

広瀬:SYU君はガルネリのメンバー全員のインタビューって読みました?

SYU:読みました。みんな普段からよくコミュニケーションはとってますから、あっ、話してくれてるなぁ──というとこはありました。

広瀬:なるほど、仲はいいんですね。

SYU:(笑)いいですよ。

広瀬:誰が特に仲がいいですか?

SYU:多分、YUHKIさんかな。結成の頃からずーっと居てくれてるし、プレイヤーとしてのスキルと作曲能力が群を抜いて凄い。彼の曲抜きにはGALNERYUSは語れないですね。後、一緒にレーシング・カートに行ったりした時期があって。去年とか今年とかできてないんですけど、ちょっと時間がある時は、“YUHKIさんどうですか?”って電話して行ってましたね。

広瀬:土屋さんはGALNERYUSとは結成当時からの知り合いですか?

土屋:結成してすぐから知ってはいますけど、直接SYUと会ったのはいつだったかな…。

SYU:僕、弟(土屋陽輔)さんと先に会ってるかもしれない。

土屋:そうだね。

SYU:僕が土屋家を知ったのは二十歳くらい(笑)。

土屋:SYU君がGALNERYUSを始める前、某バンドで弾いてて、若くて凄いギタリストがいるよ──って僕は聞いてたんです。当時の音源は今聴いても、今に通ずるSYUの色があるんですよ。

広瀬:当時の音源って持ってるんですか?

土屋:ありますあります。

広瀬:それはオフィシャルで出たものなんですか?

SYU:VALKYR(ワルキューレ)、やってましたねヴィジュアル系。19歳〜21歳くらいの頃のバンド。それでデモテープをいくつか作って、勢いが出てきてCDやチラシを作ってた時代に、陽輔さんに会ったんです。

土屋:凄まじい曲があるんですよ。「バッタ」っていうんですけど。

SYU:僕がハルフォードの「Resurrection」にいたく感動して、“こんな曲がいい、こういう曲を作る──”って、ハルフォードが基本8ビートでやってるバッキングを倍にしてやった曲。当時からメロディーや歌詞はヴォーカリストに任せる──が自分の中にあったから当時のヴォーカルのRayちゃんに頼んで。そういう化学反応が起きてくるようなバンドやったんです。当時は今よりも全然指が動いてましたね。

土屋:今よりってことはないでしょ(笑)。

SYU:ギブソンのフライングVを弾き始めて間もないくらいの時ですね。

土屋:僕はGALNERYUSは比較的早い時期に観てるんですよ。

SYU:いつが初めてですか、土屋さんは。

土屋:最初は西九条ブランニューだったとは思うんだけど、はっきり記憶にあるのは2001年12月に難波にあったMOTHER HALLっていう大きいハコで開催されたメタル・イベントですね。

SYU:メロディック・メタル・コンヴェンション。

土屋:そう。そのオープニング・アクトにGALNERYUSが出たんです。

SYU: VOLCANOさん、陰陽座さん、XYZ→Aさん、CONCERTO MOONさん、BLINDMANさんがドーンと出て、オープニング・アクトがGALNERYUSとかだったんですよ。まだ僕は右も左も分からん若造なんで、当時、ブランニューのブッキング・マネージャーだった岡西さんって方に、“お前らチケット75枚くらい売ってこい、手売りしてこい、これはノルマや。それでも出たいんやったら頑張れ”って言われて。それが1枚5,000円ですよ。ケツ叩いてもろたから、もう土下座に近いレベルで“頼む!来てくれ”って売って。全部は売れなかったけど、なんとか売って、それで出たんです。今から思い返すとあのイベントが自分の中で凄く大事なものになってて。

土屋:多分話が出ると思いますけど、GALNERYUS、そしてSYU君の人生を大きく変える一日になったんです。

GALNERYUSデビュー

SYU:そうなんです。プロデューサーの久武頼正というGALNERYUSを15年以上やってくれてる人が、初めて僕を観た日なんです。

広瀬:久武さんといつ知り合ったの?って聞こうと思ってたとこで。

SYU:ちょうどVOLCANOさんのプロデュースをされてて。

広瀬:そうか、なるほど。

SYU: GALNERYUSがCD-R「United Flag」を1,000枚限定で出したのを久武氏は事前に聴いてくれて、“まぁ観たいな”くらいの感じで来てくれてたんですよ。でも、何か事情があって、GALNERYUSのライヴはちゃんと観れなかった。僕が
フライングVを持って曲の最後を弾いて、ヴォーカルが“ありがとぉー”って叫んでるところに来たっていう(笑)。で、打ち上げの時、岡西さんに“VOLCANOやアニメタルやってる凄いプロデューサーが来てるから挨拶してこい!”って言われたんで、駆けていって、“今日はどうもありがとうございました、観ていただいて“って言ったら、“うん、よかった”って(笑)。(場内爆笑)“これから、是非君をプロデュースしたいと思ってるんだ”──“エッ!!!マジっすか!”。

広瀬:観てないけど(笑)。

土屋:簡単に言うと、もうその気で来てたんですよ久武さんは。実はその場には当時はVAPのA&Rだったタナケンこと田中健太郎さんも来ていて、久武頼正プロデュースでGALNERYUSをデビューさせる──っていう流れはその時にもう彼らの中にはできてたんです。実際にその時に僕は彼から、“やりますから”“って言う話を聞いてますからね。

SYU:「United Flag」を聴いた久武氏とタナケンさんが凄く意気投合して──という話は後で何回か聞きました。イントロの途中で、クロマチック・スケールで弾いてる所があるんですよ。“メロスピでネオクラな感じのギターやのに、ここでクロマチック使うのってナイよな–!!”って二人で盛り上がったらしく、もしそこで僕がクロマチック弾かなかったら、僕、今ここにいないかもしれないです──というくらい、そういうちょっとしたセンスを感じてもらって、それで気に入ってくれたみたいで。

広瀬:それで久武さんと知り合ったのが2001年。VAPからデビューしたのが2003年。

SYU:『アニメタル・マラソンⅤ』の方が先ですね。

広瀬:アニメタルを先にやった。

SYU:それと同時進行くらいで、当時久武さんが所属してた会社MITギャザリングの音楽制作部を介して「REBEL FLAG」というマキシsgを出させてもらったりしたんですけど、僕のメジャー・デビューはその『アニメタル・マラソンⅤ』。で、そのあとにGALNERYUSの『The Flag Of Punishment』が出たと。

広瀬:アニメタルをやるに当たっては、“アニメタルかよ”というのはなかった?

SYU:全然! まだ覚えてるんですけど、当時西宮のライブハウスでバーテンしてて、空き時間にギターを弾くのも電話するのも自由やったんです。その時久武さんから携帯にかかってきて、“あのな、屍忌蛇がアニメタル辞めてな、ギターが空いてんねん、お前やる気ないか?”って。もうこれは、オレはシンデレラ・ボーイや!と思って即答でした、“やります!やらせてください!”って。そのあと、レコーディングで東京に行ったんですけど、用意してくれた笹塚と桜上水のウイークリー・マンションに2週間入って。だから、そんないい環境でレコーディングさせてもらって、もうテングになりそうでしたね。でも、自分の中でも危険信号が出てて、これはアカンと調子に乗らんようにするのに必死でした。アルバムは今から聴いたら恥ずかしいですけど、初めて録音したのを聴いてギャランティを貰った時には、“これがプロか”って感じでしたね。

広瀬:ちなみに坂本英三さんは?

SYU:あ、何も言ってくれなかったです。(場内爆笑)MASAKIさんが“SYU、お前それいいね、結構それいいんじゃない”って感じでいつもメッチャ上から目線で褒めてくれて(笑)。

広瀬:それでGALNERYUSとしてデビューしてどんな心境だったんですか?

SYU:当時のヴォーカルYAMA-Bと二人で始めたバンドで、最初はブランニューの岡西さんにメンバーを募ってもろて、一応バンドとして固まって「United Flag」出して、なんじゃかんじゃあってデビューするときにはメンバーも色々変わってまして。で、当時大阪から東京へ何回も行ってる間に知り合ったのがYUHKIさんだったりしたので、Jun-ichiさんを含むその時のベストメンバーでデビュー・アルバムは録れたので。それでサード・アルバムまで弾いてたTsui(松井)に関しては、どこにでもいるベーシストなんですけど、18歳くらいからの知り合いで未だに隣町に住んでて、一年に一回会うか会わないかで全然興味ない奴で。

土屋:一応松井君の名誉のために言っておきますけど、これ<ネタ>ですから(笑)。

SYU:そう、松井に関してはヒールで踏みつけてやりたい(笑)。

土屋:僕、昨日会いましたけど(笑)。

SYU:あ、すいませんタイムリーな感じで(笑)。彼はGALNERYUSがデビューする前から僕の音楽が凄い好き──って言ってくれてて、“オレは東京に行く!”って言った時に、“頼むからベース弾かしてくれ、何でもするから!”って。そこまで言う奴いなかったんで、“じゃあ、やって”とサードまで頑張ってもらって。よう頑張ってくれましたよ、まぁTAKAさんには敵わないけど(笑)。

土屋:今回のTAKAさん、YUHKIさん、FUMIYA君のインタビューでも、Tsui君の名前が出てくる。

SYU:何気に重要人物なんですよね(笑)。あいつおもろいんですよ。この間2月1日にガルネリのライヴがあったんですけどそこにも来てて。なんでいるの?(笑)って。(場内爆笑)

PURE ROCK JAPANとGALNERYUS

広瀬:PURE ROCK JAPANに初めて出たのはいつですか?

土屋:結構遅いんですよ、2006年O-EASTだったか。

SYU:PURE ROCK JAPANに出させてもらう──って決まった時は、“やっと出れた!やった!”でしたよ。そうそうたるメンバーが出てる一大メタル・イベントですから。

広瀬:その時他には誰が出たんですか?

土屋:誰だったかな──20年くらいやってると忘れちゃうんですよ。いずれにしても、GALNERYUSはもっと早く出てもらってもよかったんだけど、活動拠点が関西だったから呼ぶのも大変だったんですよ。今となっては最多出演記録を持つバンドですけどね。

SYU:毎年出させていただいて。今年も5月にあって(5月26日@川崎CLUB CITTA’)。そうそう、GALNERYUSは今月から曲作りに入ります──って、僕、宣言しちゃってて。でもいいサビとか浮かんできてるしいい感じのアルバムになると思います。コンセプト・アルバムの最終回として、聴く人がまた大変な感じになっちゃうかもしれませんけど(笑)。でもキャッチーな所もあって──と。自分の中で『VORVADOS』というのがカンフル剤にもなったし、曲を作っていきつつPURE ROCK JAPANのときにも、なんか新しい事ができたらなぁ──って思ってるんで楽しみにしてください。

土屋:宣言が出ました。

SYU:PURE ROCK JAPANは何かとメモリアルな事になるのが多いんです。忘れもしない2009年、ヴォーカルYAMA-Bが抜けてしまってどないしよう、出演はその前から決まってたから飛ばすなんて絶対イヤや!って言ってたら、久武さんが知り合いやった小野正利さんに当たってみよう──となったんです。小野さんがMIジャパンって音楽学校で教えてらした時に挨拶させてもろたことはあったんですけど、僕の中では小野さんはもう雲の上の人で。でも、まずは雲の上から──とお願いしたらゲスト出演OK!が出て。

土屋:運命変わりましたよね。

広瀬:で、その日に、“このまま入っちゃうっていうのはどうですかね──“って言ったんでしょ?

SYU:モロそうです。もう現場処理みたいに“このまま入ってください!マネージャーにはこれから言ってきます“。

広瀬:小野さんって凄く腰の低い人、謙虚な人じゃないですか。“僕なんかでいいんですか?”っていう返事だったんでしょ。

SYU:そう、もう、どの口が言うか!(笑)って思いますもん。

広瀬:この間THE MANのライヴで小野さん歌ってるのを観てどうでした?

SYU:イヤもう誇らしい。THE MANはANTHEMさんのメンバーが揃うシーンもあったじゃないですか、そういうのを観てると、偉大だなぁって。もう凄いまとまり感が半端なくて。僕は森川さんのヴォーカルは大好きで、熱く滾る、カバーなのにカバーと思わせない説得力があって。ここで歌うのは小野さん緊張してるやろな──と思てたらやっぱり緊張してて(笑)、でも歌い始めたらスコーン!って抜けて、森川さんとは違うレンジで抜ける声だから、ホント気持ちよかったですね。YUHKIさんも柴田さん(柴田直人)が見てるからっていうのもありますけど、もの凄い機械的に弾いて緊張感がありました。柴田さんスゲ〜!音もデカいけど(笑)。でもうちのメンバーが演奏してるのを外から第三者的に見るというのはあんまりない機会なんで。YUHKIさんもALHAMBRAやったらまた顔つきがちゃうんですよ、ちょっとドヤ顔が多い(笑)。

広瀬:小野さんにインタビューした時、“GALNERYUSに入った時、ステージアクションがオジーみたいになりますけどいいですか?って話した”という話を聞いたんですけど(笑)。

SYU:小野さんらしいといえば…でも何回も観てると、継続は力なりと思って。

広瀬:一つのスタイルだと

SYU:極端な話、小野さんがきっちり歌って曲を表現してくだされば、僕はもうなんの文句もないし、だからそういう部分で、そのままで…って。もっとバンド然としてパフォーマンスはこうやって──というのもいいと思いますけどGALNERYUSは各メンバーに任せたいんです。僕がこういうパフォーマンスをやってる──というのを見てもらって、それに自然と合わせてくれるような感じが一番いいんじゃないかなと。

土屋:2月1日の『VORVADOS』発売記念ライヴ、アルバム完全再現ではなかったけど、どうでしたか?ゲスト・ヴォーカリストでFuki、苑、団長、HARUKAが参加して。

SYU:あのライヴは、その日久々に飯がノドを通らなかった。緊張というより気が立って気が立って。GALNERYUSの初期3作のアルバムの間──松井がバンドにいる間、あいつのせいじゃないんですけどライヴが終わるまでの間メッチャ気が立って集中して。だから飯喰ってる場合じゃなかったんですよ。

土屋:高ぶってる。

SYU:お腹も減らない。とにかくずっとギター弾いて、そのまま本気120%でライヴをやって燃え尽くして、終わって腹がバーン!と減って狂ったように食う──というのをいつもやってたんですけど、小野さんが入ってくれて以降変わったんです。確かSHIBUYA-AXでの「RESURRECTION TOUR」東京最終公演の時、ステージからお客さんの顔を見てたら、“小野さん、キターッ!“って感じで大喜びで、小野さんも上手い。それで安心感があって、“どーや!“って気持ちにちょっと変わった。とはいえ自分のやることはやって気は立ちますけど、その中でもメンバー間の信頼感が増したからお腹も減るようになって。話長くなりましたけど、今回の『VORVADOS』はツアーをしてるわけやない、しかも音源リリースをして初めてFuki、苑さん、団長さん、HARUKAちゃんとやるわけですよ。これまで各自セッションとかでちょっとやったことがあった人はあったけど、ちゃんと自分の音源でレコーディングしたメンバーが同じステージに立ってやるというのは初めてなんで──もう、緊張というか、絶対に失敗できない──跳べなかったら負けるフィギアスケート選手の気分がなんとなく分かる感じ。僕がお客さんやったら、見ててメッチャええ音でええパフォーマンスで音源以上のことをしたい。僕は絶対120%以上の力でダーってやって、尚かつメッチャアドレナリンも出て弦千切りそうになったから、そういうとこはコントロールせなあかんけど──そういうことを考えながらいいパフォーマンスをしたいって思いがメッチャあって。Fukiの「REASON」なんかミュージックビデオになっててメッチャカッコいいじゃないですか、だから余計に絶対ええものにいたいというのがあって。GALNERYUSのライヴやけど『VORVADOS』もやる──って告知してたし。で、ご飯が食べられなかった──という話です。でもね、そんだけ集中したから近年稀にみるくらいにいい感じで。

広瀬:「REASON」はどこで撮影したんですか?

SYU:栃木県の大谷石の採掘場。ともかくメッチャ寒くて、朝の10時で気温3℃。
撮るとこは洞窟みたいなとこでもっと寒くて僕の衣装も薄くて、Fukiはまだ革ジャン着たりしてたからよかったけど。でもちょっと撮ったら衣装さんがダウンコートを手の方から着せてやってましたね。

広瀬:ちなみにこのアルバムのタイトルですけど、英語的に『ヴォルヴェイドス』って言うのが正しいんですね。

SYU:あ、『ボルバドス』でもいいし。

広瀬:インタビューした時は『ボルバドス』って言ってた気がしたから。今この場でどっちが正しいのかを。

SYU:今日『ヴォルヴェイドス』って言ってましたから、『ヴォルヴェイドス』で。

広瀬:じゃあ『ヴォルヴェイドス』で。なかなかいいタイトルなので。

SYU:これはバンド名にも成りうるんじゃないかと。2年くらい前から気になって書き留めてたもんで、何とか神話のなんじゃかんじゃで。(場内笑)意味合い的には<燃ゆるもの>、ジャケットの通り自分の心を一番表現してくれる言葉やなと思って。

広瀬:SYU君は燃える人なの?

SYU:燃えてます。

広瀬:ちょっとクールに見えるんだけど。

SYU:内面がなにしろ燃え盛ってるんです。何事にも120%の力を入れる。ゲームにしても負けたらブチキレる(場内爆笑)、やられたらメッチャムカついてコントローラー投げつけますから未だに。自分の中でちょっとでも妥協したら全てが妥協してまうわ──と思うから。何でも、カートでも車でも料理でも。

広瀬:このシーンでずっとやってきて先輩もたくさんいるわけですけど、こいつド下手なくせに──って思った人いないですか?

SYU:え!(笑)(場内爆笑)先輩で…、ですよね。先輩っていうのはそれだけずーっとやってらっしゃる方なので、残るだけのモノがあるなぁ──というのは思います。あの…誰とは言いませんけど、酒をメッチャ飲んでるけど残ってるというのはそんだけのモノがあると。LOUDNESSさんは僕にとって神みたいなもので高崎さんのサウンドは世界最高やと思てます。山本恭司さんもそうやし。

広瀬:BURRN!で高崎さんと対談してもらって。

SYU:ちょうど僕が2002年にカバー・アルバムでLOUDNESSの「Soldier Of Fortune」を弾かせてもらったことがあったんですけど、僕が高崎さんのタッピングができなくて自分の好きなスイープで弾いちゃえ──ってやってたら、“お前…そんなん…やるやん”って言ってくださって、すごい嬉しかった。あの対談の時に、“お前、ちょっとコレ触ってみるか?”ってブースに入って僕のギターで高崎さんのセッティングで弾かせてもらったんです、“ああ、高崎さんはこうやって音を作ってんのや〜”と思ったんですけど、そのまんま僕のギターをお渡ししたら、何にもセッティング変えてないのに高崎さんが弾いたらもうLOUDNESSの音で、凄い、いつまでも神やなぁって。それは山本恭司さんも同じ。

GALNERYUS 15周年

広瀬:GALNERYUS 15周年という話をちらっとしましたけど、今年はどんな活動になっていくんですか?

SYU:ざっくりですけど、2月から4月くらいまではガッツリ曲作りをしまして、5月PURE ROCKがありながらレコーディングも進めていって、秋から冬ぐらいにかけてリリースとツアー。15周年なのでいつもよりも絶対多い本数で、僕としては15ヶ所以上のツアーを廻りたい──というのを目標に。

広瀬:長さ的にもいつもより曲数をやる?

SYU:アルバムを作るわけですからそれをやるのは間違いなくて、また観に来てくださった方は集中力を要するかもしれないですけど緊張感のある一部があって、その後第二部はお祭り──という感じで。

土屋:GALNERYUSだけじゃなくて、今、会場が押さえられない状況になっていてなかなかツアー日程が組めないんですよ。

SYU:去年暮れになる前から、皆さんが来やすい日程でと仮押さえは始めてるんですけど。

土屋:レコード会社がアルバムの発売をいつにするかを決めないと、それに合わせたツアーは組めないし。9月6日にはアメリカ、アトランタでのライヴ。

SYU:”Prog Power USA 2019″。せっかくアメリカに行かせていただくということなんで、まだ決まってないですけど現地で1〜2本ライヴができたらなぁと。

土屋:5月のPURE ROCK JAPANは小野正利加入10周年でもあって(場内拍手)。

SYU:そう、あのライヴから10年。僕ら的にも終わってから、“凄い良かった!”と、小野さんの突き抜ける声はステージの中にも響き渡ってて。それよりも観に来てくださった皆さんがそれを感じてくれてたようで、退館を待ってて下さった方から“小野さん、入れて”“ “小野さん、入れて”“、“小野さんにメンバーになるように”言ってください!“ってワ〜〜っと言われて。

広瀬:あの時は、“本当に小野さんこのまま入っちゃえばいいのに”って思ってて。

土屋:あの現場では皆そう思いましたよね。で、今度のステージはその10年前のステージを彷彿させるようなことが多分あると思います。

SYU:まだ、何も決めてない(笑)。

土屋:そうなんですけど、実は久武さんとは話をしてて。ま、それもあるしちょうど曲作り〜レコーディングの時期なんで皆さんの声援がそのままメンバーの力になる──っていうのは間違いないですね。3月23日(土)の10時から各プレイガイドでチケットは一斉に発売になります。あ、そうそう2月1日のEX THEATER ROPPONGIに出てたFuki、苑、団長、HARUKAって要はGALNERYUSを聴いて育ってきた、GALNERYUSチルドレンなんですよ。だからGALNERYUSの15年がいかに凄いものであるか──というのを偶然だけどあの4人がゲスト参加したことで絵的にもよく見えるライヴでした。

SYU:そう言われてみればそうかもしれないですね。Fukiが僕を初めて見てくれたのが渋谷の109の前でアニメタルをやってた時で、最前列におったんです。なんか信じられへんですね、GALNERYUSを知ってくれてるかもしれへんけど──と思ってて、でもそう言ってもらえることがあったとしたら凄い幸せなことですね。

広瀬:じゃぁそろそろ時間も迫ってきたので、今日増田さんはいないけどプレゼントタイムを。

土屋:今日は結構レアなプレゼントをドドドドッと用意しました。

SYU:こういうトークショーっておもろいですね。ギター持たんと現場に来るっていうのはほぼ初めてに近いんで、凄い新鮮というか。

広瀬:またやりましょうよ。また表紙になってください。

SYU:なれるように頑張ります。

当日のプレゼントは、レアなポスターやサイン入り表紙などガルネリ・グッズのオンパレードだったので、SYUと場内とのジャンケン大会で当選者が選ばれた。

広瀬:というわけで、今日はありがとうございました。

SYU:いい感じでしたね。

広瀬:ゲストがよければ増田さんいなくても大丈夫(笑)(場内大爆笑)。またの機会に是非来てください。

SYU:是非来させてください。ありがとうございました。

土屋:ありがとうございました。

広瀬:ありがとうございました。

『VORVADOS』SYU

1. VORVADOS
2. REASON
 Vocal:Fuki(from Fuki Commune)
3.ここで区切れと天使は歌う  
 Vocal:苑(From 摩天楼オペラ)
 Keyboards:YUHKI(From GALNERYUS/ALHAMBRA)
4.暁 
 Vocal:HARUKA (from TEARS OF TRAGEDY)
 Keyboards:YUHKI(From GALNERYUS/ALHAMBRA)
5. Euphoria 
 Vocal:団長(from NoGoD) / Guitar:Jacky Vincent(From CRY VENOM)
6. Chaotic Reality 
 Vocal:DOUGEN(from THOUSAND EYES) & AKANE LIV(LIV MOON)
7. CACOTOPIA 
 Vocal:SYU
8. AndroiDedication 
 Vocal:Fuki(from Fuki Commune)
9.哀傷 
 Vocal:小野正利(From GALNERYUS)
 Keyboards:YUHKI(From GALNERYUS/ALHAMBRA)
10.未完成の翼 
 Vocal:HARUKA(from TEARS OF TRAGEDY)
11. Blessing

 

『BURRN! JAPAN』関連書籍のご案内

  • BURRN! JAPAN Vol.13〈シンコー・ミュージック・ムック〉
    購入する
  • BURRN! JAPAN Vol.13〈シンコー・ミュージック・ムック〉

    A4判 / 160ページ / ¥ 1,320

    豪華ゲスト・ヴォーカリストを迎えた全曲書き下ろしのソロ・アルバムをリリースしたGALNERYUSのギタリストSYUの独占ロング・インタビューを大フィーチュア!
    撮り下ろしの最新フォト満載、Fukiをはじめとするヴォーカリスト達も直撃取材! さらに、デビュー15周年を迎えたGALNERYUSのメンバー全員の個別ロング・インタビューも併せて掲載する、全48ページに及ぶ大特集!!

    【CONTENTS】
    <EXCLUSIVE COVER STORY>
    SYU
    ★Fuki
    ★団長
    ★Akane Liv
    ★HARUKA

    GALNERYUS
    ★小野正利
    ★YUHKI
    ★TAKA
    ★FUMIYA

    <EXCLUSIVE INTERVIEWS>
    苑&響(摩天楼オペラ)
    Leda(DELUHI)
    紫煉(Unlucky Morpheus)
    MASAKI
    CHARGEEEEEE...
    BLACK SWEET
    THE BLUE SCREAM
    杉内 哲(SOLITUDE)
    鈴木政行(LOUDNESS)
    薫(DIR EN GREY)
    PAUL(44MAGNUM)
    浜田麻里

特集・イベントレポート