牛丸ありさ(Vo&Gt)、ごっきん(Ba&Cho)の2人からなる、日本語ガールズロックバンドyonige(よにげ)。結成10周年アニバーサリー・ブック「image of a girl」の出版記念トークイベントが、1月28日彼女たちの地元でもある枚方 蔦屋書店にて開催された。司会進行は鈴木淳史さん(ライター・インタビュアー・ABCラジオ『真夜中のカルチャーBOY』パーソナリティ)が担当。

yonigeを続ける原動力……そもそも止めるイメージがないんです。ずっとyonigeが未完成だからかな──


トーク開始はやはり地元枚方の話題から。イベントの開催地である枚方 蔦屋書店は牛丸さんが中学時代にBUMP OF CHICKEN、RADWINPS、銀杏BOYZなど数えきれないCDを買ったり借りた〈自転車25分漕いでメチャクチャ通っていた〉音楽拠点。ごっきんさんは枚方のキディランドや、子供の頃はひらパー(ひらかたパーク)にはよく来ていて、牛丸さんとは二十歳前後の頃、二人でひらパーのスケートリンクで滑ってプリクラ撮って帰ったとか。他にも枚方のショッピングモール ビブレ(現ビオルネ)、yonigeでよく入ってた激安リハスタstudio HEMP(ごっきん ベースを背負ってバイクで通う)、乗り倒していたので馴染みがあって懐かしい京阪電車の話題などが語られた。


本のイメージを決定づけた様々な出会い

鈴木:二人の結成10周年 アニバーサリー・ブックが出ました。いつくらいから本を作ろうというアイデアはあったんですか?

牛丸:だいたい去年の春くらいから、出版の話をいただいて面白そうだな、やってみようかな──と。

ごっきん:私は中盤までピンときてなくて。〈本?ってなんやろ、本はめっちゃくちゃ売れたバンドのボーカルが出すもん〉って感じだったから、バンドが10周年で出すというテンポがピンと来てなかった。作り上げていく中で実感は湧いてきたけど、最初は何を載せるんやろ、どこまで丸裸にされるんやろ──って。

鈴木:取材が始まってからの中盤?

ごっきん:表紙の打ち合わせをしてからグッとピンと来ました。表紙とかこっちもどういうテーマで…とか全然分からなかったのが、デザイナーの浮舌さんがマジサイコーで、ポンポンとアイデアをくれて、 “辞書の表紙みたいにしたくね? 銀ピカにしたくね? 帯をメッチャ付けたくね?”とか。それで、あ、本っていうけど、マジでなんでもしていいんや──と急に実感が湧いてきて楽しくなってきました。

牛丸:背表紙の反対側(小口)に色がついているのもこだわり。漫画雑誌の「ちゃお」とか「少年ジャンプ」とか色がいっぱいついているのを意識して。

ごっきん:帯が表紙みたいな感じにもなっていて可愛いですよね。もう浮舌さんにおんぶに抱っこに肩車で(笑)全部頼みまくって。

牛丸:私も全然アイデアがなくて。浮舌さんが現物の本をいっぱい持ってきてアイデアを出してくれたから、自分でも大切に持っていたくなるような本ができました。

鈴木:撮影はいつ頃から?

ごっきん:目次の後の写真から32ページまでのカラーページの写真をいちばん最初に撮って、そこから動き出したんです。それが8月くらい。

牛丸:本当に私たち何もイメージが湧かなかったけど、撮ってくれた茂木モニカがすごくアイデアを出してくれて、それを元に進めていきました。茂木モニカが私のはとこで、『girls like girls』(2017年)のジャケットも撮ってくれてて、それ以来の仕事ができました。

鈴木:一緒に仕事をする──というのは牛丸さんの方から?

牛丸:私の方から言いました、モニカがいいなって思って。何か絶妙なセクシーさや艶っぽさとか女の人にしか撮られへん写真っていう印象があって。それこそ、“宇宙人ぽいの撮ってみよか”とか面白いアイデアを出してくれたり、私にない感性が好きで。ヘアメイクもスタイリストも女性の方にお願いして。表紙とかに関しては全部女性だけで作り上げることができて、それも良かった。

鈴木:女性だけでやるっていうのは全然違うものですか?

牛丸:女の子だけの身内の感覚が楽しいし、空気感が違いますね

ごっきん:なんかすごいコンセプチュアルな感じになるんやろな──と思ってて、メッチャ面白かったです。3パターン(「CUTTING-EDGE HIPPIES」「NEW BOHEMIAN」「SWEET ASSASINS FROM OUTER SPACE」)とも全然雰囲気が違うから。ヘアメイクのArisaさんが特殊なメイクとかメッチャ頑張ってくれたから。

鈴木:結構時間かかってますよね。

牛丸:昼に始まって夜遅くまでかかりました。

写真に続く二人のインタビューページは、音楽雑誌「MUSICA」でもお世話になった古いつきあいの矢島さんが担当。“この人のyonige愛が異常だったので頼んだ”(牛丸)との人選。二人でのインタビューは5時間、個人インタビューは次の日を跨いで一人3時間。“メッチャ疲れました。10年分全部遡ったので重労働だった”(ごっきん)。しかも普段はリリースした作品についてのインタビューだが、今回は人間にフォーカスしたもの。 “買うてくれた人はこれを読んでライヴに来るから、今後これを分かられた上で自分のことを見られるんやと思うとドキドキします”(ごっきん)、“私はごっきんより自分のことを話す機会が多いので、今更はずかしいとかはないけど、ここで初めて言うことも含め、最新の自分の事情とかはメチャクチャ久々に話した。話してるうちに自分の気持ちや思いに新しい発見がありました”(牛丸)。という二人の本音満載のページとなった。


個人企画のページ「牛丸:ビーチクリーン体験」「ごっきん:断食道場体験」

鈴木:それぞれの個人企画のページはどうでしたか?

牛丸:最初、鹿の解体とか何かの解体をしたい──って言ったんですけど、本でやるには伝わりきらんかな──というのでビーチクリーンになりました。環境問題に興味があるというのはyonigeでここで初めて公言したので、ちょっと恐怖心みたいなものはあったけど。幼い頃からずっと関心があったことだから、やっと言えてよかった。

鈴木:5歳の頃の夢が「歌手とゴミ拾いのおばちゃん」。

牛丸:ゴミ拾いのおばちゃんになりたい──って公園のゴミを拾っていました。なんでかわからないんですけど、物心ついた時からゴミが許せないんです。バンドでも控え室でゴミがその辺に置かれていたらすぐにかき集めてゴミ箱に捨てていてます。

鈴木:大人になってから環境でそういうことに興味を持つというのはありますけど、5歳の頃の夢というのが──なんか自分の中で覚えてるきかっけとかあります?

牛丸:きっかけは覚えてないんですけど、“なんでゴミ箱があるのにゴミを地面に捨てるの? 許せない! “みたいな気持ちはあったと思います。

鈴木:それを公言するというのは自分の中でもどうでした?

牛丸:SNSとかでそれを前面に出し過ぎたら、ちょっと色物っぽく見られるし。

鈴木:そこの部分だけ切り取られて伝わる。

牛丸:環境問題だけじゃなく、政治や戦争のことをSNSで言ったら、〈あ、そういう人なんだ〉っていうカテゴリーになるのが嫌で。だから公言せずに自分のプライベートでそういうことはやっていればいいな──と、ずっと思っていました。

鈴木:SNSって情報発信できますけど、ちゃんと本で出すというのは、いいなと思いました。そして一方のごっきんはリフレッシュの森で「断食道場体験」。

ごっきん:ほんまは空飛びたかったんで、やりたいことを聞かれた時に、とりあえず何も考えんとスカイダイビングって答えたら、“すいません、命に関わる可能性があるんで無理です”って言われて。それで自分のこと追い込んでみようと思って断食をしますって言ったんです。前からうっすら興味はあったけど、誘惑が多いから絶対家ではできないって分かってたし、ただそれだけをするというのもピンとこなかったんで、じゃあこの際企画にしてもらって──と道場に自ら入門してきました。

鈴木:二泊三日の断食って相当じゃないですか。

ごっきん:皆さんもピンとこないと思いますけど、絶対食べれない環境に二泊三日で行くとなると、内臓全部が覚悟決まるんですよ。私ほんとに食べることが好きで飲むことも好きだし、だからメッチャしんどいと思ったんです。一日とか半日食べれないとボーっとするし、絶対イヤなことが起こると思ってたんです、でも結構全然平気でクソ元気で終わりました。体の中の覚悟が決まってたんですね。

鈴木:これは本を読んでもらったら分かるんですけど、同行の方が愉快な方ですね。

ごっきん:“私も行きたいです”っていう編集の女性の方と一緒だったんですけど、現地に行く前から蕎麦とかカレーを食べて来たりして。翌日、私は朝から抜いてたんで、“私、体重結構減ってました”って言ったら、“エーッ!すごい気合い入ってる!! 私体重増えてました”って。そんなこと言わんでええやん。

鈴木:こっちは内臓の覚悟まで。

ごっきん:決めてんねんで!!!!! それで終わったら終わったで施設の人から〈二泊三日でも動物性の物とかアルコールは一週間くらいかけて控えて〉と二人で説明を受けて帰ったのに、その人から“お酒飲んじゃったんですけど”ってメールが来た。


最後に場内からの質問に答える質疑応答が行われた

Q:本の中で一番お気に入りのショットは?

牛丸:12ページの奇跡的に生まれた写真(表紙にもつながるカット)。色々撮影した後、一番最後に撮った写真。最後、場所をどうしようかな──という時、その場の思いつきで車の中で撮りました。雨が降った後で水滴とかも入った。たまたま私がブレーキを踏んでたんで、ブレーキ・ランプが点いて赤っぽいライトが意図せずに入って、結果的に奇跡的にいい写真になった。
ごっきん:状況込みで122ページのカット。タコ公園(寝屋川の赤いタコ滑り台がある公園)で私らがぼやぼやの帽子を被ってる側の鉄棒で、子供達が逆上がりをして遊んでる写真。がっつり小学生が写ってて、これめちゃめちゃおもろくて、ガチガキが、うわ〜っと集まって撮影に入ってきた。こういうメイクをしてる大人の女性をあんまり見たことがないのか、“すっごくかわいいね”って言ってくれて一緒に撮影した。

Q:一番気に入ってるページは?

ごっきん:うちと牛丸の子供時代の写真が並んでる162ページ。マジ、ヨーロッパ代表の子供とアジア代表の子供の異文化交流みたいで、これメッチャ好き。

牛丸:自分のちっちゃい頃の作品とかが載ってる136/137ページ。おばあちゃんの家に私の昔の絵とかいろんなものを袋に入れて保管してあったのを、中身を確認せずに編集の人に渡したら、〈としょかしだしカード〉がピックアップされていたんですけど、メッチャ恐竜にハマってたのがわかる(ティラノサウルス図鑑他連続8冊貸し出し!)。今は恐竜はおもしろいなと思うけど深堀りはしてないです。(その隣に載ってる)「マキシマムザ亮君」の絵は高校の美術の時間に描きました。

Q:寝屋川の好きな場所はどこですか?

ごっきん:ごっきん:寝屋川の好きな場所???……まぁVINTAGE(ライヴハウス)かな、メッチャ通ってたし。飲食店とか結構潰れまくってる中でVINTAGEはぼちぼち40周年、潰れないでくれてありがたいです。

牛丸:私は129ページで食べてるVINTAGE近くのタコ焼き屋さんが好き。メッチャ美味しいタコ焼きというわけではないんですけど、知り合いのおっちゃんが焼いたタコ焼き──みたいな素朴な感じが好き。
ごっきん:撮影した時はいつものおじちゃんはおらんかった、聞いたら自由出勤になってるって(笑)。

Q:寝屋川六中で過ごした時のエピソードがあれば

ごっきん:私、吹奏楽部の思い出はメッチャいっぱいあって。本の個人インタビューにも載ってるんですけど、やりたい楽器が全然できなくて…それでもやり続けて。吹奏楽部かな──思い出は。なんか〈痴情のもつれ〉が併発?してて、吹奏楽部は男性が少なくて、先輩に三人、後輩に一人、同年輩はなし。メッチャイケメンではないんですけど、女の群れの中に入ると爆モテするんですよ、同級生が先輩を取り合って、それに巻き込まれて──。みたいなこともありました。

Q:yonigeを続ける原動力はなんですか?

牛丸:そもそも止めるイメージがないんです、私もごっきんも。そもそも止める理由がないというのが大前提で。“なんで止めへんのやろな”って考えた時に、ずっとyonigeが未完成だからかな──と思うんです。ここにいる人みんなが思ってることかもしれないですけど、yonigeは急にトリッキーなことし出すじゃないですか。メジャーデビューしたら突然売れなさそうな尖った曲を出したり、急に事務所辞めて自分らで会社を立てるとか、と思うと急にホリプロに入るとか、こう言う面白い本を出したり──なんかずっと変な動きをしてる。それって私が落ち着きたくないからというか、一ヶ所にとどまって安定して〈yonigeはこういうイメージだよね〉というのを一つ作ってそれに沿って活動していくのが、私は好きじゃなくて面白くないなと思うから、一個のイメージが確立したら次はそれを壊して違うイメージを作りたいって思うから、ずっと未完成だから。完成したら終わるかもしれないですけど、未完成のままずっとやり続けたいなって気持ちはあります。

ごっきん:ちょっと回答が秀逸すぎるな(笑)。──結構辛いことも沢山あって、でも、どんだけ辛いことがあっても、〈止める〉という単語は一回も頭をよぎらなかった。原動力というと牛丸みたいな回答はできないんですけど、たぶん二人が元気いっぱいなだけずっとやり続けるんやろな──という感じです。

Q:最後の質問です、最近での二人の仲良しエピソードを教えてください

ごっきん:二人で美容エステでHIFU(ハイフ:小顔施術)を受けに行きました(笑)。

牛丸:最新はそうですね。

鈴木:顔をちっちゃくして(笑)11年目12年目とyonigeは行くということで、時間いっぱいまで来ました、ありがとうございました。

ごっきん:ありがとうございました。

牛丸:ありがとうございました。

場内大拍手

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  • yonige image of a girl

    A5変型判 / 192ページ / ¥ 2,500

    【CONTENTS】
    気鋭のフォトグラファー、茂木モニカによる撮り下ろしグラビア
    紆余曲折の全てを語った10周年記念スペシャル・インタビュー
    二人のコメント付きディスコグラフィ
    牛丸ありさ&ごっきん、パーソナル・インタビュー
    寝屋川ルーツの旅
    チャレンジ企画「一度やってみたかったこと」
    年表&ヒストリー
    『牛丸日記』再掲
    牛丸&ごっきんによる直筆メッセージ

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