近藤淳子著「現役アナウンサーが教える あなたが輝く話し方入門」の発売記念イベント「フリーアナウンサーの楽屋女子トーク~ここだけの秘密の話」が、96日下北沢の本屋B&Bにて、著者の近藤淳子さんに、天明麻衣子さん久野知美さんを交え行われた。

アナウンサーをやってて良かったのは、この本を出版できたことです。本当に本を出すのが念願でしたから

近藤淳子(以下近藤):皆さん、こんばんは。今日はようこそ「フリーアナウンサーの楽屋女子トーク」にお越しくださいました(場内拍手)。

久野知美(以下久野):すごいですね、乗車率300%くらいの(笑)。

近藤:すごい人数で(笑)。はい、あらためまして、私は「現役アナウンサーが教える あなたが輝く話し方入門」を出版させていただきましたフリーアナウンサーの近藤淳子と申します、どうぞ皆さまよろしくお願いいいたします(場内大拍手)。

天明麻衣子(以下天明):昨年出たんですが、「時短勉強術」という本を書いております天明麻衣子です、皆さんよろしくお願いいいたします(場内大拍手)。

久野:「鉄道とファン大研究読本」と「女子鉄アナウンサー久野知美のかわいい鉄道」を出版させていただいております、鉄道好きの久野知美です。よろしくお願いいたします。(場内大拍手)

近藤:今日はこの3人で、女子トークというか楽屋トークを展開していこうと思っているのですが、まず「現役アナウンサーが教える あなたが輝く話し方入門」がどういう本なのか、少しお話しさせてください。私、小学校の頃からアナウンサーになりたかったんですが、当時から吃音があったり訛っていて──それが大学生の時に転機を迎えたんです。ちょっとした発声練習を身に付けただけで、言えなかった言葉が正確に言えるようになった──そういうささやかな成果を感じたんです。そうやって達成するとまた他の言葉を練習したくなって、少しずつ話し方が改善されていって局のアナウンサーに内定することができました。ただ内定しても、中継でセリフを忘れちゃたり、ニュースの漢字を読み間違えたり、そういう失敗で落ち込む日々があって。ただ、自分ができない……ということに向き合うと、どうすれば話し方が上手くなるのか、素敵な先輩のアナウンサーのように話せるようになるのか、研究しますよね。

久野:そうですね、先輩のビデオとかめちゃくちゃ見ます。新人の頃は落ち込むことが淳子さんにもあったんですね。

近藤:ありました。そして、アナウンサーの現場でお会いするアーティストや歌手、文化人のゲストの方の魅力的な話し方には何か秘訣があるな──とも感じたんです。そういったこれまで体験したことや感じてきたことを、一冊にまとめさせていただいたのがこの本です。第1章から第4章まであって、1章では〈体を使って話し方を鍛える〉ということで、普段の生活の中でできるレッスン方法をご紹介しています。第2章は〈実践編〉で、食事とかの実況レポートをしてみよう! これはアナウンサー志望者だけではなく学生や社会人の方も、ちょっとしたコツを得ることで普段の話し方に劇的な変化が起こる──かもしれないというものです(笑)。第3章は〈コミュニケーション〉。話し方って実はコミュニケーションが大事ですよね。

天明:ただいい声で喋ればいいってものではないですからね。

近藤:私たちがお話をして、聞いてくださる皆さんがいて──というコミュニケーションがあってできるものですから。それで第4章は〈話し方に慣れてきたら、気をつけていただきたいポイント〉をまとめました。

 QRコードが記載されていますので、スマホをかざしていただくと私のレッスン用音声を聞くことができます。この本は学生の方も社会人の方もどんな職業の方も、話し方をちょっと知るだけでも、気持ちが前向きになったり、ちょっと勇気が出る──そういう気持ちになっていただきたいなと思って書かせていただきました。

天明:私も読ませていただいて、同じアナウンサーとしても勉強になるなと思いました。

久野:私も。

近藤:それ、すごくうれしいです。

天明:私は〈母音を意識する発声法(母音だけで発声してみるレッスン法)〉というのをやっていたので、そういう感じの話し方から、実際の会話の時に相手の方に良い印象を持ってもらうとかはバランスよく伝えられそうな感じがします。

久野:発声の基本から、それこそ淳子さんの失敗談も包み隠さず書かれていて。私が最初アナウンス室に入った時に教えてくださったのが淳子さんで、その頃のことを思い出しながら読んでいて励まされました。淳子さんの体験談とかもあって、後輩としてはレッスンを直々にしてもらってるみたいでした。QRコードで音声も聞いたんですけど、声がいい!

近藤:うれしいです。この本はマン・ツー・マンでのレクチャーを思って書いたので。

久野:私、〈淳子さん好き〉なので、発声のページにある淳子さんの写真、例えば複式呼吸の時の写真とか好きなんです(笑)。姿勢が美しいし一児の“お子さん”とは思えないスタイルの良さも(場内大爆笑)──あ、あ。一児のママとは思えない──こういうのをやるからダメなんです!(笑)。

近藤:今日はせっかく2人のスペシャル・ゲストが来てくださっているので、私の本の話だけじゃなく、この3名で雑談的なトークをしていこうと思います。

 

ここで〈質問箱〉が登場、この中のカードを引いて、そこに書かれているテーマでのトークとなった。

 

天明久野:ではまず最初は〈収録の裏事情〉。

近藤:色々ありますけど──。

天明:収録って、その前段階、例えば個人アンケートを書くくらいのところから戦いは始まっていて。

久野:自分との戦いもあるし、スタッフに伝えるべきプレゼン事項もあるし。

天明:収録の場ではだいたい決着がついちゃってるというか、目に止まるようなエピソードをアンケートに書かないと全然話を振ってもらえなかったり、この人とこの人を絡ませたら面白そう──っていうフックがあると本番でも話を振ってもらえたり。だから本番前の段階で決まってる部分って大きいのかなって。

久野:たしかに、打ち合わせをして台本に落とし込んだところから生きていくから、その場ですごい盛り上がった部分でもカットされちゃったり、ディレクターさんの方針にもよると思うんです。

久野:けっこう段取りが決まってることも多いし──カットされるのは自分がスベってるか、どっちかなんですけど(笑)。アンケートはめっちゃ書きますね、私、長いって有名なんですけど、淳子さんはどうですか?

近藤:収録の時にアンケートを書くっていうのは、私はあまりないかな。バラエティ番組がお二人は多いからかもしれませんね。打ち合わせはしますけど。

久野:打ち合わせはしっかりします。

近藤:たまにトークショーとかで打ち合わせをしない人っていらっしゃいません? 打ち合わせなしで、雰囲気で行こう──って。

天明:エピソードを1回聞いちゃうと、2回目の時にリアクションが薄くなっちゃうって人とかいるから。

久野:私がやっている鉄道イベントはいつもそうですよ。ゲストの方が同じ場合、同じエピソードで笑わせる自信はないんです、来ていただく方もかぶりますから。だからそういうエピソードは敢えてとっておきます。

天明:それはありますね。

久野:ここまでは話すエピソードと、取っておくエピソード。

近藤:どこまで言うかはね。で、収録の話ですごくビックリしたことってあります? 私は、以前SMAPさんの「ドラゴンクエスト10」のコマーシャルで、中継キャスターのアナウンサー役をやらせていただいたんですけど、15秒と30秒の2タイプでリハーサルだけで丸2日間! 朝から晩まで缶詰めだったんですよ。SMAPさんは参加されないんです、5人それぞれの影武者の方がいらして、セリフや立ち位置、動きのリハーサルを入念にやって。私それにビックリしたんです。

天明:じゃあ、その5人でやればいいじゃん(笑)。

近藤:いやいやいや(笑)。でも、本番になると本物のSMAPが現れて、リハーサルは1回くらいで、一発OKの完璧な動きやセリフを決めるんですよ。そういうのを見ると、アナウンサーとして貴重な仕事をありがたいなと。

久野:皆さんが思われる5倍くらいの時間を使って制作されてますよね。

天明:ドラマとかもそうですよね、ちょっとのところも何時間もかけて。

久野:待ち時間も仕事ですからね。呼ばれた時にはもう完璧な状況にしなければいけないから、待ち時間に近鉄の特急のこととか考えてて突然声がかかると慌てるので(笑)、その辺りの塩梅は考えるようになりました。

天明:以前、藤原竜也さんとドラマをやらせていただいた時に、本番直前まで野球の話とか全然違う話をしてるのに、本番になると一瞬にしてお芝居に戻るんです。

久野:バラエティ・タレントさんもすごいけど、俳優さんのそのスイッチのオン/オフは数段上をいかれる感じですよね。

近藤:あるドラマで、柴田恭兵さんが殺される役のシーンを待ち時間に見学させていただいたんですけど、刺される時の呻き声とか毎回違うんです。私たちがやる場合は、「こちら現場から中継します、何時何分誰々が殺害されました〜」と、そこにあまり演技を入れることはないじゃないですか。だから周りの俳優さんとかを観察するのは楽しいです。

久野:参考になります。

 

近藤:では、次のトーク・テーマを。

天明久野:あら、これって早くないですか? 〈アナウンサーの恋愛事情〉(笑)。

久野:鉄道が恋人って言われてます(笑)。

近藤:本当にそうですよね。

久野:あははははは(場内大爆笑)。

近藤:私、出身が愛媛県の宇和島で土讃線の終着駅なんですけど、久野さんと、メールで“最近どうしてる。元気?”とか生存確認していた時に、“せんぱ〜い! 今、宇和島にいま〜す”ってメールが返ってきたので、“お仕事、お疲れ様!”って返したら、“プライベートで〜す”って。

久野:しかもそれ、今年の722日のことなんです。前日21日が誕生日。

天明:あら〜〜。

久野:マネージャーの南田さん(「鉄道とファン大研究読本」共著者)がその日に仕事を入れてたんです(笑)。で、四国ではバースデイ切符というのがあって、誕生月の連続3日JR四国全線が乗り降り自由なんです。仕事の翌日は空いてたので、じゃこのタイミングで行くしかない……と宇和島に着いたら、あ、淳子さんはここで育ったんだ──って淳子さんの顔が降りてきて。ところが、私が乗りたい「しまんトロッコ号」っていうトロッコ列車の接続の時間を考えると、あと4分しかなくて……。でも宇和島に行ったってことを伝えたいから、駅の写真をバチバチ撮って淳子さんに送りつけた──というのが今の経緯です。だから、誕生日の次の日は恋人(電車)と過ごしました(笑)。

近藤:分かりました(笑)、でも、久野さんファンがたくさん来てらっしゃるから、タイプの男性ぐらい言ってもいいんじゃないですか。

久野:タイプの男性、募集中なんですけど。まずお二人の成功例を聞きたいです。皆さんご存知かと思いますけど、お二人とも幸せなご結婚をされていて、淳子さんは一児の子供じゃなくて母で(笑)、天明さんは、「Qさま!!」でも旦那さんがアンケートで答えてらして。

天明:余計なこと書いたり(笑)。

久野:(笑)ご結婚されて5年。

天明5年くらいですね。

久野:どんな方なんですか?

天明:アナウンサーの方って、野球選手と……とかよく言われますけど、私はそういうのは全然なくって、NHK仙台にいた時は同業他社の方と集まったりつるんだり、マスコミ業界の中ってことが多かったんです。結局みんな単身で来ていて、そこにずっといるかどうかというのは分からなくて。マスコミだと東京へ帰っちゃうことも多かったですけど、その中で付き合ってる人もいましたね。

久野:今の話を聞きながら、アナウンサーの人は先のことも考えて人を選んでるんだなっていうことがよく分かりました。

天明:地方は特に。

久野:なるほど。淳子さんはどうでした?

近藤:局のアナウンサーをやって上京してきた時に、日本語教師の資格を取りたくて、銀座の「ヒューマン・アカデミー」っていう専門学校に通ったんです。そこに彼も来ていて、その時267歳だったんですけど、消しゴムを貸しあったり、授業のノートをコピーしあったり、そういうやりとりがすごく新鮮で。

天明:出会いに行ったといっても、顔とかそういうことじゃなくて、その講座を受けに行ったというのが先にあったと。

近藤:(うまく行ったのは)目的が一緒だからっていうのがあるかもしれない。でも、そう考えれば久野さんは〈鉄道〉という皆々様と同じ夢があるじゃないですか。

久野:そうなんですよ、列車に乗った時に電車に乗った王子様が現れるのを期待してるんですけど、本当に一向に現れないんです。で、この前自分の名前で検索したら、〈久野知美アナウンサーは鉄道が好き過ぎて、彼氏がいなくて結婚もまだ〉というまとめサイトができてて(場内爆笑)。すごい合ってるけど(笑)。

天明:南田さん(マネージャー)は?

久野:南田さん? いらないよ! いらない!

近藤:どうなのか聞きたくなりますよね、年齢的にもちょうどいいし。

久野:いらない! ちょうどよくないし! 考えたこともない。鉄道趣味も相入れない場合があるんですよ。

近藤天明:あ〜〜あぁ。

久野:鉄道趣味で喧嘩して別れた例もあるし、南田さんを男子として見たことがないですよ、残念ながら。なんだろう〈嵐を呼ぶ45歳児〉みたいな、だから電車と同じ並び。「しまんトロッコ」「キハ32」「南田」みたいな。でも尊敬はしてるので──父さんみたいな感じかな。

 

近藤:じゃあ、そろそろ次のトークテーマに。

天明久野:〈アナウンサーなのにこんなことまでやります!?〉

久野:こんなのまで──ありますか?

天明:これは局アナの方がありますよね、多分。

近藤:はい、もう何でも、体力系のことから歌まで。

天明:私はどっちかというと編集とか裏方の方ですね。仙台は基幹局なのでそういう手はわりと足りてて、テレビも映像の編集とかしなくてよかったんですけど、秋田とか青森とかになると自分でカメラを回して、自分で編集したりとか。

近藤:そうなるとジャーナリストですね。

天明:本当に、記者兼〜みたいな。

近藤:そこで鍛えられませんか。

天明:そう、自分の力量はつくと思う。

近藤:私の場合は地方で、北陸放送ではそれはなかったんです。ただ、修験者と混じって滝行とか体は使ったし、忍者とかのコスプレもやったし、シノラー、篠原ともえさんの格好をしてあのテンションで歌番組の司会をするとか。

天明:けっこうスゴいですね。

近藤:だから何でもやらせていただきました。田んぼに入ったりお風呂に入ったり。湯船に浸かっても、もちろんタオルは1枚巻いてますけど水着なしで。

久野:え! なんで?

近藤:でしょう? 北陸って温泉がたくさんあるから普通にみんな脱いで入ってました。ただ、もちろん一枚羽織ってますよ、10数年前なので。

久野:ええ〜〜〜。今は基本は水着を着て温泉に入りますよね。え〜と、ある男性タレントさんで、“もういいよ、履かない”って人もいるって聞きましたけど。でも、事故とか起きたら大変。

近藤:生中継じゃなければ、録画ならいいのかしら(笑)。

久野:年に1回くらいありませんでした? 全国のアナウンサーが集まっての「ハプニング大賞」とか。局アナ経験がないので、そういう話を伺うのは新鮮です。

近藤:収録が終わった後の飲み会が凄かった。

天明:私、そういうの出てないんです。東京へは普通に中継の仕事で行っていて。

久野NHKと民放でも違うんですよね。

天明NHKは地方の局が番組を持ってきてプレゼンする──真面目ですね(笑)。私の知る限りNHKがリハーサルが一番厳しいです。テレビとか本番とまったく同じに丸々やって、それを直しながらやって、またもう一回やって。1日に同じことこんなにやる?っていうくらい。普通のようにコーナー毎かと思うと、頭から全部やって。

久野:今、私、テレビ東京の「なないろ日和」という薬丸裕英さんと香坂みゆきさんの朝の番組なども担当していて、番組リハーサルをやるんですが、“リハの時にやったことをもう一度やっても、薬丸さんが面白くないだろうな……“ってネタは絶対後に取っておくんです。で、投げられたボールを想定以上に返せた場合の薬丸さんのリアクションも分かってきたので、リハーサルではペースに合わせて結構かいつまんでやります。

天明:ベテランの方、信頼できるタレントの方だとできますよね。でも、一般の方が入ってやると、おじいちゃんなんか、“さっきも言ったんだけど──“って言っちゃうんですよ。気持ちはすごい分かるんですけど、リハーサルがあったんだな──って、なっちゃう。

久野:北陸放送はどうだったんですか、淳子さん?

近藤:番組にもよりますけど、バラエティ番組だったらしっかりリハーサルはあります。報道とかはもちろんないですし。

久野:淳子さんが直接ご指名を受けて宮崎さんと一緒にやられてた硬派な番組があったじゃないですか。

近藤:凄い、そこまで覚えてる(笑)。

久野:私、淳子さんファンですから。アナウンサーは直接指名を受けてその信頼関係でお仕事をする場合も多くて、淳子さんが次々色んなお仕事、例えば日本酒のお仕事とかご自身でゲットされてるのを見て、私自身それを追いかけてるところもあります。

近藤CS放送朝日ニュースターの宮崎哲弥のトーキング・ヘッズ」という、作家、政治家……色んな文化人の方を迎えてインタビューをする1時間の番組。それはリハーサルは一切なしです、ぶっつけ本番で。収録は1時間生放送と同じように撮る、間違えたらそれが流れるという番組。その方が緊張はするけれどもいい集中はあるんですよ。

久野:それは番組の司会者の方の。

近藤:そうですね、宮崎さんのご意向もあると思います。

久野:番組とか、局で違いますね。

 

近藤:では、そろそろ次のテーマに。

天明久野:〈アナウンサーの緊張対策〉

天明:でも、緊張しないように──と思う方が緊張しますよね。

久野:緊張して当然だと思うっていうのも大事かも。

天明:緊張しないようにしてるのを見てる自分。

久野:一つ上で見てる自分がいますよね。

近藤:自分のキャパより大きいステージとかだと、やってることあります?

久野:「Qさま!!」とかで緊張する場面の多い天明さんに聞きたい。

天明:緊張してるのかなぁ。何かに集中してるのかな……問題を考えたり、こういうリアクションをとろうとか、やるべきことに集中してると、あまり……。

久野:気が散ってると。

天明:逆に緊張するのかもしれない。

久野:集中してると緊張しないかも。

天明:反対に、あまり準備しすぎると──っていうのもあるし。

久野:あ、わかる。

天明:難しいですね、どれだけ準備をするのかって。

近藤:でも、準備しないとダメじゃないですか。準備をしておいて、本番はそれを忘れてゼロで波に乗る──みたいな。

天明:あとは慣れかな。

久野:現場が続いてた方が調子よくありませんか?

近藤:テンションが高まってるっていうのがあるかも。

久野:アドレナリンが出続けてるっていうか──長期休みをとった後のスタジオは緊張しました。オフになってる自分からオンに戻るのが。

天明:なんか、自分がアウェイだと感じると緊張しますよね。自分のホームだと思えるところが1ヶ所でもあればあまり緊張しない。

久野:それは人でもありますか?

天明:同じホリプロの方と同じ現場になったりとか、いつもご一緒してる方が現場にいらしたら安心するし、同じセットに入ると安心して。

近藤:そう、セットって大きいですね、環境は。私、今日のこの会場で最初にしたのは、客席の一番後ろからステージを俯瞰で見て、3人でワイワイ話してる様子をちょっとイメージしてみたんです、そうすると随分気持ちが楽になって。だからスタジオが同じだと、事前のイメージができていて気持ちが楽になるんですね。

天明:特にフリーでやっている私たちみたいなアナウンサーにとってそれは大事ですね、基本私たちフリーの仕事って常にアウェイだと思っていて、なかなか自分のホームグラウンドが作れない仕事ではあるので、ちょっとでもそういうような気持ちを感じられるように、ちょっと早く入って準備するなり人間関係を作るのは大事かなって思います。

近藤:あとね、青春時代に聞いていた曲って思い浮かびます? 人間って自分が思春期に聞いていた曲を聞くと感情が豊かになってリラックス状態になるんですって。だから大事なお仕事がある日の朝、そういう曲を聞いて来るとかって工夫するといいかもしれない。

久野:直前に音楽を聞くのは私もやります。お気に入りの音楽を聞くと自分の空間に戻れるから集中できて。これからは思春期の頃の曲も取り入れますね。最初に買ったのはB’zの「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」でした。

 

近藤:それでは次のテーマ

天明久野:〈やってしまった失敗談〉

久野:これは失敗とかなさそうな天明さんに、私は聞きたい。

天明:結構地味にやってます──ラジオで1分早く終わってしまったこととか。

久野:痺れますね。

天明:終わろうとしたら、ディレクターからイヤーモニターに“あと1分あるよ”って声が入って。言うべきことを全部言い終わってからの1分って、結構辛くて。

近藤:どうやってリカバーしたんですか?

天明:何か言わないと放送事故になってしまうし、ちょうど台風が近づいていたので、ベランダの物は片付ける──とかの注意事項をつないでなんとか(笑)。あ、あと、誰かに迷惑をかける……というより、私、笑い上戸なんですよ。

久野:え、笑っちゃうの、めちゃめちゃ親近感。

天明:どうでもいいことなんですけどニュースの原稿で、国会で審議が夜中まで続いちゃう時ってあるじゃないですか。その時「夜の本会議で」とかって原稿にあると、え? 夜の本会議ってどういう意味?って(場内爆笑)。

近藤久野:(爆笑)

久野:マジか! 天明さん面白いな。

天明:夜、みんなが集まって朝方まで何かやってる──って想像で、すごい笑いそうになって、それをこらえようこらえようとしてる自分がさらに面白くなって。

近藤:でも、大変ですよね、本番で笑うと止められないでしょ。

天明:私、1回ラジオで原稿を読みながら爆笑しちゃったことがあります。NHK仙台の時、地元のキャラクターの鳥の被り物をする方、手を振る時っていつもパーの形なんですよ。そこで、“じゃんけんはパーしか出せないので苦手です”っていうニュースの原稿がどうしても面白くて。何人かいる中で読んでたんですけど、私は頑張って読んでるのに、他の人が笑いをこらえようとしてるのがすごく耳に入って、もうダメって爆笑しちゃったんです。

久野NHKニュースで?

近藤:今後も気をつけていきたい──でも、気をつけようがないのか、ツボに入っちゃたら。

天明:でも瞬間的に、昨日あった辛いことを思い出したり。そうすると、シュッと真顔に返る。

久野:え〜、でもそれって辛くないですか? 1回自分にグサッと刺してるようなもので、あれ? 天明さんさっきまでテンション高かったのにどうしたんだろうって。

天明:しゅん……となる。

久野:笑いそうになったのは私もありますよ、ついさっき。今日、実は3本連続の現場をマネージャーが入れるという暴挙に出まして(笑)、最初が、ある方のインタビューで、真ん中に真面目な医療系のセミナーの司会があって、最後がこのトークなんですけど、その真ん中の硬派なステージのオープニングで真面目に原稿を読んでる最中、大学の中なのに私の周りをハエが勢いよく飛び始めて、“なんでこのタイミングやねん”ってぐらいにまとわりつくんです。でも、笑いを堪えながらちゃんと読みましたけど、見てる記者の方とかも笑いそうになってる。そっちを見たら負けだから絶対見ないようにして、原稿に集中して乗り切りました。

天明:私のことじゃないんですけど、上司の方が老眼鏡を頭の方に上げたまま原稿をチェックしてたら気付かないうちに本番が始まってしまって。その人が、このまま話し続けようか、メガネを戻そうか迷ってるのがおかしくて。

近藤:あと、ロケに行くとピン・マイクって小さいマイクを胸元につけて、それに繋がってる送信機を後ろのポケットに入れたりするんですけど、そのマイクは自分でオン/オフをするんです。オンにすると音声さんはじめ色んな方に音が筒抜け。私、本番撮影中にどうしてもお手洗いに行きたくなって行ったんです。で、収録が無事に終わってアナウンス室に戻ると先輩のアナウンサーの方が、“ピン・マイクをつけたらスイッチをオフにしておかないと全ての音が聞こえるんだよ”って言われて──。あ〜、やっちゃったって(笑)。でも、そういうのって初めは知らなくないですか? 誰かに教えてもらったりしないと。

天明:ピン・マイクに付ける風防とかうっかり失くしちゃうと、あれって意外と高いんですよね。

久野:凄く怒られます。

近藤:田んぼの中とかのロケでピン・マイクを付けると、私よりもマイクが心配されるんですよ(笑)。

久野:そうそう、〈マイク付けたまま帰っちゃった事件〉とかありますよ(笑)。収録の後、電車に何駅か乗って座ってから気付いて、慌ててスタッフさんに連絡して即トンボ帰り。

近藤:あれって、久野さんより音声のADさんが叱られたりする。

久野:そうなんです、スタッフさんが叱責されないように急いで戻りました。

 

近藤:みなさん色々ありますね(笑)。ほんと、たわいないお話になってしまい、お付き合いいただきましたがお楽しみいただけましたでしょうか。この後、サイン会、撮影会と続いていきますが、その前に皆様からの質問をお受けしますので、我こそはという方は手を挙げていただけますか?

 

Q1:みなさんはホリプロに入るにあたって上京されたということですが、東京に対する憧れとか、上京の決め手となったのは何ですか?

天明:私は横浜生まれ東京育ちで就職の時に仙台に行ったんですけど、もともとの生活のベースは東京にあって、いつかは戻ってきたいなと思っていました。それで向こうにあまり長居をするつもりはなかったので、敢えて1年契約のNHKのキャスターを志望して、第二新卒の募集タイミングで東京に帰ってきました。フリー・アナウンサーになるという夢は捨てて戻ってきたということになるので、お二人のお話を聞きたいです。

近藤:私は、アナウンサーを諦めて他の仕事ができるという自信が全くなくて、放送局のアナウンサー職しか受けてないんです。自分でも不器用すぎて嫌になるんですけど、好きなんですね。最初金沢でご縁をいただいて、6年間局のアナウンサーとして働くんですが、高校球児が甲子園に憧れるように、漠然とした憧れ、何がしたい……というわけではないんですが、東京志向がありました。ですから「38時間テレビ」とか「全国女子アナ〜」みたいな形で東京に行くのが楽しくて、打ち上げもなかなか激しかったし(笑)。東京はまさに、〈THE キー局〉っていう感じで、ほんと憧れでした。

久野:私は、東京も含め色々な局を受けたんですが最終選考で落ちたんですね、そういう人間が東京でゼロからフリー・アナウンサーでできるはずがないと思ったので、大阪に拠点を置くことにして2年。そこで関西テレビのオーディションで番組に拾ってもらったことから状況が変わりました。上京したきっかけは、その頃ウェブもBSCSもなかったんですけど、これからそういったものが広がっていく──というのをちょっと勉強して知っていたので、その可能性を感じて。あと、大阪では吉本さんと松竹さんが強かったので、“どっちかに入らなあかんのかな……でもなんか違うな”と思っていた時にホリプロとご縁があって。

Q2:アナウンサーという仕事をして良かったことと、嫌だったことを教えてください。

近藤:良かったのは、この本を出版できたことです。本当に本を出すのが念願で、尊敬する女性にそのことを話していたら、具体的に編集の方と出版社の担当の方を紹介してくださったんです。そこから企画書を書いて、本が出来上がっていくんですが、良かったことは、今、本当に今です。嫌だったこと……アナウンサーを辞めようと思ったことはないです、辛いことは色々あったけど、でも夢が叶うと全部帳消しになるんですよね。今があればそれでいいです。

天明:例えば企業の社長さんとか、政治家の方とか、普通ならなかなか会えない、段階を踏まないと会えないような方にポンと会って、対等ではないですけど話ができる──というのはいいですね。インタビューでお会いして学ぶことが多いのも特権で、やっていて良かったなと思います。いいことも悪いこともダイレクトに自分に返ってくる、会社とかそういうブランドがないのでダイレクトに頑張りにも返ってくるし、駄目だったらそれも返ってくるけれど、だからこそ頑張れるなというのはあります。

久野:〈好きな ひと、モノ、コトにスポットライトを当てたい。自分はその中で一番近い脇役でありたい〉と思ったのが、私がアナウンサーを始めたきっかけなんです。その中で〈好きな ひと、モノ、コト〉が全部詰まった〈鉄道〉に、今、携われていることは本当に幸せで、毎日のお仕事が体力的にキツくても耐えられるというのはやっぱり好きだからで、〈好きこそものの上手なれ〉を活かしてくれる会社で良かったなと思ってます。アナウンサーをやってて困ったな──というのは、鉄道と仕事が楽しすぎて婚期を逃している──これ一つですね(笑)。

 

近藤:あっと言う間に時間が過ぎてしまいました、では、最後にそれぞれ一言ずつお願いします。

久野:テレビ東京の「なないろ日和」、夕方の「よじごじDays」、FM NACK-5「スキテツのGRAND NACK RAILROAD」にレギュラーで出ています。このあと番組も増えたり色々とイベントもあるので、SNSをチェックしていただければと思います。今日は、ご乗車いただきましてまことにありがとうございました(場内大拍手)。

天明:久野さんと近藤さんのお話を聞いてて、私もまた本を書こうかな──と考えているところなので、また事績を残せるように……。あと経済番組とかクイズ番組とか、これからインスタとかでも告知していきますのでみなさん見てください、今日は本当にありがとうございました(場内大拍手)。

近藤:今日はこんな優秀なお二人がゲストに来てくださって、出版記念のイベントに来てくださるだけで本当にうれしく、ありがとうございました。お二人の方が早く本を出版なさっていて、私はすべて初めてなので色々教えてもらってるんです。やっぱりすごく努力されてるんですよね、聞けば聞くほど。年齢はお二人とも年下なんですけど、本の出版に関しても放送に関してもそれぞれのプロの視点をしっかり持ってらして、本当に今回、またまた勉強になりました。まずは1冊目を発売させていただいたので、なんとか皆様のお役に立てるように頑張っていきたいと思います。今日は、こんなにたくさん集まってくださって、本当にありがとうございました(場内大拍手)。

このあと、サイン会、写真撮影会が行われた。

 

 

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    四六判 / 232ページ / ¥ 1,650

    方言なまりにあがり症、吃音もあった私がアナウンサーに!
    そんな著者だからこその、誰にでも出来る話し方向上の秘訣!

    かつては夢に過ぎなかったアナウンサーへの道を自ら切り開いてきた著者だからこそ語れる、「話し方」「発声」に関するノウハウや考え方、スタンスなどを丸ごとお伝えする一冊。まずは自分の声の質を知ってから、それをどのように一歩一歩伸ばしていくかがわかりやすくリアルに書かれている。著名人との仕事の現場で実際に触れて感じた、著名人ならではの話し方のポイントも盛り込み、すぐにでも取り入れたい要素が満載である。

    【CONTENTS】
     第1章 声を磨く
    Step1 声を美しく出す
    まずは自分の「声質」を知ろう
    話し方の基本は「腹式呼吸」
    1日1分の腹式呼吸レッスン法

    Step2 発音を聞き取りやすく
    美しい発音のためのアイウエオ体操
    母音を意識したレッスン
    言葉の粒にメリハリをつけるレッスン

    Step3 滑舌力アップで伝わる声に
    あなたの「滑舌力」は?
    舌を鍛えるレッスン

    さらにStep Up 魅力ある声に
    声を磨く五十音レッスン
    表現の幅を広げるイントネーション
    音の高低の幅を広げると、表情が豊かに
    助詞や語尾まで意識して丁寧に
    口調を工夫してエンターテイナーに
    意識的に「間」を取るレッスン
    「間」の奥深さ
    コラム 印象が悪いと聴き手の注意が散漫に
     
    第2章 伝える力を磨く
    Step1 実践のための基礎レッスン
    目の前のものを実況中継してみる
    食事レポートをしてみる
    好きな声のアナウンサーを真似してみる
    スピーチを1分にまとめる
    コメントは5秒を意識する
    スマートフォンで動画撮影してリハーサル

    Step2 実力アップのレッスン
    映像が浮かぶように五感を使って話そう
    印象が異なる言葉の組み合わせを工夫する
    ジェスチャーを効果的に
    一対一のときの目線の配り方
    大きな会場での目線の配り方

    Step3 実践でスキルアップ
    スピーチの4つのポイント
    一対一で自己紹介をする
    プレゼンテーションの7つのポイント
    大勢の前で自己PRする3つのポイント
    カジュアルなイベント司会
    フォーマルなイベント司会(準備編)
    フォーマルなイベント司会(本番編)
    コラム 緊張しない5つの方法
     
    第3章 コミュニケーション力を磨く
    Step1 相手を大切に思うことが第一歩
    初対面の相手には、まず先に挨拶を
    相手の名前を何度も呼びかける
    話し上手は聴き上手〜傾聴力の鍛え方
    大きな会場でも役立つ傾聴力
    同じ動作で親近感をもってもらう
    相手が話したいことを聴く
    相手が前向きになる言葉を意識しよう
    言葉を選ぶと幸福度が上がる
    相手の話を要約して繰り返す

    Step2 プロに学ぶコミュニケーション力
    パンツェッタ・ジローラモさんの褒め上手の秘策
    一言も話さずに信頼を得る
    六代目三遊亭円楽さんの120%の準備
    失敗してもゆっくり堂々と
    松任谷由実さんの「おかげ」
    中田英寿さんのトークセンス
    ベテランカメラマンの天の声
    福留功男アナウンサーの包容力と傾聴力
     
    第4章 話すことに慣れてきたら要注意
    話が長くないですか?
    一文が長くないですか?
    難しい言葉を使っていませんか?
    口癖で損をしていませんか?
    口元がにやにやしていませんか?
    無駄に動き回っていませんか?

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