4月17日、3markets[ ] 「FINAL HOME PARTY」が渋谷TSUTAYA O-WESTで開催され、さらにオールナイトのアフターパーティ[反省会]が吉祥寺のプラネットKで行われた。その中で、3markets[ ] CDジャケットならびに書籍「売れないバンドマン」のカバーを描き、さらに4コマを寄稿した、『さよならバイバイ、大好きだったよ。』が話題の人気クリエイター、世紀末さんを交えたカザマタカフミとのトークイベントが実現!司会は編集の美馬さんが担当。

「売れないバンドマン」を語る カザマタカフミ×世紀末@アフターパーティ[反省会]

── 「売れないバンドマン」のイラスト及びマンガを描いていただきました世紀末さんです、よろしくお願いします。

世紀末:よろしくお願いします。

── 今日は広島から来てくださってありがとうございます。カザマくんと会うのは?

世紀末:3回目くらいです

カザマ:3回目ですね、

──その内1回は一緒に飲みましたね。

カザマ:『魚民』で飲みましたね。

──ということで、お二人の関係を紐解いていきたいのですが、そもそもの出会いはツィッターだそうで。どちらからアプローチしたんですか? カザマくんが世紀末さんに?

世紀末:いや、私からですね。YouTubeでよくバンドの動画再生をしてて、気に入ったのがあったら<お気に入り>に入れてたんですね。そこでスリマ(3markets[ ])の「セブンスター」が流れてきて、私、サビで聞き入って泣いちゃったんです。それでツィッターにバカみたいな文章で<マジ共感>みたいなことをつぶやいたら、カザマさんの彼女が見つけてくださって。

カザマ:世紀末さんが、<しゃかいのごみ>っていう前のアカウント名で自伝(?)というか自分のことを描いてたのがメチャメチャ面白くて。

世紀末:絵日記をずっと描いてました。

カザマ:それを彼女が、「これ面白いよ」って。

世紀末:多分スリマでエゴサをして見つけたんだと。

カザマ:あいつが?スリマでエゴサをしてた?気持ちワル(笑)。

世紀末:じゃないと──でも、多分そうだと勝手に思ってます。

カザマ:そうなんだ…コワいっすね〜。

世紀末:ありがたい。

──それがきっかけで交流するようになって。で、カザマくんがスリマのアルバムのアートワークをお願いすることになるんですよね。

カザマ:いやぁ、あれは本当に怖かったですよ。

世紀末:何が怖かったの?

カザマ:人にお願いするっていうのが基本的に苦手で、お願いしたいなってずっと思ってたけど、最終的にmasaton.が行け!って感じで言ってくれて──じゃあ行くかな…と。

世紀末:ありがたい。

カザマ:だから、本当にすごいうれしかったです。

世紀末:最初からずっと、何か一緒にできたら…って話をしてくださってて。すごいうれしかったけど、でもちょっとお世辞だろう…って気持ちもあって。でも、結果的に本当に頼まれたのでうれしかったです。

──先ほど「セブンスター」で泣いちゃったって仰ってましたけども、スリマの魅力として一番感じたのはどういう部分なんですか?

世紀末:カザマさんの声が──。そのとき、私、カザマさんと直接話したことがなくて、話し声とか聞いたことがないんですけど、多分、話し方も歌声とそんなに変わらないんだろうなぁって勝手に思ったんです。歌を聞いてるんですけど、カザマさんに話しかけられてるような感じで。なんていうんだろうなぁ、私も話を聞いて貰ってるような気持ちになって、共感──わかって貰えてるような感じで涙が出てきました。

──だそうですけど、ご本人はどうですか?

カザマ:ありがとうございます。わかんないですけど、今日「セブンスター」をShout it Outがカヴァーしてくれたのを聴いてたんですけど、メッチャいい曲だなって思って(場内・笑)。

──ライヴを観に来た音楽プロデューサーの浅田信一さんも「セブンスター」がいいね、ってさっき仰ってました。

世紀末:「セブンスター」のときに、カザマさんがちょうど二階席の私の対角線上で、カザマさんの顔がよく見えたんですけど、すっごいうれしそうな笑顔で。

カザマ:うちらこの後やるのに──って思って。でも山内くん(Shout it Outのヴォーカル&ギター)すごいですから、こっち見て<やってやったぜ!>みたいな顔で。

──合図してた。

カザマ:してましたよね。それ、すごい感動しました。

世紀末:カザマさんがニヤって笑ってたんで、それを見て私もニヤって笑ってました。

──で、話を戻しますが、スリマのアートワーク用のイラストを描くことになって、ジャケットのイメージってどういう風に決めていったんですか。二人で話し合いながら?

カザマ:もうあんまり覚えてないんですけど。

世紀末:そうですよね。

カザマ:とりあえず、シングルとアルバム両方お願いしたいって話を最初にして。それが二つ合わせたらいいんじゃないかって。

世紀末:“つながるような形にはして欲しい、ほんとにそれぐらいです”って言われて。

カザマ:それぐらいですね。

──できあがってきたのを見て、おお!…みたいな感じ。

カザマ:やっぱりすごいなぁって思いました。

世紀末:うれしい。

──その延長線上に『売れないバンドマン』の表紙のお話があったわけなんですけど。どんなイメージで描いたんですか? あの表紙の男性はカザマくんですよね。

世紀末:はい。(場内に)カザマさんってわかっていただいてるんですよね、大丈夫ですよね。(観客が頷く)あ、頷いていただけて。

カザマ:オレじゃなかったら、アレは誰?(場内大爆笑)

──売れないバンドマンでしょ(笑)。すごいよく覚えてるのが、“猫を入れてくれ”っていうリクエストがカザマくんからあって、それで猫を描き足していただいたんですよね。あと、あれは実際にカザマくんが着てるTシャツの柄なんでしたっけ。

カザマ:そうですね。

世紀末:着てましたよね。

カザマ:あれはお客さんから戴いたもので。

──カザマくんだから、それも忠実に再現しようと思ったんですか?

世紀末:カザマさんのイメージが猫だし、あのTシャツが頭にこびりついていましたから。

カザマ:でもあれなんかもう着なくなってて。太ったわけじゃなんだけど。

世紀末:シャツが縮んだ。

カザマ:それか、それだ!

──最初にラフを見せた段階でカザマくんはすごい喜んでました。

カザマ:これ、売れなさそうって思いました(笑)。こういうバンドマン、いるいるって(笑)、下北沢で、目が死んだような顔して“違う、こうだ”みたいなことを歌い続けて──こんなん売れるわけないやん!みたいな感じで。

世紀末:『売れないバンドマン』ってタイトルなんで。

──で、本全体にマンガも描いていただいたんですけど、みなさんにご説明しますと、マンガはある程度文章を送って、<文章のイメージでマンガを描いてください>ってお願いをしたんです。

カザマ:そうなんですか?

世紀末:そうなんです。

写真左よりカザマタカフミ、世紀末さん、美馬さん

カザマ:え、じゃぁ<このブログでマンガを描いて>って具合だったんですか?

──ある程度何本か選んで、その中から──って感じ。

カザマ:へぇ〜〜。

──こういうのはマンガにしやすい──っていう基準はあるんですか?

世紀末:読んで、パッと絵が浮かんだものから描いていきました。

カザマ:曲をメンバーに持っていくっていう話がスゴい感動しました。本当に怖いんですよ、メンバーに曲を持っていくっていうのは。それを表してくれたのはスゴいうれしかったし、オレこういうことやってるんだな──でも最近あまりよくなくて、皆には──っていつも思い出して。

世紀末:私もあの4コマが、一番感情移入がしやすかったかもしれない。私も、本を出して読者に見てもらうまでがすごい怖いので。

カザマ:そうなんですか。

世紀末:はい。

──そのマンガの内容をちょっと説明すると、<カザマくんが曲を3曲持っていって、“どっちがいい?”って聞くと、メンバーは“どれもいいよ”って言ってくれて、カザマくんがジーンってくる>っていう内容。

カザマ:あれはすごいよかったです。物を作るものとして、世紀末さんのあの4コマはありがたい。

──こうやって会って話してみると、お互い共通する部分はあると感じますか?

カザマ:まだ、わかんない。

世紀末:私は、本当に、カザマさんは死ぬ気で書いてる──と思ってて、文字通り、『死のう』と思った経験がある人しか書けない歌詞だなって。私も、本を出すときは、毎回『死のう…』って思って出してるので。三冊目もこれから描くんですけど──、死のうと思ってます。全然マイナスな感じではなくって、そうじゃないと描けないんですよ、私。

カザマ:今日ライヴやってて一番……、“今日は良い日だな。明日、死のう”って言ったのが。(←Shibuya O-WEST公演時にアンコールはしないと宣言したが、結果的にアンコールが起こり、その際のMC時にカザマが発言した)

世紀末:あれは、滅茶苦茶思いました。

カザマ:そういう日を作っていかないと。本でもCDでも、自分の最後のものだと思って、毎回いきたいなと。

世紀末:本のあとがきにカザマさんが書いた中に<遺書みたいになった>っていう文章があって。私も、一冊目のあとがきを書いたら遺書みたいになっちゃったんで、“あぁ、あとがきって遺書になるよな”って思って、共感しました。

カザマ:初め、すっごいふざけた文章を書いてたら美馬さんにダメだって言われて。

──ソッコーで“書き直してくれ!”って言いました。で、書き直したら凄くよくなった。恥ずかしがり屋だから、真面目に書くのがきっと恥ずかしかったんですよね。

カザマ:皆を幸せにしなきゃいけない──って気持ちはあるんですよ、こう見えて。だから読んだ後に暗い気持ちになったらイヤだなっていうのがあって、ちょっと笑える要素を入れたら、“そういうことじゃない!”って。たしかに、読み返してみたら、「まえがき」とまったく同じことを書いてて。書き直してよかったです。

──カザマくんは、常々<バンドを辞めたいって思うんだけど、辞められない。結果的に辞められないから続いてる>って言うんですけど、世紀末さんも、“キツいなぁ辞めたいな”って思ったことはあるんですか?

世紀末:ありますね。まだ二年くらいしか経ってないんですけど、本当に、いつ辞めたらいいんだろう──って考え始めて。この間、道ばたでお婆ちゃんが占いをしてたので、“この仕事いつまで続けられますか?”って聞いたら、“続けたいの?続けたくないの?“って言われて。“続けたいと思う”って言ったら、“じゃあ、続けるしかないじゃない”って。もう全然占いじゃない(笑)、優しく話を聞いて諭してくれて。“そうですよね、頑張ります”って握手でお別れをしました。

カザマ:それ、ちなみにお金を払った?

世紀末:千円払いました(場内爆笑)。でも、すごいよかったですよ、他人に話を聞いてもらえるのって。

カザマ:そうですね、あの…そういう時は僕にLINEしてくれて大丈夫です。

世紀末:本当ですか、じゃ今夜にでも。

カザマ:え、今夜(場内爆笑)

──それLINEしなくても直接喋れば(笑)。そういう迷いは売れてる売れてないって関係ないことなのかな…。世紀末さんは、今、売れてるじゃないですか、評価も高いと思うんですけど、それでもやっぱりキツいときはキツい?

世紀末:予想以上の評価が来て、私の中で混乱しちゃって。なんだろう、これ以上行けるのかな…っていう不安が凄くあります。ナメられてたら、クソって思って頑張れるんですけど、期待をされちゃうとそれに応えられるかな…っていう気持ちが強くなって。

──カザマくん頷いてますけど。

カザマ:え、まぁ、わからないんですけどね、期待されてないから──っていうのはウソですけど、わかります。

──でも褒められるのはスゴい苦手ですよね。

カザマ:褒められると伸びないタイプです。

世紀末:ちょっとバカにされるくらいが──、多分ちょうどいい。

カザマ:ダメ出しされた方がいいですね。

──ということでトークもだんだん終わりが近くなってきたんですけど、お互いに聞いてみたかったこととか、この機会に伝えておきたいこととかありますか?

カザマ:キライじゃないです。

世紀末:好きです。

──何を確認し合ってるんですかね。

世紀末:トークとか苦手なんですけど、カザマさんと──っていうので。

カザマ:いやぁもう──。

世紀末:本当につたない日本語で、ありがとうございました。

──では、とりあえず一旦閉めさせていただきます。世紀末さんありがとうございました。

世紀末:ありがとうございました。

カザマ:ありがとうございました。

(場内大拍手)

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    四六判 / 232ページ / ¥ 1,528

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    ──すべてのダメ人間に捧ぐ!! 苦節20年、いまだメジャー・デビューできず、売れないバンドマンの苦悶の記録。3markets[ ]のヴォーカル&ギター、カザマタカフミの赤裸々日記を書籍化。長くインディーズシーンで活動してきたからこそ書ける話は、悩み多き若者、社会生活に疲れた大人たちの心を捉えて離さないはず。
    対バン時代からの盟友・尾崎世界観(クリープハイプ)氏との対談や、新譜「それでもバンドが続くなら」でもコラボしているSNSで話題沸騰の漫画家、世紀末氏の新作漫画も掲載。

    【CONTENTS】
    第1章 2006年11月~2014年2月
    俺ら、なんでバンド始めたんだっけ?

    第2章 2014年5月~2016年11月
    売れないバンドマンの日常

    第3章 2017年3月~2017年9月
    それでもバンドが続くなら

    〈特別対談〉
    尾崎世界観(クリープハイプ)
    清和太一(エルシャラカーニ)
    浅田信一(フロデューサー)

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