20170330_乳房のある情景


エロティックでアートな乳房の写真と、乳房をモチーフにした心にじんわり染みる掌編小説が合体した話題の書籍「乳房のある情景」。
3月18日神保町書泉グランデにて、作者の伴田良輔さんと、その〈おっぱい仲間〉である七菜乃さん(モデル、写真家)が、おっぱいへの愛情やおっぱいに関わるあれこれを語るトークショーが行われた。

突然携帯に伴田さんからメッセージが入ったんです。

伴田:僕の2冊目のおっぱい写真集のカバーになった写真を、七菜乃さんが携帯の待ち受けにしてくれている……というのを何かで僕が見たんですね。

七菜乃:そうなんですか? たまたま私が代官山の書店で伴田さんの写真集を見てた時、突然携帯に伴田さんからメッセージが入ったんです。その時、伴田さんのことは知ってましたけどお会いしたことはなくて。「えっ、何なのこれ? こんなことが起きるの?」ってすごいびっくりしました。ギャラリーでトークショーをやるから来て欲しいということで、神保町画廊の写真展に伺ったんです。

伴田:そこで「やっと会えましたね」となったのが2013年の春。その場で僕がリクエストして、ちょうど準備していたみうらじろうギャラリーの個展のためのスピルグラムという版画的な作品のための写真を撮らせてもらうことになった。それ以来モデルとして何度も撮らせてもらってます。
七菜乃さんも今は写真家としてデビューされていて、彼女も女の子を撮ってるんですけど、すぐにスカウトするらしいんですよ(笑)。その辺がぼくも同じようにいつもモデルを探しているので、ライバルになりつつあります(笑)。

七菜乃:いえいえいえ、恐れ多いです(笑)。

この日、房総の山で制作している伴田さんと、山梨県に新たにアトリエを構えた七菜乃さんはそれぞれ2〜3時間をかけて神保町に集合したとのこと。サイド・スクリーンには本書掲載のおっぱい写真や、伴田さんが25年前に初めて撮ったおっぱい写真などが映し出され、それを見ながらのトークとなった。

IMG_2104伴田:この「乳房のある情景」という本は、「フォトテクニック デジタル」という写真専門誌の一番後ろの方に「乳房のある情景」という同じタイトルで3年間くらい連載したものがベースになっています。この本はシンコーミュージックからの発行なんですが、僕は音楽×写真というのをいつもイメージしていて、スタジオで撮影している時や展覧会でも音楽をかけているので、音楽系の出版社から出させていただいたのはすごく嬉しいですね。この乳房シリーズのモデルは基本的に学生とかOLといった一般の方々。顔を出さずにおっぱいだけを撮るというクローズアップでの撮影を始めたのが25年前でした。女性誌で写真家インタビューされたときに作品を掲載してもらって、モデル募集をしたら、50人くらいの応募があってびっくり。それからずっとこのシリーズを撮り続けています。奥手なので25年かけてまだおっぱいを撮ってます(笑)。おっぱいはそれぞれ表情があって、僕はもうひとつの顔だと思ってるんです。顔はある程度メイクで変えることはできるんだけど、おっぱいは“素”だと思う。そこが何か愛おしい。後ろから自然光がまわりこんで、二の腕の手前におっぱいが写る感じとか、重力でできたおっぱいの自然なカーブとか好きですね。これまでに撮らせてもらったモデルさんの数は400人〜500人くらいになります。モデルになってもらった女性にはもちろん話を聞くんですが、それぞれにそれぞれの物語がある。そこから妄想をはばたかせて、今回の小説を書いた。

伴田:七菜乃さんをぼくが撮った写真集「ヌード画報」には、初めてのインタビューが載ってるよね。パンク少女だった?

七菜乃:そうですね。精神は今も。

伴田:世の中の常識に反発していた?

七菜乃わりとそうですね。

伴田:だから今があるんだと思いますよ。学校では多分問題児だったでしょ。

七菜乃問題を起こさない問題児。扱い辛かったろうなと思います。

 


男女の性別と綺麗な身体


DSC03888s伴田:その写真集や、そのあとで出したこの「七」という写真集を見て貰えばわかるんですけど、もう骨格が普通の人じゃないんです。球体関節人形を造っている人たちが、それ以上だと思うような、人形みたいな骨格で。

七菜乃:関節は柔らかいって言われます。

伴田:本当に飛び抜けたモデルであるうえに、今はカメラマンとして女性を撮っている。あ、最近は男性も撮ってる?

七菜乃:男性も撮ります。自分の中では一緒です。特に男と女では変わらない……というのは分かってたんですけど、それを証明したくて。

伴田:女体愛好家って言ってたじゃない?

七菜乃:私の話になって申し訳ないんですけど、性別で人を区別して撮っているつもりはなくて、綺麗な身体、綺麗な生き物を撮らせてもらっています。だから女性を撮ってるとは思ってないんですよ。それを言っても結構分かってもらえなくて、自分は男性も撮ってないのに“性別で区別はしてない”と言うのも何なのでと男性を撮ったんです。でも分かったことは、性別で判断したくはなかったけど、男性、女性と同列に女体というものを並べてしまっていたんですね。自分の中での女体というものができ上がり過ぎて、凝り固まっていた。だから男性を撮って、それがない状態に戻れたかなと思います。

伴田:女体愛好家の女体というのはとりあえず付けた名前であって、身体が好きなんだろうね。

七菜乃:そうですね、自分の中の美意識だなって。

伴田:僕も今、たまたまおっぱいやお尻を撮ってるけど、性別は関係なく、カーブフェチなんだよね。男の体もいいカーブがあれば撮りはじめると思う。

七菜乃:進化してるんだと思います。

伴田:山では虫や鳥や花の写真を撮ってて、やっぱり細部のカーブに見とれていてクローズアップになっていく。女体を撮ってるのとそんなに距離はないかな。

伴田:じゃあ七菜乃さんのおっぱい写真見ましょうか。(スクリーンに映し出して)見ただけで七菜乃さんだと分かります。

七菜乃:もう一つの顔です。でも自分でも分からなくなる時もありますよ。顔もむくんだりするじゃないですか、だからおっぱいもその時期によって違うし、季節でも違います。女の方なら分かると思うんですけど。

伴田:本当に自然でいいおっぱいですね。鏡を使っても撮りました。おっぱいの撮影には自然光がいいんですよ。

七菜乃:私も自然光の中で女の子を撮ってます。

伴田:自然光のなかのおっぱいは、何かもう神々しい感じがしますよね。自然光の中の少女を撮っていたデヴィッド・ハミルトンがいたら、七菜乃さんを撮影したかも。

七菜乃:最近お亡くなりになったんですよね。

伴田:自分の身体のために何かトレーニングはしてるの?

七菜乃:今日、この後もトレーニングに行くんですけど。

伴田:加圧トレーニング?

七菜乃:最近は加圧してなくて、普通にパーソナルでトレーナーさんに付いてもらって部分的にやっています。細かい所に意識を持っていって細部に渡って筋肉を鍛えてます。

伴田:そういえば、等身大の人形も出来たんだよね。中嶋清八さんの。

七菜乃:はい。それこそ自分じゃないかと思うくらい、おっぱいもそっくりでした。でも「去年より痩せたな」って言われました、1年かけて作ってるので。

 

 

隠れているおっぱい、見せるおっぱい


伴田:「おっぱいっていいね」というタイトルで今回はトークをしてるんですけど、七菜乃さんは何が一番いいんだと思う、おっぱいって。

七菜乃:どうなんだろうなぁ。もし女の人が普段からおっぱいを見せて歩いてたら、多分そんなに興味はないと思うんです。「男の人はおっぱいを出していいのに女の人はなぜダメなんだろう」って最近ふと思って。

伴田:時代をちょっと遡ったら、授乳する時とか、昭和の20年30年代ぐらいまでは日常生活空間でもおっぱいを出していた。完全におっぱいを隠すというのは最近になってからなんですよね。

七菜乃:普段は隠れてる顔みたいな感じ。だから、普段隠れていて、汚い空気に触れてないからこそ綺麗なんだと思いますね。

伴田:女の人にとっては、なんでもない自分の身体であると同時に、ふと気がついてみたら大きくなり始めていて、え!?っていうところもあると思うんだよね。それが奇麗なおっぱいに育ってきたとき、それを誰かに見せたいとか、見て欲しいとかというのもあると思う。

七菜乃:客観的に見たいなと思うのは写真集。

伴田:他の人と客観的に分かち合いたい。七菜乃さんも意識してないかもしれないけど、そうなんじゃないかな。

 

 

写真のスペックとブラジャーのサイズ


IMG_2135伴田:連載は「フォトテクニック デジタル」っていう本だったんですけど、写真雑誌って撮った写真のデータというか、スペックを書かなきゃいけないんですよ。そういうものに僕はあんまり関心がないんだけど。

七菜乃:最近「フォトテクニック デジタル」さんで、自分が撮られた写真と自分が撮ったのを両方掲載してもらったんですけど、自分が撮ったのはフィルムで(笑)。送った写真にある程度データは入ってるんですけど、私も聞かれて分からないのがあったので、掲載の時には「不明」って書かれてました(笑)。

伴田:「不明」にこそ、神が降りるんですよ(笑)。

七菜乃:自分でも設定した後にいろいろ変えるんですね、その中のどれかがメチャ良かったので、どうやって撮ったかなんて気にしないで渡したら、それが「えっ! 私こんな設定で撮ってたんだ、恥ずかし〜」ってスペックになっていました。

伴田:でも、要するにそれがアートなんです。失敗したり予想してなかったことこそに発見はあって、僕の作品はだいたいそこから生まれてるんです。女性のバストのカップのサイズとか、そういうことにも一切関心がない。25年おっぱいを撮ってきて、モデルの方には一度もカップを聞いたことがない。

七菜乃:私も関心ないです。言われても人によって全然違うし。見える大きさと実際のサイズって別じゃないですか。いろんな形もあるし数字じゃ計れないですよね。

伴田:ウエストとか肩とかいろんなものの中でのおっぱいの表情なんだから、カップってまったく関係ないですね。

七菜乃:私のカップって知らないですよね?

伴田:知らない。

七菜乃:ブラジャーのサイズを言っても信じてもらえないんですけど、ブラはDの65を使ってるんですね。でも同じ数字の方に比べて、ウソツキ!みたいなおっぱいなんですよ(笑)。

伴田:いろんな形があるのにそれをA、B、C、Dとかにしてるのが僕は腑に落ちないし、おっぱいを表現する言い方が巨乳とか微乳とかくらいしかないのもおかしい。500人いたら500通りのおっぱいがあるわけで、それを大小とかカップでまとめてしまうのはもったいないって思う。

七菜乃:そうですね。

伴田:ぼくのおっぱいのクローズアップシリーズは、そういうおっぱいの分類への反抗心もあるんです。今回の小説のテーマも、そこなんです。今日はありがとうございました。

七菜乃:ありがとうございました。

付記/3月10日から神保町のSPIN GALLERY(http://spins.exblog.jp/)で「乳房のある情景」の刊行記念展「乳房美術館」を開催中という案内があった(3月30日まで)。

また、3月27日(月)には下北沢の本屋B&Bにて、伴田さんと月刊写真雑誌「フォトテクニックデジタル」編集長・藤井貴城さんのトークショーが行なわれた。「乳房のある情景」に掲載されている小説は同誌に乳房の写真と共に連載されていたもので、連載が始まった経緯や2人のエロス観、おっぱいにとどまらない「ひかがみ」(ひさの裏側)のフェチ論議など、こちらでも深いトークが繰り広げられた。

 

最新刊のご案内

  • 乳房のある情景
    購入する
  • 乳房のある情景

    四六判 / 176ページ / ¥ 1,728

    80年代よりフェティッシュな写真や考察で人気の写真家・伴田良輔。

    2009年の乳房写真集「BREASTS」(朝日新聞出版)は大きな話題を呼び、重版された。そんな伴田が写真専門誌「フォトテクニックデジタル」に連載した、乳房の写真とそれにまつわる短編小説を再構成しまとめたのがこの一冊である。
    乳房の写真を撮られるためだけに、初めて会う写真家の前に現われる様々な女性たちと写真家の邂逅から浮かび上がる、清廉なエロティシズムと切ない思慕……。

    男も女もない、赤ん坊の頃に吸い付いた乳房の忘れ去った記憶までを呼び起こし、柔かな感動が静かに立ち上がってくる。

    【CONTENTS】
    ゴムの乳首
    ジャコウアゲハ
    鏡の中のおっぱい
    宇宙飛行士

    ミルキーウェイ
    モデル志願
    織物
    分子模型


    遊園地
    相似形
    和菓子

    記念写真
    トイプードル
    ベビーカー
    ハイウェイバス
    天花粉
    チェロ
    どこにもいない
    薔薇とミツバチ

特集・イベントレポート