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SPYAIR

新たな挑戦がバンドの進化の証となって鳴り響いた「アイム・ア・ビリーバー」

TVアニメ『ハイキュー!!セカンドシーズン』の主題歌として作られた新曲「アイム・ア・ビリーバー」。
アニメにマッチするサウンドと言葉が繰り広げられるナンバーではあるが、これまで以上にストレートに鳴り響く
バンド・サウンドの中には、4人の進化の証と新たな挑戦もしっかりと刻み込まれている。そんな楽曲と
彼らはどう向き合っていたのだろうか? ここでは、その背景をメンバー4人と共に振り返っていこう。
さらに、GiGS12月号では、このインタビューの続編に加えて、「アイム・ア・ビリーバー」のギター・プレイを
まるまる1曲UZに直伝してもらった! 譜面と彼のアドバイス、さらにポイントとなるUZ本人の手写真から
詳細に解説しているので、ギターを手にしてぜひ挑戦して欲しい!!

Text/TAKAYUKI MURAKAMI

SPYAIRの音やグルーヴの個性が 確立されてきた気はしますね
──新曲の「アイム・ア・ビリーバー」は、TVアニメ『ハイキュー!!セカンドシーズン』の主題歌です。
UZ:「アイム・ア・ビリーバー」は、“セカンドシーズン”が始まるという話を聞いてから作りました。今までこんなにタイアップを意識したことはなかったんじゃないかというくらい、『ハイキュー!!セカンドシーズン』を踏まえて作った曲です。ファーストシーズンでは「イマジネーション」で主題歌をやらせてもらって、すごく俺らの音楽がいろんな人に広まったという実感があったので、もう一度チャレンジしてみたいと思って。それで、今までの『ハイキュー!!』を観たり、いろんなアニメのオープニングをチェックしたりして。オープニングにはセリフがないので、それだけ楽曲が担うものが大きいと思うし、どうしたら『ハイキュー!!セカンドシーズン』の世界を俺らの音でさらに輝かせられるかなと自分なりに考えた上で制作していきました。あと、SPYAIRが「イマジネーション」の頃よりも成長しているところを見せたいという想いもありましたね。
──「アイム・ア・ビリーバー」は、爽やかなアップテンポのナンバーです。
UZ:憂いを帯びていてグッと惹き込むものよりも青春感があって、シンプルに“気持ち良いな!”みたいなものがスポ根ものには合うなと思ったので。それに、この曲はサビをちょっとクドくしました。サビは3つに別れている感じですけど、どんどん足していったんです。最初のサビを作った後に、これだけじゃ絶対に足りないなと思って、“So What?”というリフレインの部分を作って。ここからさらにもうひと押しいきたいなというところで、“Oh, Oh!”というパートを付けたんです。ちょっとクドいかなという気もしたけど、どんどん展開するのは面白いんじゃないかなと思って、そのまま活かすことにしました。
MOMIKEN:歌詞に関しては、とにかく楽しんでやれましたね。もともと大好きなアニメだし、特に何かを言われなくても、俺は必要な言葉を違和感なく入れますから(笑)。今までのタイアップで、こういう言葉を入れてくださいと言われることがあったけど、むしろ“それだけで良いんですか?”という感じだったし。今回も『ハイキュー!!』のマンガとかを改めて読み漁ってから歌詞に取り掛かりました。
IKE:何も言われなくても、『ハイキュー!!セカンドシーズン』に合う言葉がちゃんと入っているよね(笑)。
UZ:こっちから歩み寄るという(笑)。
MOMIKEN:そう、良いバンドだよね(笑)。俺は、歌詞を書くときはサビ頭から考えることが多くて、最初のサビの入口の言葉が出てきてからストーリーとかを付けていくタイプなんですね。この曲もサビのメロディーを口ずさんでいたら、“明日もし…”という言葉が降ってきて。で、次のパートは“So What?”が良いんじゃないかなと思って。最後の部分は何となくこういう風に終われば良いなというくらいにしておいて、全体のストーリーを付けてから最終的に何を言いたいかということを考えて“I’M A BELIEVER”という言葉に決めて。その上で、ストーリーに寄り添う言葉を散りばめていきました。
──アニメの世界観に寄り添いつつ、言葉の響きを重視して、なおかつリスナーの背中を押す歌詞に仕上げたのはさすがです。
MOMIKEN:いや、こういう“背中を押すソング”は得意なんですよ(笑)。「アイム・ア・ビリーバー」の歌詞は、アニメに寄り添いつつ、“自分くらいは自分を信じようよ”ということを伝えたかったんです。
──アニメを観ていない人にも意味が分かる歌詞になっていますよね。では、この曲のレコーディングはいかがでしたか?
KENTA:この曲は最初に聴いたときにサビが“ガンッ!”と来て、純粋に良い曲だなと思いました。それに、“So What?”というパートの全員が8分で刻む感じというのは今までのSPYAIRにはなかったので、俺の中で印象が強くて、この曲の肝になる場所だなと思ったことを覚えています。ドラム録りは、Bメロですごく苦戦しました。ハーフ・ビートになるだけで別に難しくないのに、ゲシュタルト崩壊を起こしてしまって(笑)。脳からの信号に対して身体が動かないような状態になってしまったんです。
一同:それは、前の晩にすごく無理な体勢で何かしたからじゃないの?(笑)
KENTA:してないよっっ! 理由は分からないけどハマッてしまって、結局20回くらい叩いてようやく録れました。その前に録った曲があって、そのドラムがすごく良かったんですよ。なので、「アイム・ア・ビリーバー」を録り終えたときに、曲に説教されたなと思いました。“お前は、何を自惚れているんだ?”とBメロに言われている気がして(笑)。もっと謙虚にならねばと思いました(笑)。それに、レコーディングしてから数日後に「アイム・ア・ビリーバー」を叩いたら、Bメロで苦戦するようなことは全然なくて。なぜ、あのときだけああなったんだろうっていう(笑)。
一同:やっぱり前の晩だよ(笑)。
IKE:レコーディングの前日は控えてもらわないと(笑)。この曲の歌は、自分の理想のボーカルが録れたと思っています。俺はこれで生きていくよ、という。ここ最近自分の中で、何か一つ抜けた感覚があって。ボーカルは本当に精神面が出るから、それが反映された気はしますね。それに、ちょっと自分の声の中で新しいトーンを見つけたし、ダブル録りの理想的な塩梅や輝き方を見つけられたというのもあって。そういう良いポイントが重なったレコーディングだったなと思います。
UZ:この曲を録ったときは、ずっとレコーディングをしていて。いろんなサウンドを作って、いろいろ試してみた後にこの曲をレコーディングしたのは大きかったですね。ドラムとベースとの絡みと上物のシンセやギターとのマッチングという部分で、メインになるギターの理想的な置き位置みたいなものが見えてきていたんです。だから、そこに向かって入念に音作りをして、ピッキングによってもローの感じとかは変わるから、しっかり鳴らして音を繋げて…ということを意識してバッキングを弾きました。その結果、やっとこのバンドらしい音の原型ができたんじゃないかなと思う。まだ全然完成し切ってないけど、“俺たちはこういうサウンドを目指していくんだ”というものが見えた曲ではありますね。そういう意味で、この曲はすごく気に入っています。
──土台がしっかりしていることで、上物のギターの繊細さがより際立つ形になっています。プレイ面に関してはどうでしょう?
UZ:この曲は、弾いてて楽しいです。ギターならではのフレーズが多いし、こういう疾走感のあるパンク・フレーズというのはもともと大好きなので。というか、俺はこういうものに憧れてギターを始めたから。そういうところを押し出しているから楽しい曲ですね。
IKE:ギター・ソロの入り方も、すごくカッコ良い。この曲は、そこに尽きるよね(笑)。
UZ:いやいや(笑)。今回は『ハイキュー!!セカンドシーズン』の主題歌ということで、中学生や高校生、もしかすると小学生とかがこの曲を耳にするじゃないですか。そういうヤツが、ギターをやろうと思ってくれたら良いなというのがあって。“あぁ、俺ギター弾きてぇ!”と思わせられるようなソロを目指しました。
MOMIKEN:俺、ギター弾けないのに、このソロを聴いたときにコピーしたくなった(笑)。
KENTA:分かる(笑)。ギターに限らず、この曲はコピー心をくすぐると思う。
MOMIKEN:コピーして欲しいよね。ベースは、この曲は疾走感を求めていて、そのために今までとは違うロー感が欲しいなと思ったんです。それで、ベース・アンプをブースの床じゃなくて、ブロックを積んだ上に置いたんです。それが良い方向に出て、イメージしていた通りの音と疾走感を出すことができました。今まではバウンド感を出す“バウン”という音の“ウン”がついてこない感じがあって音が点になっていたけど、この曲はちゃんとバウンドしている。それが、すごく良かったなと思います。
──今作のカップリングの「イマジネーション(Live at FUJI-Q HIGHLAND 2015.8.8)」でも感じましたが、MOMIKENさんの指弾きによるルート弾きのグルーヴ感はSPYAIRの個性の1つになりましたね。
MOMIKEN:ありがとうございます。それは自分でも感じているし、俺に限らずSPYAIRの音やグルーヴの個性が確立されてきた気はしますね。最近は、KENTAと言えばこの音だよね、UZと言えばこの音だよね、MOMIKENはこの音だよねというのが、どんどん明確になってきていて。「アイム・ア・ビリーバー」には、それが色濃く出ているなと思います。