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“世の中をヘッドバンギングさせる本”「ヘドバンVol.10」の発売記念トークショーが、3月30日タワーレコード渋谷店4Fイベントスペースにて梅沢直幸ヘドバン編集長、ライター荒金良介さん、デザイナー小林 哉さんを迎えて行われた。

BABYMETAL愛、伝わってます?

梅沢:こんばんは、ヘドバン編集長の梅沢です。今日一緒にトークをしてくれるメイン・デザイナー小林さんと、ライターの荒金くんに上がってもらいます。 (場内の拍手に迎えられ二人が登壇)
梅沢:今日はヘドバンがどんな風に作られてるのか…Vol.10の話しをしつつの修羅場話を(笑)。今回は荒金くんに司会進行的なことをお願いします。
荒金:最新号のVol.10のことを聞く前に、BABYMETALの新作アルバム『METAL RESISTANCE』を聴いた感想を梅沢さんからまず。
梅沢:一応メディア側なんでみなさんよりちょっと早めに音源はいただくんですけど、もう衝撃が走って、これは大変なことだ!と。それで編集スタッフや小林さんとかも集めて、「このアルバムと向き合うがためにも(ヘドバンを)作らなければダメだ!」と。
小林:呼び出されて一緒に聴きました(笑)。
梅沢:10号のイメージを浮かべながら聴いてました。こういうことを話すと泣きそうになっちゃうんですけど、このアルバムが出ると世界が変わると思ったんですよ。メタル世界が。こんなのが日本から出たら大変なことになるなと。全曲素晴らしくてイマジネーションをもらえるアルバムだなと思いました。
荒金:それはファーストのときとは違う?
梅沢:ファーストのときはシングル曲とか、ライヴでさんざんやってきた曲を集めた感があったんだけど、セカンドは半分未発表だったし。何ていうんだろうな、全部“攻めてる”でしょ、いろんな意味で。各楽曲のタイトルは先に来てたんです。
荒金:楽曲タイトルは衝撃でしたね。何がここから出てくるんだろう…って。
梅沢:編集部で小林さんとかと聴きながら、あ!これヴァイキング・メタル来た!、あ!これV系じゃんとか、あ!ドリーム・シアター来ちゃった~とか一々反応して騒いでました。
荒金:聴いてみて、小林さんはどうだったんですか?
小林:スッゲーなぁ、攻めてんなぁって思いました。梅沢さん盛り上がってんあなぁ、これはヤル気出てるわって。それがひしひしと伝わって来るので、これは応えなきゃと。

BABYMETALはメタルの進化系だ

荒金:ヘドバン10号の取っ掛かりというかアイデアはどこからスタートしたんですか?
梅沢:“進化するメタル”っていうのは前から頭の中にあったんです。で、BABYMETALが3月にアルバムを出すというのを聞いて、なおかつヘドバンも10号目をそこに合わせるってなったときに、新作に入っている「THE ONE」がBABYMETALの幕張でのコンサートのエンディングに少し流れ、その後Zeppツアーでもフル・ヴァージョンっぽいのが流れて、僕らの中で「これはドリーム・シアターっぽいな」ってザワついたんだよね。
荒金:言ってました。
梅沢:毎回のメイン・テーマで、今回何をやろうかな…と思ったときに、プログレっていうのがきたんです。ドリーム・シアターってプログレ(プログレッシヴ・ロック)だし、プログレ=進化だから。BABYMETALはメタルの進化系だと僕はずっと思ってたので、「進化するメタル」でハマった感じがあった。で、アルバムを聴いたら、「大当たりじゃん!」。
荒金:梅沢さんとしては特に後半の2曲「Tales of The Destinies」「THE ONE」にイマジネーションをかき立てられた感じですか。
梅沢:そうですね、今アイドルさんでラウドな音をやっているのはいっぱいいるじゃないですか。でも、あそこまで変拍子バッキバキで、プログレ・メタルをやってるのはどこもいないし。しかもドリーム・シアターより、ドリーム・シアター的な感じがするでしょ(笑)。
(場内爆笑)
荒金:ある意味、そうですね(笑)。
梅沢:えっ?これどうやって踊るの?って。
荒金:想像できないです。
梅沢:今までなかったタイプの曲だったんで、あの2曲にインスパイアされたのは大きいですね。今回のヘドバンの表紙は、僕の頭の中ではそのドリーム・シアターの『ASTRONISHING』とメガデスの『DYSTOPIA』と「ヘドバンVol.10」の三部作でどうかなって思っていて(笑)。
(場内爆笑)
荒金:つながってるんですか。headban-10_01
梅沢:脳内では(笑)。表紙を描いてもらってる田中紫紋くん、彼はBABYMETALのジャケット・デザインも手がけてるんですけど、メタルとかは全然詳しくなくて、いい意味で知ろうとしない人なんです。いつも表紙のアイデアは僕が田中紫紋くんにいろいろな画像を送って、こういう風にして欲しいって伝えるんですけど、今回はドリーム・シアターとか他にもいろいろ送って、描きやすいのでいいよって投げたんです。そうしたら最初、ドリーム・シアターのアルバムのジャケットにある絵柄のように、ボールがパカッと分かれた中にBABYMETALの3人がいる…、こういうイメージですよね、というのが来て。そこからほぼ二日で描き上げてくれたんです。スゴいですよ。で、フタを明けたらこの表紙になって。
荒金:今回、三人の感じがよく出てますね。梅沢さんの頭の中ではそこから中身が始まるんですか?
梅沢:中身は、「進化するメタル」というのをテーマに何を入れようかなというのをずっと考えるんです。もちろんBABYMETALは入ってるんですけど、実際作業は3週間くらいでしたかね。
小林:プログレをやったのは最後の1週間くらい。
梅沢:実質5日間くらいかな。だから自分の脳内で構成ができあがるのは、校了っていう印刷工程での編集作業の最後の締め切りの10日くらい前(笑)。ここに何の記事を入れるっていう台割(全体のページ構成)ができたのが校了1日前。
(場内爆笑)
小林:目次が上がったのが前日。
荒金:ギリギリですね。
梅沢:いつもそうなんです。
小林:台割って本の設計図だから、本当は一番最初に作って印刷所とかと共有して、何ページが届いてますよ~とかやらなければいけないんですけど、それが最後に届く。
梅沢:小林さんにデザインを投げるんですけど、小林さんはこれはどこに入るのか毎回わからない状態なんですよ(笑)。

BABYMETAL愛、伝わってます?

荒金:今回ヘドバンとしては久しぶりのBABYMETALインタビューで、梅沢さんがインタビューしたのは2年ぶりですか?
梅沢:ガッツリ本人たちと向き合ったのは2年ぶり。
荒金:聞きたいことが溜まり過ぎてたんじゃないですか。
梅沢:今回、いろんな媒体さんが彼女たちを取材するだろうなぁと思ったので、ヘドバンで何ができるのかな…っていうのをずっと考えてたんですよ。BABYMETALをずっと推してきてる雑誌だから、読者はどんなことを聞いて欲しいのかな…とか、ヘドバンならではのコメントがもらえたら、引き出せたらいいなとか。ウ~ン、いい意味で「あ、久しぶり!」っていうそういうノリ(笑)。
荒金:近所のオジさんみたいな。
梅沢:それはウンとは言いたくないけどなぁ(笑)。お互いの親しみ感のノリで話せたかなと思ってます。headban-10_02
荒金:僕もじっくり読ませてもらったんですけど、お父さんが話を聞いてるような。
(場内爆笑)
梅沢:それ全然褒めてないよ!(笑)
荒金:キッチンで子供に「今日学校で何か楽しいことあった?」って、それくらい気軽に話を聞いてる感じ。
梅沢:それも全っ然うれしくない(笑)
荒金:いやいやいや、隣で話を聞いてるような臨場感や親近感が。
梅沢:親近感っていうのはうちでしか出せないかなと思ってて。それこそYUIMETAL、MOAMETALが中学1年、SU-METALが中学3年生の頃からインタビューしてるんで。文章にするときもその辺は考えました。
荒金:会話のキャッチボール感。
梅沢:きれいにまとめあげずに会話感を残して。で、会ってみて思ったのはSU-METALはいい意味で変わんないなって。
荒金:変わったのは?
梅沢:なんだろうなぁ、もっと別人格になってきたのかな。SU-METALともう一人の仮の姿が完全に分けられた。あとはYUIMETAL&MOAMETALがびっくりするくらい成長してた。だから「成長したね~」って連発してる。YUIMETALとか以前はそんなに発言はなかったんですけど、今回MOAMETALよりも喋ってて驚きました。こっちより先にどんどん喋るんですよ。「私たちは夢を与えているんですかね?」っていうキャッチに引っ張った発言があるんですけど、向こうからそう聞かれたのは初めてだった。逆にこういうことを聞くようになったんだなというのが、すごい印象に残ってます。写真も2年前の撮り下ろしのときより表情も豊かになったし、上がってきたものをみてびっくりしましたよね。
小林:すごいクォリティで、あれを見た瞬間に「あ、この本大丈夫だ、これで成立する」って思いました。
梅沢:椅子に座らせようというのは小林さんのアイデアで。
小林:その椅子は梅沢さんのポケット・マネーで借りたんですよ。
梅沢:編集費でアンティークのソファーをレンタルして。3人が立っている写真はあってもSU-METALが座ってるのってないじゃないですか、限られた時間の中で特徴を出せるのはこういう逆トライアングルの構図しかないかなと思って。それでヘドバンだからYUIMETAL、MOAMETALを先のページに持ってきて見せようというのも考え、小林さんと相談したんですよ。
小林:夜中の2時か3時に電話で相談されたので、「ばっちりです!」って片腕感出して(笑)。
梅沢:KOBAMETALのインタビューも1時間40分くらい話したのをほぼノーカットで載せて、終わった後もメタル談義してました(笑)。KOBAMETAL のインタビューも、話しを聞きながらこの感じはうちしか出せないなって思いました。今回の『METAL RESISTANCE』をメタル側からやるのは恐らく日本だとヘドバンくらいだと思うんです。こんなとんでもなくハイクォリティーで狂ったメタル・アルバム、きちんとメタル側からやらないのはおかしいしんですよ。海外ではMETALHAMMERとかもやるだろうし、日本ではうちがやらないと…っていう変な責任感もありました。だからKOBAMETALの全曲解説は絶対載せたかった。それと「進化するメタル」ということで、他にもいろいろなメタルを取り上げて、BABYMETALを知らない人が読んでもちゃんとメタルをやってるんだと思ってもらえる構成を心掛けてます。ま、BABYMETAL愛ですね。本当に本当に大好きで鹿鳴館から見続けて、ずっと推してきたんで。
小林:伝わってますよ(笑)。
梅沢:伝わってます?
(場内大拍手)

雑誌は刺さらなきゃダメ

headban-10_03梅沢:やっぱり雑誌って刺さらなきゃダメだと思うんです。たくさん並んでる中で目に飛び込んで来たりとか、グサって刺さらないと買おうっていう衝動って起きないじゃないですか。だったらちょっと引くくらいのインパクトを本に出せたらなと。それが人によってはドン引きされるぐらいのBABYMETAL愛で振り切りまくったのがこの号です。
荒金:今回も大変でした?
梅沢:小林さんどうですか、今までの中で。
小林:単純にいつもより16ページ増えてるんですけど、最後の16ページは本当に辛かった。大食い王が最後の一口どうしても食べられないって感じ。それが最後の18時間くらい。梅沢さんが書きながら、デザインする同時進行で。
梅沢:僕はほぼ原稿を書かないんです、なぜかというとヘドバンの中の全部のキャッチコピーやタイトルを自分が書いてるんですね。だから多分統一感はあると思うんです。でも今回はそのキャッチコピーでさえ最後出なくて辛かった。そこに全精力を注いでいて、中にはくだらないタイトルとかもあると思うんですけど、それも5時間くらいウンウン唸って付けてますんで。
小林:最初キャッチやコピーとかが梅沢さんから送られてくるんですけど、文字だけで大小は付けてあるんですけど細かい指示はなくて、それを直にメールに貼って来るんです
梅沢:僕は書きなぐって、小林さんお願いってただ送るだけなんです。そうするとその文字から汲み取ってくれて、小林さんがデザインしてくれるんです。 (その過程の見本を見た観客からオ~~っと驚きの声)
荒金:全然違いますね。
梅沢:僕の中ではどの文字を大きくしたいかというのは小林さんがなんとなくニュアンスを掴んでくれるかな…と思いつつ、逆にどんなのができ上がってくるのか楽しみなんですよね。送ってから2時間後くらいに上がってきたのを見て超感動するんです。で、僕、よく折れるんですよ。みなさんが一番目にする最初のモノクロの見開きの煽りのキャッチを作るのが一番辛い仕事で。
小林:だいたいいつも最後に作ってます。この最後の前が目次ページなんですけど、目次をデザインしてるときに梅沢さんは一生懸命キャッチを考えてて。
梅沢:睡眠時間が削られ、1日2時間睡眠が1週間続いて朦朧としている中で書いてるんですね。だから多分脳から何か出てアッパーな感じになってると思うんです。
小林:間違いないです(笑)。
梅沢:何かこう刺さる言葉を書きたいと思うとアッパーな感じになるんですよね。
小林:勢いつけないと寝ちゃうし。
梅沢:Vol.9とかは本当書けなくて、折れたんです。小林さん、今回モノクロ大扉を作るのは止めようって。そうしたら小林さんが。
小林:すげー怒った(笑)。ふざけんな、あそこが、あの見開きがヘドバンだ。やんなきゃダメだって。そうしたら「分かりました…」って(笑)。なんか力の逆転現象が起きて。オレもなんであんなに強く言ったんだろうって。
梅沢:わかったよ、って書きなぐる感じでやりました。

この後もそれぞれの号やスピンオフ号の制作秘話が話された。校了の2日前に英国に取材に旅立って、トランジットの空港や地下鉄など至る所でキャッチコピーを書いて日本に送っていた話や、ディスク・ガイド・ムックの最初の見開き扉ページになぜか煽りのキャッチコピーが入っていることなど、そのエピソードの度に場内は驚きや笑い声で湧き、1時間弱のイベントはあっと言う間に終了。

梅沢:大丈夫ですか、こんな内容で。来たかいありますか?(場内拍手)ありがとうございます。この後も11号とかスピンオフとか作っていくと思います。僕が死なない限り出ると思いますので宜しくお願いいたします。ありがとうございます。

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